諸事情あって、昼にはJR藤枝駅の南側にいた。
とにかく急いで昼食をとる必要があったので、かつて何度も行った中華食堂「会飯よこ多」に行くことにした。駅からは歩いてすぐの距離だ。
看板に「中華めし」とあるように、基本はいわゆる"街中華"である。
地元では古くから人気の店で、壁一面に色紙が貼られている。
色紙はプロのサッカー選手から常連客まで多種多様。
中学高校の運動部、中学高校の卒業生一同、そして社会人スポーツサークルの色紙が目立つ。特にその三者は、若気の至り&時代の徒花感が際立つ。
当時そういう表現が流行っていたのだろうなあ、と思わせる熱い内容となっている。「326*1」風の言葉や、J-Popの歌詞、「ズッ友だよ」といった古の若者言葉が、時代ごとのギャル文字やカラーペンで綴られている。
見ていて飽きないが、共感性羞恥みたいなものも生まれてしまう。料理を待つ間の暇つぶしにはちょうどいい。
そんな老舗の定番は「会飯」だ。「ほいはん」と読む。
玉ねぎ会飯、肉味噌会飯、コーン会飯といったメニューが10種類は並んでいる。あんかけ風の炒めた具材を山盛りのご飯にかけたものを、この店では「会飯」と呼ぶ。
他にもラーメンや炒飯、焼肉定食、レバニラ炒め等も人気が高い*2。メニューの多くは400円から600円程と、安さも人気の理由だろう。
総じて、安くて量が多くて、少し違ってなんだか面白い、そんな店である。
そんな中、800円と少し高めのメニューが「サッカーラーメン」。
一応は「サッカー王国」を名乗る藤枝市だから、何かしら由来はあるのだろう。でも説明文は油汚れと退色で読めなくなっていた。写真を見てもよくわからないので、今日はこれを注文してみた。
果たして「サッカーラーメン」は、こんな感じだった。
普通の醤油ラーメンに、以下の具材が乗っている。
- 炒めたキャベツ(葉脈部分が多め)
炒めてあんかけにしたモヤシ、ニラ、ひき肉 - 味付たまご
- うずらのたまご
- チャーシュー
- 餃子(青シソ入り)
- 海苔
他にも何か入っていた気がするが、思い出せない。
古典的な醤油ラーメンに、店で使う各種具材を盛り付けた感じ。
これが、注文から5分と少しで提供されたのだから驚いてしまう。
とてもおいしい。
ただし、量が多い。同行者達は普通のレバニラ炒め定食などを「ごはん少なめ」と注文していた。それでも多いと言っていたが、ラーメンもまた通常の量で多い。
おそらく運動部向けの量なのだ。
僕も同行者達も、もう若くはない。もちろん運動部でもない。そういう現実を実感させる店と料理ではある。
ところで、餃子がラーメンに乗っていても、特に味わいが向上するわけではない。1+1は2である。不思議なケミストリーの結果、1+1が2.5になるのが料理の妙だと思うので、その点では有り難みは感じない。
でも、たしかに嬉しい盛り付けではある。自分も高校生の頃だったら、こんな夢のような「全部盛り」を喜んだだろう。僕は理知的かつ冷静な生物部員だったが、こんなラーメンを見たら阿呆になっていたはずだ。
店の定番「会飯」とは違うが、「サッカーラーメン」もまた、少し不思議な「中華めし屋」の会店よこ多ならではの味だった。
サービス精神と運動部気質と、少し不思議なセンス。自分にとっては異文化で、他の店とも似ていない。
「藤枝のソウルフード」なんて雑な言葉では語ってもらいたくない、ほどよい独自性がある。
自分の生活では行く機会がほとんど無い場所ではあるが、良い選択だったと思う。そして、満腹すぎて夕食では主食*3を抜いたのだった。