仕事で清水港のあたりに行ったついでに、伯母の家に立ち寄った。
預かっていた書類を渡し、近況報告をして、我が家で採れた(余っている)夏野菜を少し渡した。
その際、どういう経緯でかは忘れたが、近所にある蕎麦屋を勧められた。僕も子供の頃に何度か行ったことがあるのだと言うが、全く覚えていない。
まあ勧められるのならば…と昼食をその蕎麦屋で食べることにした。
朝食は遅く、そして店に到着した時刻は早かった。
それほど空腹ではないし、手早く済ませたいこともあり、普通のざるそばを注文した。
そのそばがテーブルに届いた時に、店主夫妻が声をかけてきた。
もしかして、あの〇〇さんの息子さん?と聞いてくる。僕の両親を知っていて、子供の頃の僕のこともわかるのだそうだ。どうやら母方の家との付き合いが深く、祖父母の葬儀などで僕を見かけることもあった様子。それにしても、よく覚えているものだ。
その後は、まるで「孫が来た」かのような歓待を受けた。
あれも食べろ若いんだから遠慮するなと、まるで若者扱いである。ハムエッグと、メロンの漬物*1、甘く煮た豆、そしてキノコ入りのシチューにパイ生地で蓋をしたものがテーブルに並んだ。
まいったなあ…と思ったけれども全ておいしくいただいた。
どうして蕎麦屋にパイ生地で蓋をしたシチュー(ポットパイというそうだ)があるのかは、よくわからない。
お土産にコストコのパンを渡されたので、コストコ関係の品なのかもしれない。
それでもきっちり蕎麦の代金は支払い、予定より遅くに店を出た。近いうちに父を連れてくることを約束した。
自分だけは自覚がないけれど、この店を勧めてくれた伯母も、お店の老夫婦も、たぶん親戚みたいな感覚なのだろう。そういう関係なんて人生初なので、なんだか調子が狂ってしまったのだった。
そういえば、今日はもう1つ、"人生初で調子が狂う"ことがあったのだった。
生まれてはじめて「ネコを吸う」という行為をした。
SNSや漫画では知ってした。
ネコのお腹の匂いを、思いっきり吸うのがネコ好きの嗜みだとされている。
今日は帰宅したら、知人家族がネコを連れてきていたのだった。
洗ったばかりで清潔で、「吸うにはもってこい」だというので、ものは試しと吸ってみたのだった。
ネコは好きだが、僕は別に匂いなどが好きなわけではないのだなとわかった。嫌な感じもしないが、特別に良い体験だとも思えない。
そして先ほどまで、軽い鼻炎が続き、喉の奥では喘息の兆しが感じられた。
普段は気にすることは無いけれど、埃っぽいところなどではハウスダストアレルギーが出る。ネコの毛が身体に合わなかったのだろう。これがつまり、調子が狂ったことなのだった。
とりあえず小青竜湯を飲んで症状はおさまった。
ネコを吸う愉悦と、アレルギーとを天秤にかけて考えるに、僕はもうネコを吸うことはないだろう。
ただ、やわらかくて温かな腹を静かに預けてくれるネコは、とても素敵だった。灰色なのにクロスケという名の奇妙なネコだが、とても良い奴だと思ったのだった。
*1:摘果したメロンの浅漬け