所用により静岡新聞の本社建屋へ行っていた。
昼休憩の時間に、隣接する駿府博物館へ立ち寄る。
2階建ての小さな博物館。
1階は入口のみで、2階が展示室。静岡新聞社の文化事業なのだと思う。ずいぶんとこぢんまりしていて、地元民でも行ったことがないと言う人は多い。
それにしても1階に床屋が入っている博物館なんて僕は他に知らない。
今日はこの駿府博物館で開催中の特別展*1である「模型の系譜ー静岡から世界へ プラモデル100年展」を見てきたのだった。
模型の系譜…というと静岡市の地場産業である模型・プラモデルの100年史を俯瞰するような大仰なものを想像してしまうが、実際はアオシマ文化教材社のイベントである。
戦前の飛行機乗りだった創業者のエピソードから始まり、現在のアオシマ製品までがずらりと並ぶ。
青島文化教材社といえば戦艦や飛行機、自動車などの精密なプラモデルが有名だが、今も昔も3番手というか、時事ネタや流行り物を取り入れるのも上手なメーカーなのだった。
自分は子供の頃にガンダムのプラモデル*2に触れて、タミヤなどの戦車や自動車のプラモデルを少し作っただけで、その後は模型趣味から遠ざかっている。
それでも周囲には模型趣味の人達が必ずいて、自分でもホビーショーなどには参加していた。漫画やアニメ、特撮の情報に触れていれば、プラモデルのことも自然と伝わってくるものだ。
だから、この展示で見ているものは、なんとなく見たことがあるものが多い。
子供の頃に通っていた模型屋の奥のほうに積んであったもの、外のショーケースに飾ってあったもの。アオシマ(青島文化教材社)といえば、そういう印象がある。
大人向けのスケールモデルはともかく、タミヤやバンダイといった超大手に比べると、どこかパチモンというか無邪気というか、その時々の売れそうなものを自分たちで作り出した結果としておかしな商品を連発していたような雰囲気がある。
宇宙戦艦ヤマトが売れたから、合体ヤマトロボットやタイヤで走るヤマトを企画する、みたいなところは、アオシマらしさの一側面だと思う*3。
お寿司や自転車といった、奇妙なモチーフのプラモデルも展示されていた。
最近のものではアニメ・マンガのキャラクターなどもある。
デコトラのプラモデルは、きちんと光っていた。デコトラという呼称は青島文化教材社が作ったのだと説明にあった。
それほど広い展示ではない。この写真くらいの部屋が2つ。だから、それほど時間はかからない。
たくさんの作品、それに箱のイラストの原画もたっぷり飾られているが、ほとんど説明が無いのは残念だった。いや、模型ファンならばこれくらいは説明不要なのかもしれないけれど。
メーカーのショールームならば*4これくらいの内容は無料でもおかしくない。そういう意味では800円の料金は割高かもしれない。でも、僕はこの展示をしっかりと楽しめた。もしもプラモデルを趣味としていたら、もっともっと楽しめたはずだ。
ほとんど説明文もなく、ただ箱の絵や製品を並べただけの展示であっても、きちんと「プラモデル100年展」になる。
模型というフォーマット以外は、何をしても自由。そういう製品を扱ってきたからこそできることなのだろう。そういう趣味や芸術は、他に無いかもしれない。
そして、プラモデル黎明期より前から今まで延々と続く青島文化教材社だからこそ、でもあるのだ。
図録も何もない展示だった。
最後に実際に買える商品がいくつかあって、気になったのがこのスナップキットシリーズ。
車の模型なのだが、組んだだけで色分けがほとんどされている。同じ黒い樹脂でもツヤやテクスチャの違いで、バンパーとダッシュボードでは別の素材に見える。
窓枠が黒いだけでも、かなり本物っぽく見えるものなのだ。価格も安かった。
子供の頃は、車のプラモデルというのは上級者向けの印象だったから、進歩に驚いたのだった。
自分への土産に買ってしまいそうになった。
もう少し悩む時間があれば、購入していただろう。
思いつきで飛び込んだにしては、とても楽しい展覧会だった。
これが今日の良かった出来事。
悪かった出来事については、長くなるので割愛する。