さようなら「三保の水族館」

東海大学海洋科学博物館、地元の人間がいうところの「三保の水族館」は今日で閉館。
5月頃からは規模を縮小したうえで予約制の学習施設となるらしい。

 



自分は先月に行っていた。
最後の数週間は混雑もするだろうし、駆け込みで見に行くというのも性に合わない。
今日はテレビのニュースで「おわかれ」の映像を見て、その最後に訪れたときのことを思い出していた。

ここが人生初の水族館だった。
両親の地元ということもあり子供の頃から何度も行った。

海洋科学博物館という名の通り、水族館だけでなく海に関するものなら何でも展示している。駿河湾の調査、津波地震といった自然災害、海洋資源、環境問題、古地図や歴史まで扱う。今でいうところのバイオミメティクス(生物模倣)をテーマにした「メカニマル」は一つの目玉展示だった。
いかにも大学の施設らしい生真面目さと、まだ海への開発に夢の未来があった時代の名残りが、古い建物や展示のそこかしこに残されている。

今では昭和レトロの施設として有名になってしまったけれど、魚や水生植物の水槽は一級品だ。
自分はこの大水槽が本当に好きで、最後に訪れたのは、これをもう一度だけ見たかったことが大きな理由だった。

こんなにも綺麗な場所を僕は他に知らない。
大水槽の周りにある椅子を見ると、自分のように座っている1人客がそこかしこに。みんな、これが最後なのだろう。あまり水族館には見かけない普段着の老夫婦なども、この水槽を何周もしていた。

もちろん、おそらく人生初の水族館であろう幼い子供や幼稚園児の団体もいた。
水族館は好きで旅先にあれば必ず立ち寄っているけれど、あらためて素晴らしい水族館だったと思う。

自分が海外旅行でも水族館や動物園には極力行くこと、ガラパゴス諸島まで行って旅をしてきたこと。進学や就職ではなくて、もっと大きな「進路」を定めたのが、この三保の水族館だった*1



自分をよく知る知り合いは「君が作られた場所、君のための場所だ」と言っていた。間違いなくその通りで、だから水族館が無くなってしまうことがたまらなく寂しい。

 

 

清水区には新しい水族館ができる。
見栄えのする現代的な水族館ができることだろう。なにしろ静岡県静岡市だから、富士山や駿河湾地場産業の紹介も盛り込んだ、観光施設としても立派なものが建つはずだ。運営だって民間に任せることが決まっている。
だけど、絶対に「三保の水族館」とは違ったものになる。繰り返しになるが、やはり寂しい。

おかしな話なのかもしれないが、今はとても、他の水族館に行ってみたい気分だ。
ここ数年は"水族館遠征"はできていなくて、自宅から日帰りで行けるところばかり選んでいた。好きな水族館ばかりではあるけれど、今は全く知らない水族館に行きたい。
そこでもきっと「三保の水族館」のことを思い出す。
あの場所は僕の一部なのだから、当然のことだ。

 

ありがとう、三保の水族館。

 

お題「わたしの宝物」

*1:でも中学や高校の進路は、かなり本気でこの水族館への就職を目指した検討をしていた。教師や親に言われて選択肢の多い道へ進んだことは後悔していないが、もし上手く行っていたらどういう人生だったのだろう。

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