今日のお昼ごはんは、丸亀製麺で食べた。
自分としては珍しいこと。
かつて四国の香川県に住んでいたときには、数日に1回は讃岐うどんを食べていた。安くておいしいし、店による特徴がはっきりしていて、食べ歩くのも楽しかった。
ローカルフードをあんなに食べた土地は他に無いだろう。今でも、香川のいくつかのお店を思い出して懐かしくなる。かなり具体的な「あの店を再訪して、あれを注文したい」という思いがある。
ところで丸亀製麺は、香川にはほとんど店舗が無い。
香川県丸亀市と直接の関係がなく、かつ本場では質も価格も地元店に負けて早々に撤退したのだと聞いた。
何人かの香川県民に、この丸亀製麺について聞いたことがある。
細かいところは違うが、だいたい以下のような会話になる。例外は無かった。
- 丸亀製麺は四国の会社ではない。
- 関西の企業が「セルフ式の讃岐うどん店」として作り上げたものだ。
- 地元の店に比べると高いし、わざわざ行く利点もないから、香川県に定着しないのも当然だろう。
- あ、でも自分は否定しないよ。まずくはないし、好きな人は行けばいいと思う。
- まあ自分は行かへんけどな。
とりあえず、讃岐うどんに関しては鷹揚な姿勢を示すのが、模範的な讃岐人とされている。「あの店は不味い」といった話は無作法*1であって、せいぜい「人ぞれぞれ」に留めておくのが大人の表現とされる。
しかし、自身の好みについては明確に決まっているのも讃岐人であった。
「どの店のうどんも、それぞれ特徴があっておいしいものだ。否定なんてできないよ」と(讃岐弁で)言いながらも、行きたくない店には絶対に行かない*2。
だから、「あなたは、丸亀製麺に行きますか」と問えば「行かない」と断言する。
これは県外においても同じだった。
「あそこに丸亀製麺がありますね」と讃岐人に言うと、
- 丸亀と名乗るが、丸亀市の企業ではない。
- 県外では貴重な店だよね。
- ちょっと高いし、特別に良い店とも思わない。
- あ、でも自分は否定しないよ。好きな人は行けばいいと思う。
- まあ自分は行かへんけどな。
と言う。例外はない。
ほとんど機械的な反応と言っていい。感情すら込められていない、会話とも呼べないやりとりだった。
長くなったが、僕も数年の四国滞在で、この讃岐うどんマインドが身体に染み付いたようだ。静岡には丸亀製麺があちこちにあるけれど、わざわざ行く気分にはならない。
心の中で「まあ自分は行かへんけどな」と唱えている。
とはいえ、便利な店ではある。
早くて安くて、最も手軽な和風のファストフードだ。
注文で「これは失敗した」と後悔するようなこともない。
それに田舎の幹線道路沿いとなると、選択肢そのものが少ない。
総じて良い店だと思っている。
今日は冷たい「ぶっかけうどん」と、ちくわの天ぷら、イカの天ぷらを食べた。
トングを掴んで「さて何を選ぼうか」と迷っているときに、店員さんが独特の節回しで「揚げたてのぉ、鶏天が入りまああす!」と補充した天ぷらが、ちくわの天ぷらだった。
さらに「温かいぶっかけですねー」と言いながら出されたうどんが、きりりと冷えていた。
そういったいくつかの「ちょっと変だな」と思える出来事があったけれども、まずはおいしい讃岐うどん。
ただ、なんとなく夢のような「ちょっと変」ではある。
実際に夢の中の出来事なのかもしれない。
つまり僕は今、夢の中でブログを書いていることになる。
まあいいや、いつか目が覚めるまでは、この世界*3が現実なのだ。