昼に食べたよ朝ラーメン

静岡県中部のベッドタウン藤枝市には名物のラーメンがある。
名物といっても一向に流行らないが、それでも地元に根付いた味だ。
一般に「志太ラーメン(藤枝ラーメン)」と呼ばれている。

この種の名物外食によくある話だが、元はいくつかの小さな店舗が当たり前に提供していた料理が、いつの間にか“郷土の味”とされたものだ。

特徴は3つ。

  1. 冷たいラーメンと温かいラーメンを提供する
  2. 脂の浮かないあっさりした醤油ラーメンである
  3. 朝食の時間から提供する

1.と2.は関係している。つまり、冷たいラーメンを提供するにあたり、冷めると固まる動物性油脂は使えないのだ。出汁は鶏なども使っているのだろうから、注意深く取り除いているのかもしれない。冷たいラーメンにも油は浮いているけれど、基本的にさっぱりとした味になっている。

3.は地域性だろう。茶問屋の多い地域で、朝早くの取引の前後に供されたと本には書いてあった。昨今は、ラーメン好きの人達があえて楽しみとして、あるいは夜勤明けやパチンコ店の開店を待つ人達が多く使う。

これらの特徴から、地元民でも人によっては全く接点が無いことがある。わりと「いいとこの子」である知人家族も、存在は知っていても食べたことがなかったと言っていた。

冷・温と2つのラーメンを同時に注文する人が多い。
健康志向の人が好む食べ物ではないが、脂と旨味と塩気とボリュームを追求するジャンクフードの極地である街のラーメン屋とも違うあたり、志太平野を越えて流行しない理由ではないかと考察している*1

 

メトロリスボン

メトロリスボン

  • 作者:鷹野律子
  • 発売日: 2021/03/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

f:id:t_kato:20210302223230j:plain

f:id:t_kato:20210302223235j:plain

さて、今日はこの藤枝ラーメンを昼食に食べた。
たまたま入った店が、この藤枝ラーメンの店だったのだ。店名は「麦」。

goo.gl

雨の平日にしては混んでいると思う。人気店なのかもしれない。
確かにおいしかった。
多くの店が「蕎麦屋のラーメン」的な、甘くて塩辛い味付けになりがちなのに、かなり甘さを控えめにした醤油ラーメンになっていた。
冷たいほうだけ酢のような甘味を感じた。これが練りわさびに合うのだ。

小サイズが選べるのも嬉しい。できれば冷・温の両方を楽しみたいけれど通常サイズを2杯はいささか多い。あっさりすっきりした味で、小1杯では物足りないくらいなのがちょうどいい。

今日は時刻の関係で空いていたけれど、店は狭い。相席になってしまうテーブルもあった。
でも、もし「志太ラーメンを食べたい」と連れていくのならば、この「麦」が第一選択になりそう。
すぐ近くにある「まごころ」も好き。いつの間にか移転していた。

 

とびきりおいしいわけではないし、強い個性もない。
なんとか盛り上げようとしても、決してエリアを広げられない。かといって素朴でほっこりを愛する乙女雑誌に載るわけでもない。
そもそも地元の人ですら、ソウルフードになっていない。
そういう食べ物は、それはそれで趣があると思う。嫌いじゃない。

 

52ヘルツのクジラたち

52ヘルツのクジラたち

 

 

お題「ささやかな幸せ」

*1:静岡市で開店して半年で潰れた店があった。いきなり「朝から冷たいラーメンをどうぞ!」と言われても、ほとんどの人が対応できなかったのではないか。

t_ka:diaryは、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。