古本市・見ていないと動かない

古本市

静岡市葵区で開催中の古本市に行ってきた。
年に何回か「鈴木邸」という古民家(?)で開催されるイベント。古本屋が数軒と、パンやケーキのお店、それにコーヒーやカレーの店も出店する。

f:id:t_kato:20211107165829j:plain



f:id:t_kato:20211107165529j:plain

小さな絵本と、古い観光本を買った。
帰宅して我に返ってから、特に興味深い本というわけでもないことに気がついた。
しかしお祭りのテンションで数百円のものを買ったので、大きな後悔は無い。

 

 

見ていないと動かない

明日、iMacAppleに送る。
下取りプログラムなる仕組みで、うまく行けば数万円の下取額が付く。
返す前には工場出荷状態に初期化する必要がある。操作自体は特に難しくはないけれど、妙に時間がかかっている。
残り時間と、進行状況を示すシークバーだけが画面に表示されているのだが、「残り43分」のまま50分は過ぎている。画面を睨んでいると「残り42分」になるし、キーボードやマウスを適当に動かしていれば「残り22分」へといきなり動いたりもする。
ただし席を外すと、「残り1時間と3分」くらいに戻る。
どうやら”見ていると動くし、そうでなければサボる”ようだ。

こんなiMacに育てた覚えはないのだが、困ったものである。

ちなみにiMacを手放す際に生じた感傷は、今はほとんど消えてしまった。
データはそのまま新しいMacBook Airに移ったわけなので、気持ちとしては「Appleのパソコンを継続している」わけだ。パーツをアップデートしたようなものだと思えば、寂しさもさほど感じない。そもそも、カバンや自転車と違って、手を入れて自分なりの物にしてきたのはデータであってモノではない。だから、周辺機器を外し、まっさらな状態で部屋の隅に置かれたiMacは、愛着の対象から外れるのだろう。

となると大切なのはバックアップ。末永く、継ぎ足して使い続ける秘伝のタレのごとく、僕のデータを永久に残していくためにも、バックアップだけは絶やしてはならない。

それにしても時間がかかる。こんな状態の機械を本当に下取りしてくれるのだろうか。心配になってきた。

 

お題「ささやかな幸せ」

 

唐突に寒い

朝がずいぶんと寒かった。
どうしてこんなに…と厚着をして身支度をしていて気がついた。窓が少し開いていた。

それはそうとして、昼間だって急に気温が下がった気がする。
少し前まで長袖Tシャツだけで済んだのに、今日はあと1枚欲しい感じ。油断すると、くしゃみが出そう。
とはいえ、例年に比べたらずいぶんと暖かいはず。11月の初旬といえば旅行に行っていた年が多く、Google Photoの「数年前の今日」通知や脳内の記憶を辿ると、晴れていても寒さを意識した服装になっていた。

 

 

f:id:t_kato:20211106214126j:plain

というわけで、おやつも秋冬らしく鯛焼きにしてみた。
らしく、とは言うけれど今年と昨年は季節によらず、鯛焼きばかり食べている。
手軽に買えて、持ち帰りができて、どの店で買っても大外れが無いからだろう。車で立ち寄りやすい「お気に入りの店」がいくつかあるのも、鯛焼き屋を利用しやすい理由かもしれない。

この「神谷製餡所」の鯛焼きは、バリ部分*1をそのままにしてあるのが特徴かもしれない。ふわふわとした鈴カステラに近い生地ということもあって、かなりボリュームがある。しかも製餡所だからか、小豆餡の量も多い。

遅めのおやつとしてはいささか量が多い気がするが、それでもおいしく食べてしまった。久しぶりに抹茶も点てて、なかなかに充実したおやつになった。

朝から曇っていて気温も低く、気持ちだって盛り上がらない。
それでも鯛焼きはおいしい。「それなら、まあいいか」と思えるくらいには、生活におけるおやつは大切。

 

お題「わたしの癒やし」

*1:製菓・製パンにおける”みみ”の部分。鯛焼きを鋳物とすると、バリと呼ぶのが近いはずだ。

チョコレートパフェのことだけ書く。

いろいろなことがあった金曜日。
でもブログに書くのはチョコレートパフェのことだけ。

今日は清水区の北街道方面、押切とか大内の辺りに行く用事があった。
そういえばしばらく行ってないPappusは…と検索してみたところ、先日からカフェ営業も再開していた。まだソーシャルディスタンスその他の配慮は必要ではあるが、一人利用ならば大丈夫そう。

 

 

というわけで、Pappus*1に寄り道して、パフェを食べてきた。
ケーキも焼き菓子もたくさんケースには並んでいた。いつも”ほとんど売り切れ”状態のことが多いから、ケーキが買えるのは僥倖なのだが、悩みに悩んでパフェを選んだ。
理由は2つ。

  1. パフェにも焼き菓子が乗っている(であろう)から
  2. なんとなく祝祭的なものを食べたかったから

今日のパフェはチョコレートパフェ。
この店のブラウニーは絶品で、生クリームもおいしい。フルーツソースの使い方も好みに合っている。そういうブラウニーなどの要素が小ぶりなグラスに詰め込まれていて、すばらしいパフェになっていた。

f:id:t_kato:20211105225605j:plain

f:id:t_kato:20211105225608j:plain

f:id:t_kato:20211105225611j:plain

果物を山盛り、あるいはアイスやシャーベットが溢れるほどのパフェも良いけれど、Pappusのようなリーンな雰囲気のお店では、やはりシンプルなものがいちばん。落ち着いた雰囲気なのに華やかなのはさすがである。

ともあれ、ようやく個人経営の小さなお店が、店内での飲食を少しずつでも再開しはじめた。海外では再流行など不気味な動きもあるから、可能な限り警戒と配慮は必要だと思う。でも、おそるおそるであっても、ようやく素敵なお店でお茶やケーキや、そしてパフェが食べられるようになったのだ。
この素敵な当たり前を維持するには、何が必要だろうか。そんな事を考えながらお店をあとにした。

 

 

全然関係ないけれど、創元社のSFアンソロジー(テーマは疫病禍とその後の社会?)がアマゾンでバラ売りされていた。好きな作家、興味のあるタイトル*2だけ買ってみた。
短編バラ売りは好きだけれど、紙版でしか読めない記事や作品もあるようだ。それはちょっと残念。

 

*1:素敵な店名である。
清水区のケーキ・カフェカテゴリーでは「声に出して呼びたい店名」暫定1位。
ちなみに正式な読み方を知らない。たぶん”パップス”だろう。学者の名か、綿毛・冠毛のこと。

*2:6作のうち4つを購入。小川一水氏の「未明のシンビオシス」を読み始めた。

机上整理、三脚テーブル、そしてモンブラン。

f:id:t_kato:20211104221546j:plain


昨日から使い始めたMac Book Airのために、机の上を整理した*1
iMacを下ろして、今までiMacで使っていたサブモニターを中心に据え、Mac Book Airはその横に置く。
普段はMac Book Airのモニターはサブ用途で、出先で使うとき以外は2つのモニターを広く使う。これもUSBケーブル1本で充電もモニターも、周辺機器との接続も済むからできたこと。USBの差込口が2つしかないMac Book Airだが、特に不足はなさそう。モニターの裏面にUSBのハブが仕込まれていて、キーボードやトラックボール、バックアップ用のディスクドライブを集約できた点も机上整理には役立った。

 

 

ちなみにMacBook Airを置く台は、譜面台みたいなもの。
小さな三脚と、三脚に付けられるテーブル(?)を組み合わせてみた。

今回は、Mac Book Air以外は”家にあるもので済ませる”方針で、この台もガラクタ箱のものを活用した。角度も高さもちょうどいい。
この三脚とテーブルの組み合わせは重宝している。大小の三脚と組み合わせると、軽くて丈夫なテーブルがすぐにできあがる。角度調整が自由なのも便利。

 

iMacの画面が27インチ。
Mac Book Airに接続したモニターは21インチと少し、そしてMacBook Air本体のモニターが13インチ。今のところ、さほど狭いとは感じない。モニターを少しだけ前に設置したところ、特に違和感無く使えている。

今日のところは「机上モード」でしか使っていない。
だからMacBook Air本体のキーボードではなく、以前から使っていた外付けのキーボードで入力をしている。同じApple製のパソコンで、設定も丸々引き継いだため、使用感が変わらないのは良いのか悪いのか。ただ、動作のもたつきは皆無で、使っていて気持ちが良い。そして今回はMac Book Airからストレージに至る全てに、冷却ファンも回転軸もない。だからとても静かで、涼しい。

 

 

机の上の模様替えは、ちょっとした空き時間、作業の間に進めていった。
ケーブルの取り回しなど、考えることも、やり直しも多い。なかなか慌ただしい日となってしまった。

f:id:t_kato:20211104221347j:plain

f:id:t_kato:20211104221354j:plain



そんなわけで、夕方には自分を労うために、ケーキを食べに出かけた。
ちょうどモンブランを食べたいと(強く)思っていたのだ。モンブランまたはアップルパイを食べないと、一日が終わらない感じがしてならなかった。

モンブランといえば名店がいくつか思い浮かぶが、今日はスタンダードにおいしい藤枝市の「ボクゥボクゥ」に足を伸ばした。
カフェオレとともに静かな店内でいただく。
かりっとしたメレンゲと、たっぷりのマロンクリーム。ケーキ好きとしては避けたい表現だが「甘さ控えめでおいしい」。いや、甘みは十分にあるのだけれど、べたべたしていないので食べやすいのだ。見た目も良いけれど、食べてみると非凡さに驚くタイプのモンブランだった。

机はすっきりしたし、モンブランはおいしかったし、概ね成功の1日。
ただし壁の時計が止まっているのを発見してしまった。交換が面倒。でもがんばる。

 

お題「手作りしました」

*1:画像は整理途中。ここからさらにすっきりさせていく。

情報を転送中です

新しいMacBook Airが家に届いた。
注文したのは先月の後半。
昨晩に「深センを出た」とか「上海空港に到着した」といった通知が来ていて、今日の午前中に静岡県に着くのだからすごい。今日が到着予定日でも、早くて昼過ぎを想定していたから驚いた。

世の中は文化の日で賑わっているようだが、僕は遠出せずにiMacからMacBook Airへの”引っ越し作業”に集中した。
祝日だというのに、外出といえば生活用品の買い出しと、市民公園で開催中のマルシェだけ*1
素晴らしく晴れて明るい太陽の光は、庭に干した布団が吸い込んでくれただろう。

 

f:id:t_kato:20211103171330j:plain

データ移行そのものは、冗談みたいに早かった。
今どき、デジタル機器の引き継ぎが簡単なだけでは驚かない。とはいえアップル製品はさすがに簡単だった。
同じネットワーク上*2にあるiMacを探してきて「このiMacから移行するの?」と聞くので、僕はコーヒーを飲みながら「YES」とか「承諾する」を選択していればいい。

ただ今回は、単に環境を丸ごと移し替えるのではなくて、iMac(据え置き型)からMacBook Air(ノート型)への移行に合わせて、机や周辺機器のレイアウトもがらりと変える。画像やイラストデータの整理方法も、10年続けた方法を改めるつもり。

というわけで、データや設定の移行は、すんなり移った*3けれど、今日のところは机上整理や設定の変更作業などのため、MacBook AirではなくてiMacを使って作業している。最後のバックアップを取ったら初期化するのだが、なんとなく感傷的な気分になってしまう。

なにしろiMacを買ってから6年間、激動の人生だった。転居やら何やら色々あって、今だって落ち着いているとは言えない。本当なら、iMacは動かなくなっても*4モニュメントとして庭にでも飾りたいところだけれど、それもなんだかグロテスク。
それに修理すれば、たぶんきちんと動く。

6年も使ったのに、処理速度など基本性能の部分で全く不満が出なかった点で、iMacはすごい。大昔の「OSをアップデートしたら遅くて3年も保たなかった」なんてパソコンは過去のものだとわかっていても、驚くべき素敵なマシーンであった。

でもMacBook Air、ちょっと使ってみただけでもスイスイと気持ちよく動いて、これもまたすごい。iMacに何の不満もなかったのに、何もかもがスムーズで「新しいのは良い!」と思ってしまった。

 

それでは、iMacと最後の”仕事”をしてきます。
新しいMacBook Airの環境を整えてからではたぶん納期ぎりぎりの仕事があるので、それだけは片付けてしまいたい。
まるで引っ越しの日のように慌ただしい。僕の人生のようだ。

 

 

お題「これ買いました」

 

*1:マルシェというのにフレンチ感が皆無だった。椎茸の佃煮を購入。

*2:要は同じWiFiに繋がっている状態

*3:1時間くらい外出している間に完了していた

*4:既に絶不調なので買い替えたのだ。動かなくなるのも時間の問題である。

映画「アイの歌声を聞かせて」

友人とその子供達と、アニメ映画「アイの歌声を聞かせて」を見てきた。
なかなかおもしろかった。
真夏が自粛期間ではなく、夏休み向けアニメ映画として上映していたら、大ヒットしていたかもしれない。


www.youtube.com


www.youtube.com

前半はドタバタの、よくある「天真爛漫なAIが引き起こす騒動によって人間が仲直りしたり恋が進行する青春ドラマ」である。
田舎町に作られた人工知能と自動化の実験都市。クラスで孤立する主人公と、彼女を見守るパソコンオタク少年。どこか空虚なリア充イケメンと、主人公への当たりがきつい少しギャルっぽい女子*1。物語を動かすために必須の肉体担当である柔道部員の朴訥な男子。
そこに転校してくるアンドロイドの少女。秘密裏に行われているAIのテストではあるのだが、さらに秘密があって…みたいな、本当にありきたりな話。

中盤からも、わかりやすく平凡なストーリーが続く。
大抵のことはAIがハッキングでなんとかしてしまうし、人間の感情は歌(このアンドロイド=AIは歌が得意)で動かす。攻殻機動隊ならば不穏な状況に陥りそうだが、この映画ではわかりやすい悪者は1人だけ。中高生が考えた「冷徹な大企業の管理職」みたいな人が出るだけ。

そして後半。天真爛漫過ぎて謎がほったらかしになっていたアンドロイドの秘密、様々な伏線が回収される。
ここはなかなか面白い。
ネットワークやコンピューターの用語をほとんど使わずに、今のスマホWebサービスを使っていればわかる位の理由と、専門家ならば「ありえない」と言いそうなIT的なファンタジーで、一気に畳み掛ける。

電子ネットワークとコンピューターの乗っ取りが可能ならば”なんでもあり”の話になってもおかしくないのに、序盤から続く「友達」「幸せ」「思い出」といったキーワードに沿って風呂敷は畳まれていく。
近未来SF-デジタル人情物語は山ほど作られてきたけれど、実にさっぱりとした良い話の進め方だった。特に、それほどコンピューターに詳しくない友人も、彼女の娘さんも息子さんも、それぞれの知識をベースに話の流れを間違いなく掴んで、きっちり楽しんでいた点は、特筆に値するだろう。なかなかできるものではない。

そういえば、この映画では珍しく「匿名掲示板」も「SNSで拡散する悪意」も「インターネットを通した世界中の善意」も、ほとんど登場しない。個人的には、ネットワーク化社会とか言いながらも”今そのまんま”の「怖いインターネット」を描く昨今の作品に飽きていたので、この部分はとても好感が持てた*2
SONYGoogleが提唱する数年後の未来を、もう少し日本の田舎寄りにカスタマイズした世界を、説明シーンやセリフもないのに無理なくストーリーに織り込んでくるところも良かった。

f:id:t_kato:20211102220911j:plain

前半は平凡で、しかも(見た目は可愛らしい女の子であるアンドロイドが)唐突に歌い出すシーンが何度も続くから、ちょっと辛い。しかしそれでも絵は癖がなく綺麗だし、テンポの良い掛け合いが続くから、集中して見ていられる。
そして後半の盛り上がりで、すぱっと気持ちよく終わる。

 

というわけで、シンプルで楽しい映画だった。
真面目に考えれば変なところもあるし、「そもそもあの人のミスじゃないか…」みたいに言い出せばきりがない。AIが万能すぎるとか、ツッコミどころもあるだろう*3
でも、その辺のSF的なディテールや個々人の事情をばっさり割愛して、歌と青春で120分未満で駆け抜けたことで、気持ちが良い佳作になった。楽しい映画でした。

 

 

しかし友人親子の付添いとはいえ、新型コロナのどたばたが明けて、ようやく家族以外との外出や買い物、そしてお茶ができたことが、本当に感慨深い。
まだマスクは着けているし、お茶をした店だって人の少ないところを選んだけれど、それでも1ヶ月前にはできなかったことだ。あちこちのスーパーコンピューターや研究機関が12月の再流行を警告しはじめた。できれば食い止めたいところだ。旅も外食も1人で平気な自分でも、そう思う。

 

 

お題「ゆっくり見たい映画」

*1:もちろん実は面倒見が良い優しい子。

*2:女子高生が主人公で、日常生活を丁寧に描いているのに、着替えシーンなどが無いところも素晴らしい。無意味に下着を見せる映画が多すぎる。

*3:ノベライズやコミカライズで、細部や裏話はいくらでもフォローできそう。

井川線 日帰り旅行 後編

今日は知人に会ったりケーキを食べたりと、概ね平穏に過ごせた。
それはそうと、先週に行った井川への日帰り旅行について。今回は後編。

f:id:t_kato:20211101225040j:plain

大井川鐵道井川線で、大井川沿いを北上。
長島ダム駅で降りて周辺を散策、再び駅に戻ってトロッコ列車に乗ってからの話。

f:id:t_kato:20211101225136j:plain

ここから先は本当に過疎地となる。
駅前にあるのは山道だけ、あるいは(冗談みたいな話だが)駅で降りても道も家も施設もない、ただ駅があるだけという無人駅すらある。
風景は素晴らしい。
チンダル現象で水色に見える湖水と山の緑。あと少しすれば紅葉が眩しいだろう。
ハイキングには素晴らしい場所だ。

f:id:t_kato:20211101225235j:plain

f:id:t_kato:20211101225246j:plain

f:id:t_kato:20211101225257j:plain

井川線で有名なのが湖上駅。
ダム湖の真ん中に、ほとんど島みたいに突き出した山があって、トロッコ電車用に高い橋がかけられている。ちょうどその”島”部分に駅が作られている。
この駅からは、東屋(土日だけカフェっぽい飲食店になるようだ。)とハイキングコースへの接続路しかない。
駅に降りると、ダム湖にかかる橋を渡ってから、急な階段と山道を上り下りして、湖の脇にある車道に出る。それ以外に道はない。

f:id:t_kato:20211101225406j:plain

f:id:t_kato:20211101225416j:plain

橋は高くて絶景なため、降りる客は多い。
僕も今回はこの駅で降りた。
しかし車道に至る階段も山道も、かなりの急勾配で、高齢者にはちょっと厳しい。僕は数人の老人に頼まれて荷物を持ったけれど、途中で「これは無理」と引き返していた。引き返した場合は、次のトロッコ電車が車で東屋か駅で1時間ほど待たなければならない。
僕もかなり息が切れた。ハイキングコースを名乗るには、少し辛い道だった。

車道に出てからも、坂は続く。
先ほど降りた湖上駅を見下ろす展望スポットを通り、車道やハイキングコースを歩いて次の駅を目指すのが定番ルート。道はいくつかあるけれど、他に目的地もない。

 

このコースも、わりときつい。
途中で観光用に作った吊橋を渡ってみたり、滝や展望台に立ち寄ることはできる。ただ基本的に歩くだけなので、特に一人旅では不安になってくる。

天気も良くて、トロッコ列車の中では震えていたのに、道を歩いているときは長袖Tシャツでも汗をかいた。

とにかく、ひいひい言いながらも次の駅、接岨峡温泉駅へ到着。
温泉に入るのは少し早いので、終点の井川駅を目指す。

 

f:id:t_kato:20211101225459j:plain

井川駅ひとつ前の無人駅である「閑蔵」で降りる客が多かった。フリーパスで乗れるバスを使うほうが、トロッコ列車で井川に行くよりも便利なようだ。

f:id:t_kato:20211101225629j:plain

とにかく井川線の終点が井川駅。終点ではあるが、こぢんまりとしている。
そして駅から徒歩5分の場所に井川ダムがある。
ダムをしばらく眺めてから、電力会社のPRセンター的な「井川展示館」*1を見学した。

f:id:t_kato:20211101225726j:plain

f:id:t_kato:20211101225732j:plain



この展示館の裏というか駐車場からは、廃線跡を利用した遊歩道が伸びている。かなりわかりづらい、というか案内表示は遊歩道に入るまで皆無なので、ちょっと探してしまった。ダム側から外階段を上って展示館に入り、入り口カウンター向かいの駐車場側の出入り口からそのまま外に、そして不安になりながらまっすぐ歩く。「遊歩道」や「ハイキングコース」といった、表記が一定しないいくつかの看板を通り過ぎると、古い線路が敷かれた遊歩道に出る。

f:id:t_kato:20211101225803j:plain

f:id:t_kato:20211101225814j:plain

f:id:t_kato:20211101225825j:plain

遊歩道はとても快適だった。今回の日帰り旅で、唯一の快適な道だったかもしれない。
2本の線路の間は砂利が敷かれているし、トンネルも整備されている。ヤマビルの死骸がいくつかあったから、暖かい季節はヒル対策が必要かもしれない。
元が鉄道路線だから起伏も坂もなく、静かな山の中を存分に歩いて楽しめる。

そして遊歩道の終点から先は、またしても車道、そしてハイキングコース。
吊橋に行くにも、急な下り坂。もちろんその後は上り坂。いつまで経っても井川の集落へはたどり着けない。

f:id:t_kato:20211101225851j:plain

f:id:t_kato:20211101225901j:plain

途中で「井川大仏」へ立ち寄った。
地元の歯科医が長い歳月と巨費を投じて作ったという大仏。見た感じは、地方の霊園にある不動産屋が建てたそれと変わらない。ただし、地元の人達には素朴に信仰されているようで、珍スポットの趣は無い。
ここに行くにも、やはりそれなりの高低差と距離を歩く。

f:id:t_kato:20211101225933j:plain

冗談みたいな山の中の「通学路」を歩き*2、さらに林道を進むと、ようやく井川の集落へと到着する。
本来は、井川駅から集落へはダム湖を渡る無料連絡船があるのだが、今は水量が少ないために休止中なのだった。

そのせいか、井川の集落はひっそりとしている。
地元の人向けの”なんでも屋”は開いているけれど、観光客向けの店は「土日のみ開けます」と貼り紙があるだけ。新型コロナ対応もあって、まだ週末しか本気を出していない様子だった。

f:id:t_kato:20211101230025j:plain

仕方がないから、行動食として用意したリュスティックとシナモンロールを昼食代わりにする。登山趣味のパン屋で買っただけあって、どちらも小さいのに元気が出そうな味だった。ああ、熱いコーヒーが飲みたいなあ…と思ったことを覚えている。

f:id:t_kato:20211101230107j:plain

f:id:t_kato:20211101230117j:plain

パンフレットには「レトロな町並み」と書かれていた井川集落。しかし家の近所の「過疎集落」と大して変わらない。
そもそもパンフレットでは気軽な観光スポットのように書かれている吊橋も大仏も(そして閉業中の農産物直売所も)、行くだけで足が痛くなるくらいに距離があるのだ。

気持ちとしては、もう少し長居をしていても良かったのだけれど、足が限界になったので井川駅に戻ることに。上手い具合にバス*3に乗せてもらえたので、駅まではあっという間。

f:id:t_kato:20211101230240j:plain

f:id:t_kato:20211101230248j:plain

f:id:t_kato:20211101230256j:plain

帰路の井川線は、途中下車も乗り換えも無し。
やはり寒い。午後4時を過ぎれば風も冷たい。そして冗談みたいに吹き曝しの車両もある。普通の「壁がある」車両も、窓の半分は開いていて、とても寒い。
往路と同じく最大級の厚着をして、千頭駅を目指す。帰路の観光案内はいくぶんあっさり目だが、それでも景色の良いところでは減速もする。そもそもスピードがまるで出ない列車だから、想像以上に時間がかかる。

f:id:t_kato:20211101230143j:plain

f:id:t_kato:20211101230147j:plain

f:id:t_kato:20211101230154j:plain

千頭駅で下車をして、井川線の旅は終わり。
駅からは車でひたすら大井川沿いの道を下っていく。途中で立ち寄ったコンビニのコーヒーがおいしかったこと。つい、普段は買わない肉まんを食べた(これもおいしかった)。

次に行くとしたら、もう少しのんびりと歩きたい。
そして、多少は荷物が重くなっても、熱いコーヒーは持っていく。

f:id:t_kato:20211101230332j:plain

普段の行楽、観光の尺度でいうと、井川と井川線沿線は、いささか密度が低い。かなりの距離を歩くことになる。ダンプトラックが走る車道を歩く機会も多い。普段からウォーキングやハイキングをしている人でなければ、ちょっと大変かもしれない。
それに名物料理なども無い。あるのかもしれないけれど、駅前にあるのは平凡な「山菜そば」であり、集落の食料品店で買えるのは定価のスナック菓子や煎餅である。
その分、観光用に”鄙びた感じ”にしていない、本当の「山とダム湖と山村」をお手軽に楽しめる。鉄道マニアの定番路線と聞くが、乗り物好き以外にも(もしも健脚ならば)おすすめできる。

たぶん足を痛めたのだろう。今も足を曲げると、ほんの少しだけ疲労した感覚がある。
ここ数ヶ月は人生で最大級に運動不足だったとはいえ、体力や脚力に関しては愕然とした旅だった。
でも、行けて良かった。静岡県中部の人間としては、近くて遠い場所だった。

 

 

 

*1:とても立派だが、ほぼ無人だった

*2:本当に学校があった。

*3:地元の人向けのバス。大きめのハイエースだった。

井川線 日帰り旅行の記録 前編

先日行った、静岡市葵区の北部、井川への日帰り旅行。
ようやくパソコンを触る時間が取れたので、少しだけでも記録を残しておく。

 

今回は旅の始めから中頃まで。
といっても、電車旅なのに時刻表の記憶も、降車駅の記憶も薄れてきていて、記録としては正確ではない。大井川鐵道観光協会のサイトにはいくらでもモデルコースがあるので、そちらを参考にするのが良いだろう。

 

f:id:t_kato:20211031234034j:plain

f:id:t_kato:20211031234042j:plain

f:id:t_kato:20211031234053j:plain

旅の起点は千頭駅にした。
一般的には、東海道線JR金谷駅から大井川鐵道金谷駅、そしてSL(有名なきかんしゃトーマスにも乗れる)や古い列車に乗って千頭駅に行く。
自分の場合は、自宅から車で千頭駅に行くほうが少しだけ早く、かつ電車賃も節約できた。
大井川沿いの曲がりくねった道は大型車両も多いから、安全第一ならば鉄道だけの旅のほうが良いと思う。時間の関係で、往路にはそれほど寄り道もできないし。

f:id:t_kato:20211031233949j:plain

f:id:t_kato:20211031233956j:plain

千頭駅には、きかんしゃトーマスとその一党が停車していた。
普段なら子供たちが記念撮影などができるはずだが、新型コロナ対策で入場できない。ホームの端には転車台もあって、広くて見応えがある駅だ。

f:id:t_kato:20211101000549j:plain

金谷駅からの鉄道は、一旦ここで終わり。
この先は井川駅まで、トロッコ列車に乗っていく。僕は隣接する道の駅に車を停めて*1トロッコ列車に乗る。

周遊切符がお得なので、この駅で買っておく。
スマホアプリならペーパーレスだが、いちいちマイナーなチケットアプリをインストールして、アカウント作成やカード登録をするメリットもないので、紙の切符を選んだ。どうせ名刺大の切符をポケットに入れておけばいいだけなのだ。スマホを開くよりも簡単。

f:id:t_kato:20211031234219j:plain

f:id:t_kato:20211031234226j:plain

さて、このトロッコ列車はとても狭い。
片側に1人席、中央通路を挟んで反対の窓際に2人席が並ぶ。
クッションが硬めでコンパクトな椅子は、背もたれがほぼ直角。

トロッコ列車の線路は一般の電車と変わらないけれど、車体の幅がかなり狭い。ほぼ車輪の幅と変わらない。小さな車体ならばトンネルなどの各種設備が小さく安く作れるから、と説明文があった。かつてはダム開発と林業のための業務用だったから、小型で当たり前なのだ。

f:id:t_kato:20211031234329j:plain

f:id:t_kato:20211031234340j:plain

車体は小さいけれど窓は大きい。この辺りは観光鉄道らしいところ。
僕が乗った車両は昭和32年製造とプレートがあった。

僕を乗せた始発の井川行きは、3両編成。それぞれの車両に3組から2組の客、それに運転手と車掌さん。オフシーズンの平日とはいえ、ちょっとさみしい感じ。

走り出すと車掌さんの検札、そして「どの駅で降りるのか」を確認される。無人駅ばかりの路線だから、降り忘れが無いようにチェックしてくれるのだ。もしかしたら運行中の行方不明者が出ないようにしているのかもしれない。瀬戸内海の島々を巡る船も、同じような運用をしていた。

トロッコ列車の乗り心地は悪い。
しっかり揺れるし、がたごとぎいぎいと大変にやかましい。しかも金属が擦れる高い音が坂道のたびに発生する。さらに言うと、ほぼ坂道が続くのが井川線である。

でも楽しい列車である。
大きな窓は基本的に開放。車よりも遅く走るトロッコ列車は、見どころのたびに減速してくれる。車掌さんが丁寧な説明をするのも楽しい。昨今の行楽地にあるウケ狙いのネタを仕込むような案内放送ではないのも素敵だ。いわゆる車掌さんの喋り方で、眼下に広がる絶景を解説してくれる。
大井川を縫うように、数え切れないほどの小さなトンネルをくぐりながらトロッコ列車は標高を稼いでいく。
こんなところに!と驚くような場所に家がある。ダムと渓流と山の緑を眺めながらのんびりと旅をするのは、ずいぶんと贅沢な気分になれる。

f:id:t_kato:20211031234613j:plain

カーブが多いせいか、窓から自分の乗っている列車を眺められるのもいい。
トンネルは本当に狭くて、手を伸ばせば壁が触れそう。なるほど、トロッコである。

ただし寒かった。
外界との気温差は10℃以上。大きな窓を閉めたらガラスが傷だらけで風景が見えない、しかも新型コロナ対策で窓の半分はあらかじめ開いている。つまり冷たい風が吹き曝し。しかもこのトロッコ列車は、ヒーターもエアコンも付いていない「箱」なのだ。

持参したスヌードを巻いても寒い。
フリースジャケットをマウンテンパーカーの下に着て、ネルシャツのボタンを全部閉め、ダウンベストも追加して、ようやく落ち着いた。荷物になるからと魔法瓶は車に残して、冷たい麦茶のペットボトルを買ったのが間違いだった。熱い紅茶とコーヒーのことを考えながら、それでも絶景を楽しんだ。

 

 

f:id:t_kato:20211031234818j:plain

f:id:t_kato:20211031234833j:plain

f:id:t_kato:20211031234844j:plain

とにかくそうやって、景色を楽しみ、そして震えながら進んでいくと「アプトいちしろ駅」に到着する。
ここでは「アプト式機関車」が接続する。ここからの急斜面は鉄の車輪では滑ってしまうから、線路の間に並べたラック歯車と、アプト式機関車の歯車を噛み合わせて、がりがりと登っていくのだ。それがアプト式
接続作業はこの駅の名物となっていて、短い待ち時間には写真を撮る人が集まってくる。

このアプト式機関車が働く区間は短い。次の駅では切り離してしまう。ただし乗っていてもわかる急坂。ちょうどダムをぐるりと回るように走るから、どれだけの坂を登っているのかも、よくわかる。
次の駅「長島ダム駅」切り離し作業でしばらく停車した後、トロッコ列車は再び井川を目指す。
僕はここで一旦降りて、長島ダム周辺を散策した。

f:id:t_kato:20211031235042j:plain

f:id:t_kato:20211031235052j:plain

f:id:t_kato:20211031235103j:plain

f:id:t_kato:20211031235113j:plain

f:id:t_kato:20211031235125j:plain

f:id:t_kato:20211031235136j:plain

この井川線は、上り下りともに1時間に1本の列車が来る。
だから途中下車した場合は、時刻表に合わせて動く。バスも少しはあるけれど、他はハイキングコースや林道ばかりなので、トロッコ列車が離島巡りにおける「船」になる。
最終列車(井川発で16時前)を睨みながら、いくつかの駅で降りて歩くのが、井川線の楽しみ方になる。

 

 

f:id:t_kato:20211031235206j:plain

ここまでが前編。
鉄道マニアでもないのに、トロッコ列車は楽しめた。
寒さには閉口したが、でもこの時はまだ山道を歩いてもいないから、元気いっぱいだった。後編は慣れないハイキングで疲弊する話になります。おやすみなさい。

 

 

*1:この千頭駅も含め、あちこちで道の駅と連携して観光振興を図っているようだ。

母の従姉・味噌ラーメン(自分で溶くタイプ)

今日もまだiMacが不調。
ひゅうひゅうと冷却ファンが全開で回っている。とりあえずバックアップは万全だから、来週にMacBookAirが届くまでは出張・旅行用のノートパソコンを使うことにした。

iMacの修理(おそらく初期化した後にAppleへ下取り依頼するだろう)に時間をかけたいが、今日は親戚の家に行ってきて帰宅は今。
親の用事で出かけたわけだが、思えば他人の家で手料理をいただくなんて何ヶ月、いや何年ぶりだろう。しかも母の従姉という、血縁上も、そして普段の付き合いも遠い間柄。

 

 

f:id:t_kato:20211030230657j:plain

iMacの状況とは全然関係なく、今日のお昼は味噌ラーメンを食べた。
静岡県中部で稀に見かける「味噌を自分で溶いて食べる」スタイル。両親と合流する前に、そういえばこのへんに…と思い出して立ち寄ったのだ。昔、何度か行った店だ。

 

できるだけ味噌を溶かないで、少しずつ使うくらいがおいしいと思う。生味噌の味が好きな人には、そのほうが良いはず。塩辛い味噌が、多めの野菜に合う。

この系列の味噌ラーメンを出す店は、どういうわけか量が多い。
大食いを強調しているわけではないけれど、普通に食べているだけで満腹になってしまう。

だから、午後はお腹いっぱいで、上に書いた親戚宅では眠くなって困ってしまった。
肩肘張るような間柄ではないにしろ、成人してからは数回して会っていない相手の家なのだ。僕は両親のために車を出しただけ、だから余計に手持ち無沙汰である。

 

 

そんなわけで今夜もまた、井川への小旅行については書けない。
困ったものである。

 

 

t_ka:diaryは、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。