先日行った、静岡市葵区の北部、井川への日帰り旅行。
ようやくパソコンを触る時間が取れたので、少しだけでも記録を残しておく。
今回は旅の始めから中頃まで。
といっても、電車旅なのに時刻表の記憶も、降車駅の記憶も薄れてきていて、記録としては正確ではない。大井川鐵道や観光協会のサイトにはいくらでもモデルコースがあるので、そちらを参考にするのが良いだろう。
旅の起点は千頭駅にした。
一般的には、東海道線JR金谷駅から大井川鐵道の金谷駅、そしてSL(有名なきかんしゃトーマスにも乗れる)や古い列車に乗って千頭駅に行く。
自分の場合は、自宅から車で千頭駅に行くほうが少しだけ早く、かつ電車賃も節約できた。
大井川沿いの曲がりくねった道は大型車両も多いから、安全第一ならば鉄道だけの旅のほうが良いと思う。時間の関係で、往路にはそれほど寄り道もできないし。
千頭駅には、きかんしゃトーマスとその一党が停車していた。
普段なら子供たちが記念撮影などができるはずだが、新型コロナ対策で入場できない。ホームの端には転車台もあって、広くて見応えがある駅だ。
金谷駅からの鉄道は、一旦ここで終わり。
この先は井川駅まで、トロッコ列車に乗っていく。僕は隣接する道の駅に車を停めて*1、トロッコ列車に乗る。
周遊切符がお得なので、この駅で買っておく。
スマホアプリならペーパーレスだが、いちいちマイナーなチケットアプリをインストールして、アカウント作成やカード登録をするメリットもないので、紙の切符を選んだ。どうせ名刺大の切符をポケットに入れておけばいいだけなのだ。スマホを開くよりも簡単。
さて、このトロッコ列車はとても狭い。
片側に1人席、中央通路を挟んで反対の窓際に2人席が並ぶ。
クッションが硬めでコンパクトな椅子は、背もたれがほぼ直角。
トロッコ列車の線路は一般の電車と変わらないけれど、車体の幅がかなり狭い。ほぼ車輪の幅と変わらない。小さな車体ならばトンネルなどの各種設備が小さく安く作れるから、と説明文があった。かつてはダム開発と林業のための業務用だったから、小型で当たり前なのだ。
車体は小さいけれど窓は大きい。この辺りは観光鉄道らしいところ。
僕が乗った車両は昭和32年製造とプレートがあった。
僕を乗せた始発の井川行きは、3両編成。それぞれの車両に3組から2組の客、それに運転手と車掌さん。オフシーズンの平日とはいえ、ちょっとさみしい感じ。
走り出すと車掌さんの検札、そして「どの駅で降りるのか」を確認される。無人駅ばかりの路線だから、降り忘れが無いようにチェックしてくれるのだ。もしかしたら運行中の行方不明者が出ないようにしているのかもしれない。瀬戸内海の島々を巡る船も、同じような運用をしていた。
トロッコ列車の乗り心地は悪い。
しっかり揺れるし、がたごとぎいぎいと大変にやかましい。しかも金属が擦れる高い音が坂道のたびに発生する。さらに言うと、ほぼ坂道が続くのが井川線である。
でも楽しい列車である。
大きな窓は基本的に開放。車よりも遅く走るトロッコ列車は、見どころのたびに減速してくれる。車掌さんが丁寧な説明をするのも楽しい。昨今の行楽地にあるウケ狙いのネタを仕込むような案内放送ではないのも素敵だ。いわゆる車掌さんの喋り方で、眼下に広がる絶景を解説してくれる。
大井川を縫うように、数え切れないほどの小さなトンネルをくぐりながらトロッコ列車は標高を稼いでいく。
こんなところに!と驚くような場所に家がある。ダムと渓流と山の緑を眺めながらのんびりと旅をするのは、ずいぶんと贅沢な気分になれる。
カーブが多いせいか、窓から自分の乗っている列車を眺められるのもいい。
トンネルは本当に狭くて、手を伸ばせば壁が触れそう。なるほど、トロッコである。
ただし寒かった。
外界との気温差は10℃以上。大きな窓を閉めたらガラスが傷だらけで風景が見えない、しかも新型コロナ対策で窓の半分はあらかじめ開いている。つまり冷たい風が吹き曝し。しかもこのトロッコ列車は、ヒーターもエアコンも付いていない「箱」なのだ。
持参したスヌードを巻いても寒い。
フリースジャケットをマウンテンパーカーの下に着て、ネルシャツのボタンを全部閉め、ダウンベストも追加して、ようやく落ち着いた。荷物になるからと魔法瓶は車に残して、冷たい麦茶のペットボトルを買ったのが間違いだった。熱い紅茶とコーヒーのことを考えながら、それでも絶景を楽しんだ。
とにかくそうやって、景色を楽しみ、そして震えながら進んでいくと「アプトいちしろ駅」に到着する。
ここでは「アプト式機関車」が接続する。ここからの急斜面は鉄の車輪では滑ってしまうから、線路の間に並べたラック歯車と、アプト式機関車の歯車を噛み合わせて、がりがりと登っていくのだ。それがアプト式。
接続作業はこの駅の名物となっていて、短い待ち時間には写真を撮る人が集まってくる。
このアプト式機関車が働く区間は短い。次の駅では切り離してしまう。ただし乗っていてもわかる急坂。ちょうどダムをぐるりと回るように走るから、どれだけの坂を登っているのかも、よくわかる。
次の駅「長島ダム駅」切り離し作業でしばらく停車した後、トロッコ列車は再び井川を目指す。
僕はここで一旦降りて、長島ダム周辺を散策した。
この井川線は、上り下りともに1時間に1本の列車が来る。
だから途中下車した場合は、時刻表に合わせて動く。バスも少しはあるけれど、他はハイキングコースや林道ばかりなので、トロッコ列車が離島巡りにおける「船」になる。
最終列車(井川発で16時前)を睨みながら、いくつかの駅で降りて歩くのが、井川線の楽しみ方になる。
ここまでが前編。
鉄道マニアでもないのに、トロッコ列車は楽しめた。
寒さには閉口したが、でもこの時はまだ山道を歩いてもいないから、元気いっぱいだった。後編は慣れないハイキングで疲弊する話になります。おやすみなさい。