我が家には仏壇が無かった。
昨年の秋に母が亡くなり、彼女を偲ぶために、小さな仏壇を注文したのだった。
昨日までは、リビングに写真や思い出の品を並べたミニコーナーを作って代用としていたのだった。
なにしろ仏壇が届かない。
量産品の、簡素なミニ仏壇だ。
両開きの扉がついた箱が、なぜ届かない。
天然ガスが足りないのか、半導体が入荷しないのか知らないけれど、届くのは入荷遅延のお詫びメールばかり。
ともあれ、車も仏壇も、注文してから半年以上待つ時代に生きている。
そう考えると途方も無い気分になってくる。
でもとにかく、今日ようやくミニ仏壇が届いたのだった。
今までの”お偲びコーナー”を片付け、ミニ仏壇を設置する。下のキャビネットとの色合わせもばっちりで、なかなか良い出来栄え。LEDランプも仕込まれていて、写真をきれいに照らすこともできる。
ところで我が家では、これを仏壇とは呼ばない。
母が生前に「宗教色は極力減らすように」と言い残していたので。
なので、この箱というかミニ展示スペースは、今後は便宜的に祭壇と呼ばれることになる。
母を偲ぶことが、我が家の中だけで通じる原始宗教と考えれば、これは確かに祭壇だ。
この程度の宗教色ならば、母も許してくれるだろう。
こうして、また1つ、母に関するタスクが終わった。
注文して放ったらかしにしているだけのタスクであっても、片付けばほっとするものだ。実用品でもないし、祭壇(仏壇)が無くても全く不都合は感じない生活をしていても。冠婚葬祭とは、そういうものなのだろう。