仕事を早めに終えてから静岡県の東部へ行く。
少し前に親戚の家で不幸があって、その関係で形見その他を受け取りに行ったのだ。
鍵だけは預かっていたので、誰もいない家から必要なものを車に乗せて、作業はおわり。持ち帰る荷物や書類は玄関に整理されていたし、生活用品の大半は業者によって片付けられていたから、ずいぶんと寂しい風景だった。
富士山がよく見える家だった。今日は雨雲に隠れてしまって、どこが富士山なのかもわからない。
しかし、せっかく東部に来たのだからと、少しだけ山里を散策してみた。
かつて樹海だった場所を切り開いた宅地の、いちばん端。樹種や地形が青木ヶ原樹海によく似ている。しっとりと雨に濡れていて、なかなかに趣があった。
それはそれとして、ようやく金曜日になった。
プレミアム・フライデーについては、自然消滅したのだろうか。
経済的にも関東との結びつきが強い静岡県東部は、新型コロナの緊急事態宣言の影響を(発令されていない静岡県であるにもかかわらず)強く受けている。
いくつか飲食店が集まった雑居ビルには「国よ県よ、どうか休業させてくれ」と窮状が記された立て看板があった。お店を開いて、準・緊急事態の状態で細々と営業しても貯金を食いつぶすだけなのだ。ならば休んだほうが、感染予防にも役立つ。ただし生活の補償がなければ完全休業も難しい。そういった主張だった。
一時期は医療機関の逼迫率が県内最高となった地域だ。そして前述のとおり関東との結びつきが強い土地でもある。静岡県中部よりも危機感が強い。
ちょうど一年前の今頃に、各地で新型コロナの感染者が話題になっていた。
当時の僕は香川県に住んでいた。
静岡に帰ろうか、四国でのんびりと住み続けようかとぼんやり考えていた時期。まだトイレットペーパーの買い占めも、マスクの高騰も無かった。
思えば長い一年だった。まだ続く、想定外の日々。