馬鹿舌というのか…

 

仕事中の雑談で「馬鹿舌」という言葉を知った。
どうやら同僚も、そして自分もこの「馬鹿舌」に該当する。

何を食べても美味しく感じてしまう人間の事、らしい。

いや、それは正確ではない。
僕は苦手な食べ物がそれなりにある。同僚だって不味いと思う食品や料理があるという。では「馬鹿舌」とはどんな存在か。

 

ここで「馬鹿舌ではない」人間を想定するとわかりやすい。
彼らは食べ物を「不味い」と断定する。
もっと具体的にいうと「あの店の料理、くそ不味いぜ!」と確信を持って言える能力があれば「馬鹿舌」とは呼ばれない。

僕は少なくとも、外食の料理にはそれなりの“良いところ”を見出してしまう。「自分の好みからすると塩辛すぎる」とか「油が多くて残してしまった。しかし店のキャラクターからすれば当然の量だろう」といった分析が自動的に行われ、結果として断定的な評価をすることができなくなる。留保する。それが「馬鹿舌」人間だ。

 

これは家庭料理でも同じ。
美味しくない手料理は数多く存在するけれど、その不味さの理由の多くは推測可能なのだ。そうなれば容赦ない断定は不可能となる。
「食べ物を粗末にしてはならない」のようなモラルとはまた別の理由、もっと単純な「食品は食べることができる」という理屈により、その美味しくない料理を口に運ぶことが可能だ。
さらに食べていれば、大抵は何かしらの美味しい要素が見つかるものだ。今まで誰も試したことのない完全オリジナルの試作料理*1でなければ、味わうべき何かは存在する。

稀にどうしようもないケミストリーが発生する事こそあれど、それはもう人知を越えた確率の問題であって、「あいつの料理はゲロまずだ。マジ食えない」と自信を持って言い放つ理由にはならない。

 

つまりは舌の能力ではなくて、性格の問題である。
舌が味を判断している訳ではないのだから当たり前ではあるのだが、ともかく僕は「馬鹿舌」なのだ。

 

特に損をしない類の「馬鹿」ではある。
多くの場合で、この性質は礼儀正しさとして受け取られる。人生が楽しくなる、とまでは言い切れないが*2、今のところ平和に生きている。

 

 

 

この「あの店の料理、ばっかまずい*3」という言葉は、なんとなく「○○が不味くて食べられない」と似ている印象を持っている。
不味いだけで食べられない食品など世の中にあるものか。
子供ならまだわかる。彼らは感情の制御が苦手だ。
しかし、咀嚼と嚥下ができない理由が“好き嫌い”というのは、ちょっと大脳を休ませ過ぎだと考える。
いや、この「食べられない」は「自分はその食べ物がとても嫌いだ」の文学的表現ということは承知している。
しかし何度も「不味くて食べられない」と繰り返すうちに、人は本当に「食べられない、自分にとっては食べ物ではない」と信じるようになってしまうのではないだろうか。世の中を見渡すと、そういう大人はわりと見つかる。

 

 


無理に食べろと言っているのではなくて、あるいは不味いものを美味いと言えと主張しているわけでもなくて「自分はこれが苦手なので食べたくはない」とか「○○という理由で、自分の口に合わなかった」と言葉にしたほうが、より正直なのだと言いたいのだ。

せっかくの料理をわざわざ乱暴な言葉で飾って評価することもあるまい。乱暴なほうが正直だと勘違いしている人が多い時代だからこそ、考えてものを言う習慣を大切にしたい、そんなことをこの「馬鹿舌」という言葉から考えた。

 

 

 

 

 

 

*1:現在の料理体系から外れた前人未踏の創作料理を実現するのは難しい。いつか人が宇宙で料理をする、その時代に期待したい。

*2:物事を強くジャッジする愉しみを手放すことになるし、人によってはつまらない奴と見做すだろう。

*3:ばっか:静岡弁でVeryの意

リル・カンケン ──カンケンのショルダーバッグ化──

3日かけて、幼児用のリュックサック「Kanken mini」をショルダーバッグに改造した。

以下、手順を記す。

 

1. メルカリでKanken miniを購入

今回はプロトタイプということで安価に済ませる。
Kankenは普段使いのかばんであり、かつ擦れることで色落ちも激しいので、値段も下がりやすい。
ただしそれほど数は出ていない。子供用だからか。
メルカリの使用は2回目、今回は極めて事務的な人(業者さん?)だったので実に楽だった。

 

 

 

2. 洗濯(1日目)

Kanken miniは先週中頃に届いた。ここからが実作業となる。
使用状態は想定内。
しかしいわゆる「人ん家の匂い」がするので、ごしごしと洗う。
スニーカーを洗う要領で、ブラシと石鹸を使いこすり洗い。その後に十分にすすぐ。
このKankenシリーズに使われている合成繊維「ビニロン」はとても強い。トラックの幌の布と同じだから、扱いは簡単。
そして乾くのも早い。

 

ストラップの幅を測り(25mm)、ホームセンターと手芸店でアジャスターやナスカンを買っておく。
ここまでが一日目。 

 

 

3. 分解(2日目)

バックストラップを切断する。
できるだけ長く欲しい。肩の側はぎりぎりに切り、下側はアジャスターパーツをニッパーで破壊した。

これで、2本の長いナイロンベルトを切り出すことができる。

 

4 再構成

ベルトから100mmほど切り出し、D環を入れたまま2つに折ってストラップ接続部とする。これを2つ作る。

購入しておいたアジャスターやナスカンを組み合わせ、ショルダーストラップを作る。元から付いていたベルトを止めるための部分を上手く活用してみた。調整用に環になっているベルトを束ねる仕様。

 ストラップ接続部はかばん本体、左右側面に接着する。

 

コニシ ボンド 裁ほう上手 45g #05371

コニシ ボンド 裁ほう上手 45g #05371

 

 今回は、ストラップを作るのも、本体へ付けるのも、ぜんぶ「裁ほう上手」を使用している。
この接着剤は本当に便利。
匂いが少ないから室内作業でも大丈夫で、強度も十分。
ビニロンもナイロンもしっかりくっつく。

 

 

裁ほう上手 スティック #05747

裁ほう上手 スティック #05747

 

 最近、スティック糊みたいなタイプも発売された。これは裾上げや補修があっという間にできるので、1本持っておくといい。

 

接着部位(ベルトの端3箇所、ストラップ接続部と本体側面)はそれぞれクリップや洗濯バサミで動かないようにしておく。
強力な接着剤だが、粘着力が生じるまで時間がかかり、加えて紐状のものを取り付けるので無理な力がかかりやすい。
固定作業こそ、この工作のコツといえるかもしれない。
しかしこれでは布かばんを作る工程には見えない。

ここまでで、2日目が終了となる。

 

 

 

5 穴あけと固定

接着だけで強度的には十分かもしれない。
少なくとも引張強度は完璧に近い。
とはいえ、剥がす方向にゆっくり力をかけると、じわっと接着剤が伸びてくる。
完全乾燥すれば大丈夫かもしれないけれど、なんとなく心配なので「カシメ」でも固定する。
縫製しない場合は、2種類以上の固定方法を併用すると安心。
特にかばんは力がかかる部位に手を抜けない。出かけた先で壊れるのは悲劇だ。

 

とはいえ、頑丈なナイロンベルトと布を貫いて穴を開けるのは容易ではない。というわけで電動ドリルで開口する。ますます裁縫趣味からは外れてくる。

 

穴を通したカシメをしっかり締める。これはレザークラフトの道具でできる。
手芸店にも道具はあるし、100円ショップにだって売っている。
金具の色味さえ合わせておけば、素人仕事とは気づかれないだろう。

Clover カシメ両面 中 15組入り アンティックゴールド 26-333

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6 仕上げ

色落ちが極端で不自然なので、全体的に整える。
いや、普通に使っていた色落ちだから自然なのだけれど、白っぽいところが目立ちすぎるように感じるのだ。

目の細かい紙やすりと、軽石(がなかったので珪藻土コースター)で濃い色の部分をこすり色落ちさせる。

ほつれている糸や、ベルト切断面を加熱して溶かす。
ごく少量のシリコンオイルをファスナーの摺動部分に塗る。
最後に全体を濡れた布で拭いて、乾いたら完成。

 

 

 

 

驚きの吸水速乾! マルチに使える珪藻土マット BOOK (バラエティ)

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評価

使い勝手は上々。
スクエアなかたちで収納力が大きい。7Lの四角いかばんは、散歩用にちょうどいいサイズ。
デイパック時のまま背中部分のパッドを残した結果、四角い形が保てることも使いやすさにつながっている。
ただしショルダーバッグとしては、「ぱっと開けてさっと取り出す」つくりになっていない点は少し不満。
それと、深さがそこそこあるため、バッグインバッグは必須だろう。
暇があれば内側にポケットを増設したいところ。

手持ち用のハンドルはデザイン上の特徴ではあるが、頻繁な開閉を考えると1本は外してもいいかもしれない。
通常サイズのKankenと違ってサイドポケットもフロントポケットも小さく、水筒や傘の入れ場所は一考を要する。
リュックサック時代のホックやループが残っているから、これらを利用して追加のベルト(外部固定用)を増設しても面白いかもしれない。


そういえば、ベルトに残ったホックを活用すれば、ワンショルダー風にも使える。これは想定外の仕様だったが、例えば椅子の背にかけておく時に一時的にコンパクトにできる点は便利だろう。

 

名前はリル・カンケン。
出鱈目スウェーデン語で「ちいさなカンケン」という意味。いま思いついた。

次に作る時はもう少し小奇麗に仕上げたい*1。というか、これは練習で、知人から2つ受注したのだった。

 

 ともあれこうして、空いた時間を活用してひとつの試作品を作ってしまった。縫製作業を避ける一心で工夫した結果としては、なかなか良いと自己評価している。

 

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

 

 

お題「キャンプ」

お題「今日の出来事」

お題「ひとりの時間の過ごし方」

*1:色と擦れ具合から、ミリタリー風味が強く出てしまった。実際は青っぽい謎のオリーブドラブで、なんとも形容しがたい雰囲気。

ざわつきの月曜日

今年ほど空と気候について考えた夏があっただろうか。
今日もまた、にわか雨と明日の台風接近とで、なんとなく慌ただしかった。

 

 

 

ところで今日のお昼ごはんはトンカツだった。
「とても美味しいです。是非どうぞ」とクーポン券をいただいた、訪問先からすぐ近くのトンカツ屋さん。昼からトンカツとは縁起がいい。

1人で行ったのでカウンターで食べる。
注文して10分と待たずに「トンカツ・豚汁定食」が届く(昼はこの1品のみ。ごはんの大小は選べる)。
ずいぶん早いな、とは思ったが、なにしろ1種類しかメニューが無いわけで、準備を止めなければそういう事もあるだろう、と納得して箸をつけた。
かつてファストフード店で「とりあえず作る」オペレーションが当たり前だった時代があった。ハンバーガーを“見込み”で作り、一定時間が経てば廃棄していた。思えばとんでもない話だが、客が絶えない店なら今でも可能だろう。

 

新装版 パン屋再襲撃 (文春文庫)

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パン屋再襲撃 (HARUKI MURAKAMI 9 STORIES)

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しかしこの「トンカツ・豚汁定食」は、本来は僕のものではなかったのだ。僕より早く席についた3つ隣のお客さんに届くはずの「トンカツ・豚汁定食」だった。
食べはじめてからその3つ隣のお客さん(ちょうど角のところで顔が見える、気が短そうなおっさん)の視線に気がつき、そして伝票の「席番号」で間違いに気付いた。自分の席番号は不明だが、伝票に記された数字(No.4)を満たす位置では無いことはその位置から確実にわかる。おそらくNo.4はこちらを見ているおっさんの席である。
しかしもう食べ始めてしまったことだし、おっさんに伝票の番号は見えないので、黙っていれば大丈夫だろうととりあえず食べ進めることにした。

が、この後に続く「トンカツ・豚汁定食」がなかなか完成しない。厨房が昼休みに入ったかのごとく、定食の提供が滞る。

そして唐突に、僕が怒られた。
「どうしてあんたが先なんだよ。ちょっと考えればわかるでしょうに。おれ、待ってるんだよ」と、わざわざ席越しに言い始めた。

こういう時には「ぼくわからない」という顔をするしかない。
唯一の証拠は伝票だが、これはさりげなく裏返しておいた。

おっさんは怒り心頭で僕に何か言い続けていたが、僕としては「何だろう?誰に何を話しかけているのだろうか?それにしても美味しいトンカツだなあ」という“95%無視の顔”をし続けるのみ。

食後のお茶を飲んでいる頃に、ようやくNo.4おっさんの元に「トンカツ・豚汁定食」が到着し、そして店員が怒られていた。

僕でもわかったのだから、店員(3名いた)はこの取り違えにすぐに気付いたのだろう。お金を払う時になって、小さな声で「巻き込んでしまって申し訳ない」という意味の謝罪をされた。

 

 

思い出すと、なんだか心がざわつく。
僕に言っても仕方がないではないか。
食事中の人間に怒るのならば、店員を呼べばいい。南部鉄器風のベルをちりんと鳴らせば店員はやって来るのだから。

 

今日の出来事といったら、このトンカツ屋の事件くらいか。
仕事は順調。
順調というか、店じまいに向けて中長期的な計画が軒並みペンディングになっているので、日常業務を淡淡と進めるのみ。
引き継ぎ書類を作るにも先の人員や業務計画が未定なため、手のつけようが無い。
そして、引き継ぎ書類というのは、引き継ぎ先が主導して作るべきだと僕は考えている。
これは持論ではあるが、昔の上司の言葉もある。「辞める人間にマニュアルを作らせるな」と。

逆に、教育資料は教育担当者が作る。
「素人にノートを書かせただけで済む教育なんて無い。それはOJTの名を借りた怠慢だ」とかの上司はいつも言っていた。専門家は誰か考えれば、それは自明だろう。

引き継ぎは逆で、どんなに分厚いマニュアルを用意しても、これから主役の人間が“何をしたいのか”を明確にしなければ必ず洩れが生じる。データを大量に保存できる今の時代ならなおさらのこと。

でもまあ、辞める人間がこういう事を言うと角が立つ。
文句を言う人は決まって責任論を唱える。しかし今までの経験上、「マニュアルに全部残せ。それを読めば仕事ができるようにしてから辞めろ」と騒ぐ人は、ごく当たり前の(皆ができる)仕事ができない。引き継ぎ先の人達はそれなりの能力や経験を見込まれているので、そこまで騒がない。「ふむふむ、ではこの点は…」と質問が具体的なのだ。

そういえば辞める人間にこうして「全部残せ」と騒ぐ人は、同時に教育担当者である時には碌な資料を作れない人でもある。これも経験上の話だが、根の部分で繋がっていると思う。

 

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

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ペンギン・ハイウェイ (角川つばさ文庫)

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ミラベルのサヴァランはひと味違う

藤枝市に「ミラベル」という洋菓子店がある。
見た目以上に老舗で、たぶん40年くらいは続いている。
名物のチョコレートケーキも美味しいけれど、僕はこの店のサヴァランが好物で、チャンスがあれば買うことにしている。

 

お酒は苦手なのにサヴァランやババは好きだ。
そもそもブリオッシュ生地のパンやお菓子はそれほど好きではない。
そして一般に、びしゃびしゃした甘いものは好まないのに、このラム酒あるいはキルシュが染みこんだ何種類かのスイーツは大好物。我ながら不思議。

 

静岡 とってもおいしいケーキ屋さん

静岡 とってもおいしいケーキ屋さん

 

 

この店のそれは、サヴァランに見えない見た目をしている。
少なくとも他の店のサヴァランとはまるで違う。
しいて言えばサヴァラン・シャンティイが近いだろうか。
何しろ丸い器に入っている。
絞り出したクリームの真ん中にキャラメル風のとろっとした何かが見えて、洋酒の香りが漂ってくる。

今日ももちろん美味しかった。
しかし、食べにくいお菓子ではある。
正確には、食べるのは容易いのだが、いつもシロップが容器の1割以上残ってしまう。

球の上面を切り取ったような器にスポンジ状の物体が入っていて、そこに液体がたっぷり染みこんでいるのだ。どうしたってスポンジを取り出す際に液が絞られてしまう。どんなに注意深くオペレーションを進めても、90%の回収率を上回ることがない。

それを見越して十二分な量の液が投入されている事はわかる。
頭では理解できる。しかし脳が納得しても魂は受け入れない。もっと上手くできるのではないか、未だ到達しない“先”がある筈だ、とエゴがその手を伸ばす。

100%以上の満足を得ながら、いつもシロップが残った容器をしげしげと眺めてしまう。これは業だな、と小さな声でつぶやくが、幸いにもこの店のイートイン・スペースは空いている。
ケーキ食べ放題の日は混雑するらしいが*1、僕はまだ自分以外のイートイン客を見たことがない。お客さんは絶えないが、自分用ではなく手土産として買う人ばかりだ。

 

 

美味礼讃 (上) (岩波文庫 赤 524-1)

美味礼讃 (上) (岩波文庫 赤 524-1)

 
美味礼讃 下 (岩波文庫 赤 524-2)

美味礼讃 下 (岩波文庫 赤 524-2)

 

 

 

ともあれ素敵なお店とお菓子です。
カーナビがあれば行くのは簡単。シュークリームは実家の定番でした。桃を1個まるごと使ったタルトも素敵です。おすすめ。

goo.gl

*1:2300円。店内のケーキが全て食べ放題となる。通常サイズの提供となるため、それなりの覚悟が要るだろう。全種類を選択可能というのは街の洋菓子屋さんでは珍しい。

冷たいラーメン

昨日と今日、同じ店でラーメンを食べた。

 

昨日は仕事で通りかかり、ちょうど昼時だったので入った。
普通の温かいラーメン。
麺がつるつるで茹で加減が絶妙、つまりコシが抜群(パスタでいうアルデンテ?)なのが印象的。
構成こそ昔風の「中華そば」だが、全体的にアップデートした感がある、とても品の良いラーメンだった。
脂と旨味と濃い味で勝負する今時のラーメンよりよほど好ましい。

 

店の名は「らーめん まごころ」。
小さな目立たないお店で、普段ほとんど通らない道だから、ある種の幸運だったといえる。
すぐ近くに田中城跡があって、カーブの多い不思議な地域の、あまり繁華とはいえない場所に黄色い看板だけが目立っていた。

 


 

 

 

気になったのが「冷たいラーメン」の存在。
そういえばお店のある藤枝市は、最近この冷たいラーメンをB級グルメとして押し出しているのだった。

藤枝市には朝から開いているラーメン屋が昔から存在する。
朝が早い、茶の流通問屋相手の商売だったと聞いたことがある。同様の事情で市場のある街には朝に開いているラーメン屋は多い。


藤枝の場合、さっぱりした醤油ラーメンが基本で、「温かいの」と「冷たいの」がある。つまり、冷たいスープのラーメンが存在する。

多くのB級グルメがそうであるように、この「朝ラーメン:温or冷」もまた、1つの人気店がまずあり、周辺の店も真似をして、そして細々とある狭い地域で(愛されもせず流行りもせず)続いていたものを、街興し的な流れでピックアップされた“郷土の味”である。
自分が若い頃は、パチンコ趣味のおっさん達や、夜勤明けの人達が「朝ラーメン」の元祖のお店を支えていたように思える。だから存在は知っていても、誰もが喫食する品ではなかった。
最近はあちこちの店で、朝はともかく冷たいラーメンを出すようになった。ラーメンを大盛りで食べることができる人達の場合、「温かいのと冷たいの、両方」と注文することも多い。

 

 

チェーン店B級グルメメニュー別ガチンコ食べ比べ

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日本全国 ソウルフードを食べにいく (文春e-book)

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今日もまた偶然に、この店の近くを通りかかった。ちょうど昼ごはんを食べる時刻だった。
あまり同じ店に連続ではいかないのだけれど、せっかくだからと「冷たいラーメン」を食べてみることにした。今日を逃したら、冷たいラーメンなんてつぎに食べる機会はいつになるかわからないし、この店の麺が本当に美味しかったので。

 

ガラスの器に入ったラーメンは、脂がほとんどなくさっぱりしている。前述の、つるつるの麺が実に合う。
魚の出汁と甘めの味付け、少ない具材に薬味の山葵。
この山葵がとても嬉しいアクセントになる。
一般的な(外食の)ラーメンに慣れている人にはこぢんまりした量に思えるかもしれない。でも大丈夫、コシのある麺は後から十分な満腹感を生じます。
さらっと食べてさっと店を出る、そういう食べ物なのだと思う。


普段からラーメンと炒飯など組み合わせている、量を食べられる人ならば、やはり「温かいのと冷たいの、両方」を頼むべきだろう。隣の席の人達がそういう頼み方をしていて、実に美味しそうだった。
僕には無理だ。

 

 

その先には何が!?じわじわ気になる(ほぼ)100字の小説

その先には何が!?じわじわ気になる(ほぼ)100字の小説

 

 

 

今日は他にも色々と頑張った。
かばんを作った。
甥姪が遊びに来てくれた。
今後の引っ越しに向けて少しずつだが私物整理も進めた。

明日は雨。
家事に邁進したい所存です。だからもう寝る。

 

 

魚肉ソーセージの夜

自分が子供だった頃、魚肉ソーセージという食べ物は「まがい物」に近い扱いだったと思う。本物のソーセージとは別の、子供向けや安い肴としての食べ物。「この嘘っぽさが逆に良いよね」みたいな話は、作家や芸能人のある種ひねくれた(あるいは洒落た)物言いだったと思う。

最近はかなり普通の食材になっている。
いわゆる“丁寧な暮らし”の料理研究家*1までもレシピに採り入れていてびっくりした。
あなた方は自作する側ではないのか?と問いたい。
能登半島の寒村で老漁師から“本物の鱈”を手に入れて、ドイツ製のソーセージマシンとフィンランドのビニールフィルムを用意して、庭のハーブを利かせて作ってこそ地に足のついた生活といえる。つなぎには米粉を使おう。

 

ハンディ版 知っておいしい 肉事典

ハンディ版 知っておいしい 肉事典

 

 

 

僕は雑な生活をしているので、セブンイレブンで買って食べる。
自分で魚肉ソーセージを購入したのは人生でまだ一桁だろう。
前に買ったのがいつだったのか忘れてしまった。

 

 

日本経済は好況と政府は言うが、魚肉ソーセージは国産加工食品としては安すぎないだろうか。3本で180円だった。

今回の購入は8割の気まぐれと2割の気晴らし。
今週も色々あった。
せっかくだから普段とは違うものを買おうではないか、そして夜に食べちゃおうではないか、と帰宅時に思いついたのだ。

 

味については特筆すべき点は無い。
たぶん昔に比べたら格段に美味しくなっている。フィルムも切り取りやすくなっている。でも想定内の美味しさで、そして魚肉ソーセージ味だった。

 


このフォント使いが実にSFっぽくて良い。
アジア言語を適当に放り込むと未来SFは「らしさ」が増す。かたちと色も未来食だ。ここには政府スローガンを追加すると良いだろう。

 

 

お題「今日の出来事」

 

*1:実際はもっと小洒落た肩書きだった。ナントカクリエイターとかアドバイザー。

そうなのか・かなへび

ずいぶん前に読んだ村上春樹のエッセイか何かで、人語を発する猫についての文章があった。縁側かどこかでぼんやりとしていたら、明瞭な日本語で猫が何か喋った、というもの。喋った内容についてしっかり書いてあったのに、覚えていない。

 

村上さんのところ コンプリート版

村上さんのところ コンプリート版

 

 

今日、同僚が似た話をしてくれた。
1歳になる娘が、しっかりした発音で「そうなのか」と言ったそうだ。いつも「ぱー」とか「とうとう」しか言わないのに、その時は子供としては妙にはっきりした声で「そうなのか」と。

なかなか面白い現象だと思う。
寝起きの聞き間違いと見做すのはつまらない。

僕も子供の頃に似た経験をした。
カナヘビを飼っていた時に、餌の鶏ササミを与えたところ、「にがい」と声が聞こえたのだ。カナヘビ自体は隠れ家用の植木鉢に入って見えなかったが、しっかりとプラスチックケースの中から聞こえた。

ササミは苦いのか?と餌用のピンセットを舐めたような記憶がある。
それから「カガク的に、そういう事はあるのか」と担任の先生に聞いたことも覚えている。
担任は「トカゲの喉のつくり、身体のサイズからして無理だろう」と教えてくれた。
その頃、僕は担任の影響で理科が大好になっていて*1、放課後にはよく理科準備室で先生の手伝いをしていた。「みんなには内緒だよ」と、試験管の水素にぽんと火をつける実験や、翌日の授業のリハーサルを見せてくれたこともある。小児喘息持ちで何かと手がかかる子供だったから特別扱いをしてくれたのかもしれないし、わざわざ準備室に来る子供達にはそれぞれサービスをしていたのかもしれない。大勢で先生のところに行くことは無いのだが、自分以外の同級生も頻繁に訪れる、今思えば不思議な準備室だった。

「トカゲ(カナヘビ)は喋らないが、喋る動物の本は面白い」と図書室に行くことを勧められて、実際に素敵なファンタジー小説に出会った、そんなぼんやりとした記憶もあるのだけれど、その小説をまるで思い出せない。
ただ、図鑑やノンフィクション、物語といってもシートン動物記程度の偏った興味から、興味の幅が拡がったことは確かだ。
あの曖昧な「喋る動物の本は面白い」という言葉がひとつの魔法だったのだと思う。学校の図書室は好きで毎日のように訪れていたけれど、「自分の学年(能力)で読める興味のある本はほぼ読み尽くした」と考えていたから、その「読みたい本が拡がった」感覚は、きっと当時の自分にも強い印象を与えたのだと、今ならわかる。
先生、たいしたものである。 

生きもの つかまえたら どうする?

生きもの つかまえたら どうする?

 

 しかしなぜ「にがい」なのか。
ハエやバッタならともかく、自分としては鶏ササミは「ごちそう」だと考えていたのに。「自然界ではこういうものは食べられないだろう」と、おもてなしの気持ちで接していた。

こうして書いてみるとよくわかるのだけれど、記憶の解像度にムラがありすぎる。どんな気分でカナヘビを飼っていたのか、何に気を遣っていたのかはいくらでも脳から出力できるのに、同級生の名前や本の題名はさっぱり思い出せない。まあ、今だって人の名前や映画のタイトル、もちろん本の題名をすぐに忘れてしまうのだから、「そういうもの」なのかもしれないが。

 

うまれたよ! カナヘビ (よみきかせ いきものしゃしんえほん 20)

うまれたよ! カナヘビ (よみきかせ いきものしゃしんえほん 20)

 

 

 

 

 

 

 

*1:若くて、理科の授業について研究会的なものを進めていて、常に工夫をしている先生だった。

肉食の日でした

前の仕事で知り合った、年若き友人と食事に行く。
僕の誕生日祝いも兼ねた食事ということで、自分が普段ほとんど行かないところにしよう、それじゃあファミレスの「ガスト」がいいなあ、とガストを目指す。
ガスト、大学生の頃は本当にお世話になった。フライドポテトと雑談とハーブティー(あるいはコーヒー)を楽しむためのお店だった。

歳を重ねる毎に足が遠のき、今は完全に「アウェイ」な店である。読書や仕事といった、どんな店でもかまわない使途でも、なんとなくガストは選べない。

 

 

結局、道路事情などにより、ガストではなくて「ステーキ・ガスト」へ行くことに。

ファミレスとしては早い時刻(18:20)だからか、客は僕達1組だけだった。店員のほうが多いし、彼らの雑談のほうが賑やか。
注文した肉が焼ける音さえ聞こえる。

この店はサラダ・バーがあって、ステーキやハンバーグを注文すれば食べ放題となる。自分としては、肉よりサラダが嬉しい。パンやカレーも食べ放題なのだが、専ら野菜と海藻と豆を食べていた。

別に遠慮してガスト(ではなくて、ステーキ・ガスト)を指定したわけではなくて、「自分ひとりではたぶん面白くもないけれど、この人となら楽しめる」選択をしたつもりだ。
実際に楽しかった。
上手く説明できない類の楽しさだった。
飲めない人が老舗居酒屋に連れていってもらう楽しさが近いか。
そこまで大袈裟ではないにしろ、肉が好きな若い人と行くステーキ専門ファミリーレストランは、不思議な満足感がある。

 

ちなみに自分達が肉を切り始めた頃に、ちゃんとお客さんは入ってきた。なんとなくほっとして、心安らかに肉を食べました。

 

 

 

そいねドリーマー (早川書房)

そいねドリーマー (早川書房)

 

 

肉の本 今夜は、お肉を食べよう。

肉の本 今夜は、お肉を食べよう。

 

 

いもカレー夏カレー

いま家には食べなければならないレトルトカレーが山ほどある。
防災用食料としての期限が切れた品だ。
前に一度食べた時、具材の少なさに驚いた。昭和時代に戻ったみたいなカレーだった。先月に補充した防災用食料は通常市販されているカレーと同等の味や量で、しかも賞味期限が長い。この数年で技術革新があったのか、単に安い防災セットを買ったからなのか、あるいは「災害の時にも良いものを食べたいよね」という世の中に変わってきているのか。

 

 

ともかくこの大昔のボンカレーゴールドみたいなカレーを食べなければならない。家族は留守(東京で土偶を見るそうです)。

仕事でなんとなく疲れてしまって、今日は料理を作る気がしない。
帰りに寄ったスーパーマーケットで冷凍食品半額セールをやっていたので、皮付きのジャガイモ(本来は素揚げしてフライドポテトにする。加熱済み冷凍品)を買ってみた。

フライパンにレトルトカレーを流し入れ、この皮付きジャガイモをどかどかと放り込む。ズッキーニ(冷蔵庫)とナス(庭)も入れてしまう。全体にカレーまみれの野菜ができあがる。最初は水気が減って炒め物みたいだったが、野菜に火が通ると再びカレーに戻るから不思議だ。

適当なスパイスで辛味を足して完成。
ジャガイモを炭水化物源として、主食は無し。
雑な食べ物だなあ、と思いながらもそもそと食べ進む。

トマトとズッキーニのサラダも作った。
カレーには目玉焼きも乗せた。

 

栄養的には一応は合格点が貰えると思う。
ただしこれ、他人に振る舞うわけにはいかない感じがする。料理が上手な人ならば、味付けと盛り付けにそれぞれひと手間を加えそう。
でも大丈夫、自分で作って自分で食べる。
庭の野菜も消費できたし、買物は最小限で済んで、そして賞味期限切れのカレーも減らせた。冷凍イモはまだたくさん残っている。

 

 

 

 

冷凍イモといえば「火星の人」。今は「オデッセイ」のほうが通りがいいのか。

火星の人

火星の人

 

 

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