藤枝市に「ミラベル」という洋菓子店がある。
見た目以上に老舗で、たぶん40年くらいは続いている。
名物のチョコレートケーキも美味しいけれど、僕はこの店のサヴァランが好物で、チャンスがあれば買うことにしている。
お酒は苦手なのにサヴァランやババは好きだ。
そもそもブリオッシュ生地のパンやお菓子はそれほど好きではない。
そして一般に、びしゃびしゃした甘いものは好まないのに、このラム酒あるいはキルシュが染みこんだ何種類かのスイーツは大好物。我ながら不思議。
この店のそれは、サヴァランに見えない見た目をしている。
少なくとも他の店のサヴァランとはまるで違う。
しいて言えばサヴァラン・シャンティイが近いだろうか。
何しろ丸い器に入っている。
絞り出したクリームの真ん中にキャラメル風のとろっとした何かが見えて、洋酒の香りが漂ってくる。
今日ももちろん美味しかった。
しかし、食べにくいお菓子ではある。
正確には、食べるのは容易いのだが、いつもシロップが容器の1割以上残ってしまう。
球の上面を切り取ったような器にスポンジ状の物体が入っていて、そこに液体がたっぷり染みこんでいるのだ。どうしたってスポンジを取り出す際に液が絞られてしまう。どんなに注意深くオペレーションを進めても、90%の回収率を上回ることがない。
それを見越して十二分な量の液が投入されている事はわかる。
頭では理解できる。しかし脳が納得しても魂は受け入れない。もっと上手くできるのではないか、未だ到達しない“先”がある筈だ、とエゴがその手を伸ばす。
100%以上の満足を得ながら、いつもシロップが残った容器をしげしげと眺めてしまう。これは業だな、と小さな声でつぶやくが、幸いにもこの店のイートイン・スペースは空いている。
ケーキ食べ放題の日は混雑するらしいが*1、僕はまだ自分以外のイートイン客を見たことがない。お客さんは絶えないが、自分用ではなく手土産として買う人ばかりだ。
- 作者: ブリア=サバラン,関根秀雄,戸部松実
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1967/08/16
- メディア: 文庫
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ともあれ素敵なお店とお菓子です。
カーナビがあれば行くのは簡単。シュークリームは実家の定番でした。桃を1個まるごと使ったタルトも素敵です。おすすめ。
*1:2300円。店内のケーキが全て食べ放題となる。通常サイズの提供となるため、それなりの覚悟が要るだろう。全種類を選択可能というのは街の洋菓子屋さんでは珍しい。