沼津市芹沢光治良記念館

今日もまた所用により沼津市へ行っていた。
伊豆半島の付け根のあたり、沼津港よりいくぶん南に下ったあたりだ。

先日も行った牛伏山や御用邸記念公園がある。
特に観光地として整備されているわけではないけれど、落ち着いていて散策するには良いところ。仕事でなければ素通りしている場所だった。

 

牛伏山の海岸は公園になっていて、小さな洞穴もある。ここは潮が満ちると海中に没するらしい。このあたりは地形が複雑で、いわゆる伊豆半島のジオスポットが点在しているのだ。

この洞穴は「おばんのふところ」と呼ばれている。「姥の洞」あるいは「姥の懐」という字だったようだ。
名前の印象とは別に、西伊豆も富士山も見渡せる、明るくて良い海岸だった。

この海岸と洞穴の近くに、小さな博物館がある。

沼津に住んだ小説家「芹沢光治良」氏の記念館だ。

小さく古びているが、凝ったかたちのコンクリート建築は、外観だけでも見応えがある。かつて沼津の経済が元気だった頃に、地元のスルガ銀行が文化事業として手掛けたのだろう。

1階がメインの展示スペースとなっていて、小説家の生い立ちや代表作、それに書簡などが並んでいる。
今は沼津市ゆかりの作家の特別展も行われていた。

大きな公民館のロビーくらいのスペースに常設展と特別展が行われているので、全体にぎっしりと詰まった印象。

僕は芹沢光治良氏の作品を1冊しか読んだことがなく、それほど強い印象も思い入れもない。だから、この狭いスペースに詰め込まれた展示は、かえって見やすいのだった。

沼津という土地は戦前に景勝地・保養地として文化人から政治家まで多くの人が滞在していたので、「沼津ゆかりの〜」と言い出すと、おそろしく長いリストが出来上がる。市町村合併西伊豆側のいくつかの町が繋がった今は、静岡県でも随一の「文人だらけの市」ではないだろうか。このジャンルで沼津に勝てるのは、熱海くらいしか思いつかない。

というわけで、川端康成太宰治、それから文人っぽくないけれど鈴木英治氏についてのパネルもあった。若い現役作家としては、宇佐見りん氏も紹介されている。

 

1階から上は、螺旋階段を登っていく。
ここはなかなか格好良いつくりで、無駄が多いデザインが贅沢。ふた昔前は、地方の小さな博物館や美術館でも、こういった凝ったつくりをしていたのだ。今では考えられない。

 

階段を登りきると、小さな部屋に出る。
イベントに使うのだろうか、がらんとした部屋だ。小学校の教室よりも狭い部屋で、四隅にスタッフ用の小部屋があるだけ。

 

そこから屋上に出ると、展望台となっている。
防風林などに囲まれ、さほど視界が開けているわけではないけれど、伊豆半島はしっかり見ることができる。

こう言っては悪いが、マイナーな公立の記念館だ。
昔はともかく、今の時代に芹沢光治良氏のファンも少ないだろう。僕が訪れた時は、他に来館者はいなかった。

正直なところ、100円の料金を徴収・管理する手間を考えたら、完全無料にしても良いのではないかと思えてくる。充実した展示とは裏腹に、人気というか需要が少ない。

maps.app.goo.gl

でも、僕はこの場所が大好きになった。
ひっそりと落ち着いていて、狭くて、情報が多い。
完全に「年寄りの趣味」じみているけれど、見つけて良かった場所だ。

駐車場もあるけれど、牛伏山公園に車を停めて歩くこともできる。
近くには先日訪れた「アルゴンキン館」もある。

 

 

次はサイクリングで訪れようと思っている。自転車ならば、駅から港、そしてこの牛伏山周辺を経て「あわしま」や三津まで行くことができるだろう。

良い夕方を過ごすことができて、今日は大満足だった。

 

お題「気分転換」

t_ka:diaryは、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。