映画『窓ぎわのトットちゃん』

今年最初の映画は、『窓際のトットちゃん』。
黒柳徹子さん原作の小説を元にした長編アニメ映画だ。
黒柳さんが出資もしているのだという。人生の晩年に、ついに映像化を許しただけでなく、自身が金と口を出すことにしたのだ。
それだけ本気で関わっているのだろう。

自分は小説「窓際のトットちゃん」を、きちんと読んでいない。
親の本棚にあったような気もするし、子供の頃に図書館で手に取った記憶もある。でも、なんだかぴんとこなくて、放りだしてしまった。

その後、国語のテストでの長文問題など、個々のエピソードを細切れ状態で知って、概ねどんな物語かは把握していた。ベストセラーのなかには、そういう本もある。

 

原作に対してはその程度の興味だったから、この映画も最初は見るつもりは無かった。
それに、予告編などで見るキャラクターデザインも好みではなかった。登場人物の全員が化粧をしているような顔で、動きも言葉も大げさに見えた。
長編アニメーション映画は好きだが、自分の見る映画ではないと思っていた。

 

でもSNSでは、おそろしく評判が良い。
特にアニメに詳しそうな人達からは激賞の声ばかり。
なので、代休だった今日に、見に行くことにしたのだ。


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確かに、とんでもない映画だった。
今の時代だからこそ…と思える時代性や、今のアニメ技術だからこそ可能な表現もある。そして、主人公のトットちゃん(幼少時の黒柳徹子さん)の純真さもずるさも、変わっていく社会も人も、全部がわかりやすく伝わってくる。

同行した知人は「ジブリじゃなくて良かった」と言っていた。
確かに、絵柄や作風からスタジオジブリが中心になっても良さそうな作品だが、これは宮崎駿氏には作れない。
完全な原作リスペクトが成せた成果だったと思う。


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劇中に3回の、雰囲気がまるで違うシーンが登場する。
それぞれ主人公の夢や想像のシーンで、使われている画材から違う感じ。実際に3シーンだけ、スタッフやスタジオを別にしているようだ。
その3シーンだけでも圧倒された。こんな表現ができるのか、と思った。

特に動物園のシーン(イメージシーンとして動画が公開されている)は、声が出そうなくらいに驚いた。

 

 


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どんな話か、どういう作品だったのかを、ここで細かくは書かない。
今は思い出すだけで、目の奥に涙を感じてしまう。泣くことはないのだが、泣く前のような感覚が何度でも起こるのだ。
すごい映画だった。
どんどん上映回数が減っているけれど、あと1回は劇場で見ておきたい。

 

 

作品とは直接の関係は無いのだが、今日は近くの席に年配の女性達が座っていた。
黒柳徹子さんよりは、いくぶん若い。彼女達は上映中でも普通に話をしている。
普段なら嫌なものだが、彼女達の感嘆や涙や小さな疑問や解説が、なんとも絶妙なライブ感を演出していたのだった。
老いた彼女達にとっては、兄や姉の子供時代を見ているようなものだろう。あるいは、ほぼ同時代だったのかもしれない。そういう当事者性が、聞こえてくる言葉の端々からは感じられたのだった。

 

 

お題「わたしの宝物」

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