ラジオ・ラーメン・ラジオ

 

 

訪問先の街で昼食の時間となった。
今日はお弁当の用意ができなかったので、外食で済ませたのだ。入ったのは、目についた小さなラーメン屋さん。
外見は普通のラーメン専門店だが、入口から貼り紙が多い。
苦労して開店した、ラーメンからこの大好きな田舎町を、そして世界を変える、そんなことが書いてある。もちろんラーメン屋なので、筆のなぐり書き(っぽいフォント)である。実際はもっと長い文章なのだが、読んでいて感心するような事は全く無いのだった。ちなみにラーメン屋と書いているが「らぁ〜めん屋」を自称していた。

ラーメンは普通においしかった。
よくある「こだわりのラーメン屋」らしく、塩気と脂っぽさが強い。

 

 

しかし僕はこの店のラーメンよりも、店内の雰囲気が印象に残っている。

先に書いたように、貼り紙が妙に多い*1
椅子は10人分に対し、貼り紙はその倍以上ある。

さらに店員への指示や心構えの紙も目立つ。10人分の椅子しか無い店だから店員が多いわけでもないのに、あちこちに貼ってある。客席側に置かれた家庭用冷蔵庫にさえ、食器の置き方などの図が貼られている。

困ったのがラジオ。
僕の座った席の左側と正面のそれぞれから、別々のラジオ局の放送が聞こえてくる。
片方はありふれた地元のAM放送。リスナーからの投稿を読み上げ、年末の風物を語る。
もう片方はプレゼンの極意やスティーブ・ジョブズの素晴らしさを延々と語っていた。内容からしポッドキャストかもしれない。

狭い店内で2種類のラジオ番組を同時に聞くというのは、なかなかに辛いものだ。想像以上に精神が消耗する。悪夢的と言ってもいい。
なんでこんな環境でラーメンを食べなければいけないのだ…と繰り返し考えさせられる。他の事を考える余裕が無いまま、最後に水を飲み、店を後にした。

 

後になって(精神の安定を取り戻してから)考えると、あの店の問題は「客を見ていないこと」だった。客の立場になれば、2種類のラジオを同時に聞かせるなんて馬鹿なことはしないはずだ。
貼り紙の量や場所もそうだ。
あれほど情報に溢れていても、食券機の周囲にわかりやすい商品説明が無いのも気になる。
飲食店としては致命的な独りよがり具合だった。
得難い経験ではあったが、再訪はしないだろう。

 

お題「ささやかな幸せ」

*1:テプラ・ラベルライターでの注意書きも多い。

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