夕方、買い物に出かけた先で知人と会った。
顔を合わせるのは11年ぶり。年賀状などで交わしていた交流も5年前には途絶えていた。
別に仲が悪いわけでもないのだが、積極的に会う理由も無い。
そもそも生活圏がまるで違うので、今日の再開はお互いに驚いたのだった。
せっかくなのでとドトール・コーヒースタンドで少しだけ話をした。
近況を伝え、連絡先を交換し、共通の友人に伝言を託す。
最後に僕は、自分用に買っていた"ちょっといい焼菓子"を渡す。
知人は岩手土産の「かもめの玉子」を1箱くれた。
かもめの玉子を箱で手にしたのは人生で初めて。
どこかで1個か2個は食べたことがあるとは思う。ただし、こうして自宅で自分だけのものとして食べるなんて想定外だ。かもめの玉子は、出張の土産物としての印象が強い。
お菓子好きの友人知人達は、旅先でこういう土産菓子は基本的に買わない。僕もたぶん買わない。
でも食べてみると、おいしいものである。
白くて薄いチョコレート・コーティングが、ぱさつきがちな玉子生地をしっとりと保っている。少し柔らかめの白餡と共に、食べやすく仕上げてある。
形状・見た目を優先して作られたお菓子だとは思うが、実に食べやすいのだ。
ところで知人は、和菓子や土産菓子なんて買わないタイプだ。
岩手には法事で行ったそうだ。だからこのかもめの玉子も、包装紙が弔事タイプだった。
最近はこの弔事バージョン包装のお菓子を貰う機会が増えた。
父の知人宅から「うちは食べないから」と我が家に来るお菓子の多くも、彩度の低い包装紙が多い。
そういう歳になったのだ。
思いがけないところから、人生の終わりは近づいてくるものだ。