無人ラーメン・朝霧高原

世間では年末年始の休暇が始まっているのだろうか。
僕は朝から仕事で静岡県の東部に行っていた。

富士山の西側、ほとんど山梨県境に近いあたりが、今日の主な訪問先。
きりっと冷たくて、道はまっすぐで、富士山は大きくて、なかなか気持ちの良い土地だ。ホルスタイン種の牛たちもたくさんいた。

冬休みの観光客が多いかと思ったが、道の駅や農産物直売所を見る限りでは閑散としている。そもそも年末営業前の臨時休業をしている飲食店が多く、空いた時間にカフェで一休み、もできない状態だった。
唯一、オートキャンプ場だけは混雑していた。今日は日帰りレジャーをする人は少ないのかもしれない。

 

 

昼過ぎには朝霧高原周辺での仕事が片付き、富士宮市に戻ってきた。
国道139号線は富士市富士宮市を経て朝霧高原に向かい、そのまま山梨の富士五湖地方へ向かう主要道路だ。
富士宮市のあたりは、チェーン店の飲食店が一通り揃っている。
なぜかチェーン店の「こだわりラーメン屋」が密集していて、筆でなぐり描いたような看板や、究極とか至高とか、とにかく大仰なキャッチコピーの店が目立つ。

 

同行者の意見もあって、そのなかの1店で昼食を済ませることにした。

店名は書かないが、このラーメン屋がとんでもなく酷かった。
見た目は小規模ながら、チェーン店のラーメン屋のようなのに、活気がまったくない。すぐ近くの店は駐車場を出入りする車で渋滞ができている一等地なのに、である。

僕達が入った時は、駐車場に他の車は無かった。

そして店内は完全に無人だった。40席はある客席に、12:30の時点で客はゼロ。この時点で退店するのが賢かったのかもしれない。でも前述の通り、他の店はどこも混雑しているのだ。
店構えはしっかりしているし、同行者の好きなタイプのラーメン*1ということで、もう他の店に行く気分では無かった。

やけに大音響で10年くらい昔のアメリカン・ポップスが鳴り響く店内で、まず行うのが食券を買うこと。でも、食券機の周囲に貼られた説明書きや写真と、食券機の表示が合っていない。よくよく読み解けば、「黄色いボタンは黄色い注意書きのラーメンに相当しているのだな」とわかるが、全てが暗示的なのだった。
なので、壁に貼られた茶色っぽいスープのラーメンを食べたい時は、食券機の「醤油ラーメン」のボタンを押すしかない。これはなかなかに嫌なものだ。
店の人が、客のことを考えていないように思えてくる。

その店の人そのものが店内には不在なのが、さらに奇妙だ。
学食のカウンターみたいな場所に呼び鈴があったので、ボタンを5回ほど押して1分以上待つと、ようやく外から店主らしき人がやってくる。
その後、ずいぶん長い時間をかけて、ラーメンが出来上がる。フードコートみたいにブザーで呼ばれるので、自分で取りに行かなければならない。
客は2人しかいないのだから、もう少しまともな接客をしてくれても良いと思うのだが、全てがセルフサービスなのだった*2

ちなみにGoogleマップによると、自分達が入ったのが2号店、同じ建物の別の入口から入ると1号店で、厨房を共有しているらしい。なんでそんなにわかりにくいシステムにしているのか。万事がこのように、どこかずれているのだった。風邪をひいた時の夢みたいだ。

 

ラーメンは、不味くはないけれど…といった感じ。
丼の素材か、スープの温度か、うまく説明できないけれど、サービスエリアのラーメンを思い出させる。「うちは、この部分で勝負しているんだぜ」という創意工夫やこだわりが感じられない。強いていえば全体を覆う黄色い脂(鶏の脂肪か?)がそれなのかもしれないが、学食のラーメンに脂だけ追加したようなちぐはぐさだけが感じられて、有難みが無いのだった。

それでも、濃い味付けと多めの油脂で「こだわりのラーメン」っぽさがあるから、趣味でラーメンを食べ歩く若者には喜ばれるかもしれない。
僕にとっては(そして同行者にとっても)この店は疑いなく「2023年ひどい店暫定1位」だった。たぶんこのまま2023年のワースト1位を守るはずだ。

 

 

それにしても、この種の店で「客ゼロ・店員ゼロ」というのは味気ないものだ。
アメリカのラブソングが鳴り響く広い店内(無人)というのは、とてもつらいのだと学ぶことができた。これならば、アルバイト店員が節をつけて大声で挨拶をする、一般的なチェーン店のほうがいくぶんましだ。味気ないか、うんざりするかの違いではあるけれど。

 

そんな、しょんぼりとした昼食だった。
今も思い出して後悔している。
店内は無人、厨房にすら店員が不在で呼ばないと来ないような店だったのだ。食券機の段階で逃げるべきだったのだ。ホラー映画における間抜けな被害者そのものの行動をとってしまった。

 

 

 

夕方には帰宅できたので、少しだけお節料理の試作をしてみた。
ざくざくと野菜を刻んでいると、多少の失敗は「まあいいか」と思えてくる。
それが富士山麓で採れた、ちょっとめずらしい根菜ならば、なおさらのことである。

 

お題「昨日食べたもの」

*1:京都風?鶏出汁?よくわからない。

*2:食べ終えた後は返却棚に自分で返す。これは香川時代に讃岐うどん店で慣れ親しんだ方式だが、この店では理不尽な仕打ちに思えてくる。

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