伯母に再会した話

昨日の長野県日帰り旅行は、伯母に会いに行くための旅だった。
彼女との再会には、少しややこしい前段がある。

 

昔から遠方に住んでいた伯母(父の姉)が、夫との死別をきっかけに自分で老人ホームを探して転居したのが数十年前。その後ほとんど連絡がとれずにいた。

数日前にこの伯母が、突然に電話をかけてきた。
メモか手帳に残っていた謎の電話番号を試しにかけてみたら、我が家の番号だったのだ。
その気まぐれな電話のおかげで、今は長野県に住んでいる事など近況を知ることができた。

元から気が強い人ではあったが、長い独居生活で不満が溜まっている様子。電話口では、ずいぶんと攻撃的なおばあさんといった印象だった。
父や静岡の親戚と話をしても、「来るな。会うことはない」と、なんとも意固地になっている。でも長話になるし、こちらの事も聞きたがる。

 

そんなわけで静岡県在住の一族代表として、父と僕が長野県の老人ホームを訪れたのだった。ほぼ"強襲"と言っていい。

老人ホームといっても、ほとんど介護の必要が無い人達が住む有料のホテルというか集合住宅*1
だからホームの人達も、ぜひ遊びに来てくださいと親切だった。



そんなわけだから、老人ホームのロビーで数十年ぶりに伯母と会う時は、父も僕も、ずいぶん緊張していた。気の強い老婆ほど怖いものはない。父にとっては歳の離れた姉なのだ。

でも、会ってみたらおそろしく上機嫌だった。
少し耄碌はしているし、僕の事は大学生だと思いこんでいたけれど、でも再開をとても喜んでくれた。
気を抜くと老人ホームのスタッフや長野の冬や会いに来ない娘*2の悪口になるけれど、それでも想定していた以上に元気でほっとした。要は、元気いっぱいに他人の悪口を語るタイプの元気なおばあさんになっていたのだった。その矛先が父や僕には絶対に向かわないので、とりあえずは安心できる。家族や老人ホームのスタッフではないからこその安心な距離感ではあるが。

せっかく車で来たのでどこかで食事でも…とでかけたのだが、まずは買い物と銀行手続きのために郊外のイオンへ行くことに。
せっかく長野に来てイオンか…と思っていたら、伯母はスタバでお話をしようと言い出した。
せっかく長野に来てスタバの中のイオンである*3
伯母はケーキ半分とコーヒー、父はコーヒーとパニーニ的なサンドイッチ、僕は泡立てたミルクを乗せたコーヒー(名前を忘れた)とパニーニ的なサンドイッチ。
伯母が元気いっぱいに話をして、僕たちは相槌をうつ。

結果として、とても良い再開だったと思う。
伯母にも父にも、良い気晴らしになった。どんな形であれ、人生の終盤で笑って話せたのだ。僕は小学生の頃にかわいがってもらった思い出しか無いけれど、でもやはり嬉しいものである。
車で3時間かければ、再び会いに行ける。そして、今度は静岡に住む親戚達が会うこともできる。その筋道ができた事が、今回の日帰り旅の収穫だった。

 

 

伯母を老人ホームに返した後は、土産を買ったり、せっかく長野県に来たのだからと(父の趣味である)歴史博物館を巡るなどして過ごした。
帰り道に長野か山梨の名物でも食べたいね、なんて話しながら家路についたのが16時頃か。でも途中で立ち寄った道の駅やサービスエリアでは、これといったものに出会えず、夕食は自宅に帰ってから長野の食材を食べたのだった。まさか道の駅が17時に閉店し、ガイドブックに載るような蕎麦屋が平日は閉めているとは*4

 

伯母の件では大成功だったが、しかし食事はとても寂しい旅だった。
仕事の出張でも、もう少し良いものを食べている。僕は長野に行けば必ず「胡桃蕎麦」を食べることにしていて、それが破られたのは今回が初めて。
伯母は長野県的な鄙びた名産品をそれほど好きではないようだったので、次に行く時は先に食事を済ませてからにするつもりだ。

…というのが、先日の顛末。
冷凍庫と冷蔵庫には、長野県や山梨県で買った食材がたっぷり詰まっている。好物の「おやき」も、高原野菜も味噌も、今朝から少しずつ食べている。
明日は父が長野で買った粉で蕎麦を打つつもりだ。
我が家ではしばらく、伯母と長野の話が続くだろう。

 

 

犬ずもう

犬ずもう

Amazon

お題「わたしの癒やし」

*1:Webサイトの募集要項を読むと、ずいぶん高級な場所らしい。

*2:僕の従姉だ。

*3:極めて個人的な意見だが、僕はイオン他ショッピングセンター内のスタバを苦手としている。どうにも落ち着かないのだ。

*4:観光シーズンでも経営上の理由で金土日のみ営業と貼り紙があった。ちょう世知辛いじゃん。

t_ka:diaryは、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。