これは富士山の写真。
五合目の駐車場から山頂を撮った。
もちろん雲に覆われていて全く見えなかった。
目を外界に向けても、見えるのは雲ばかり。時折、富士宮や富士の街は見えるものの、駿河湾より遠方は霞の向こう側。
とにかく雲の流れが早くて、展望は期待できなかった。
それでも、富士山五合目は素晴らしい場所だった。
なにしろ涼しい。
車の外気温計は8℃を指していた。冷蔵庫の野菜室とたいして変わらない。
Tシャツだけでは寒い。でも、車内に閉じこもっていればちょうどいい室温になる。
持参した本を読み、集中力が途切れたら外を少しだけ歩く。
まだ登山道は封鎖されていて、入山禁止だ。五合目では、展望か雲を眺めるか、駐車場を歩く位しかやることがない。レストハウスは昨年に火事で燃えてしまった。
なぜ今日はこんな場所に行ったのか。
それは、伯父の検査入院に付き添って富士市の病院へ行ったから。
伯父を病院に預けてから5.5時間は待たなければならない。帰宅するには遠いし、かといって富士市からさらに遠出するのも面倒だ。さてどうしようと富士山を眺めていて、そうだ富士山に行けばいいと思いついたのだった。
"下界"は午前中から30℃を超え、湿度も高い。富士市周辺で、長く居座ることができる場所なんて知らない。
富士山ならば涼しいし、人は少なく、そして無料だ。
朝にコーヒーは水筒にたっぷりと用意してあったし、本も3冊が車に積んである。Amazon Kindle Paperwhiteにも電子書籍が詰まっている。
というわけで、思いつきで訪れたわけだが、確かにおそろしく快適な場所だった。
素晴らしい休日(休日出勤の代休)を過ごすことができた。
しかし(到着してから気づいたが)今年の富士山五合目にはトイレが無い。
たぶん登山シーズンになれば用意されるのだろう。しかし今は公共のトイレは閉まっていて、レストハウスは燃えて崩れて土台だけになっている。こういう場所でコーヒーをがぶ飲みするのは、後で考えるといささか危険だ。
幸いなことに自分はトイレを探して急いで下山するような事にはならなかったけれど、思い返せば迂闊なことだった。本来は、長居する場所ではなかったのだ。
そんな危険性はあるし、そもそも天気が急変しやすい危険な場所でもある。標高2400mは伊達ではないのだ。
でも、そうはいっても、今回の軽率な思いつきは悪くない体験に繋がった。
静岡県中部にいれば毎日のように見ている富士山ではあるが、ただのドライブ(そして読書)のために登るなんて事は、ほとんど考えられない。
車を撫でるように流れる雲を見ながら、変な休日になったものだと思ったのだった。
変だけれど、良い休日。
ちなみに伯父の検査結果は、たぶん異常なし。よかった。