資生堂 企業資料館

掛川市にある、資生堂の企業資料館に行ってきた。

先週に引き続き、今日も家族の病気の関係で大病院へ行っていた。今回は、静岡県西部の医療センター的な場所。もう付添いも慣れたが、数時間ただ待つだけの時間がつらい。
今の時期はロビーに長居するのも憚られるし、仕事用のパソコンを開くことはさらに難しい。

というわけで、今日も気分を切り替えて、周辺の施設を巡ることにしたのだった。
それが、資生堂企業資料館



以前、隣接する資生堂アートハウスには行っていた。
素晴らしい美術館だった。

今日はアートハウスが展示替え中の長期休業で、資料館が週に一回(金曜日)の開館日。これ幸いと、じっくり楽しんできたのだった。

 

かなり充実した資料館だ。
製品や資料を綺麗に残しているのは、化粧品メーカーならではかもしれない。
あるいは、資生堂のお客さんには物持ちが良い人が多くて、寄贈されたものも多い可能性もある。
とにかく、過去の製品からPR誌まで、どれも綺麗で驚いた。古びているものも、古道具的な汚れはない。明治時代の香水瓶なんて、今のお金持ちの家にあってもおかしくない。

それほど広い建物ではない。今は新型コロナ対策で止めている展示もある。
でも、じっくり見ていたら1時間以上は滞在していた。

1階は企業史が主となる。製品や広告の変遷と企業活動を並行して紹介する。
資生堂ということで、ロゴや包装紙のデザイン、初代社長の趣味である写真まで、どっさり並んでいる。でも、とても見やすくて、疲れない。


この初代社長が、なかなか興味深い。
明治の初め頃に、西洋式の化粧品を売り出すにあたり、粗悪品や安売り戦略を取らず、独自開発の製品を高品質で届けるためにチェーン店を組織し、広告からPR誌から文化活動まで社長自身が整備していく。
特に広告・広報部門を「意匠部」として自身の直轄としたこと、そしてエンジニアリング(化学)とデザインの両方を理解していた様子が、資料からはよくわかる。

まるでAppleスティーブ・ジョブズだ。Appleに復帰して、iMac*1iPodiPhoneを次々とヒットさせていった時代が、初代社長の活躍と重なる。

商品をしてすべてを語らしめよ
物事はすべてリッチでなければならない
ブランドは世界に通用しなければならない

この言葉など、まるで現代のデザインコンシャスな会社の"企業哲学"ではないか。

 

 

2階は半分が吹き抜け、残りは膨大な数の製品や、広告・ポスターの展示。
こちらは説明はほとんど無い。
ただし、あらゆる年代の人が「これ使っていた」「見たことがある」と盛り上がれる、楽しい展示となっている。化粧品にさほど縁の無い自分でも、一世を風靡した製品や、心に引っかかっているポスターなどは多いものだ。
企業の成り立ちや歴史に興味がない人でも、こちらはじっくり見てしまうと思う。

写真を使った広告やポスターだけでも圧巻だが、イラストとコラージュの時代もすごい。自分はうっすら覚えているだけだが、80年代には資生堂は怪しい魅力のあるポスターやCMが中心だったのだ。特に企業CMは本当に大人っぽい。

 

自分の生活では、資生堂の製品が直接関わることはほとんどない。
数年に1回、資生堂パーラーのビスケットを買うこと、シャンプーがTSUBAKIブランドであること、それくらいか。
それと、手に入る機会があれば「花椿」は読んでいる。あれは良い雑誌だ。

 

そんな自分でも、集中して楽しめた。
すばらしく居心地の良い展示と建物で、こんなに良い内容で無料なんて!と思ったくらいに気に入っている。下手な企画展よりも、明治から現代に至る女性の服飾と広告デザインの総覧ができてしまった。

惜しむらくは、椅子やソファが少ないこと。
とはいえ、歩き回りながら見るタイプの展示だから、これは仕方がない。美術館や博物館のような内容でも、あくまで企業資料館なのだから。

 

goo.gl

そんなわけで、静岡県西部は自宅からは遠いし、病院は送迎だけでも気力体力が減少するし、秋めいた空なのに妙に蒸し暑いし、まあ色々と大変な週末ではあったけれど、資生堂企業資料館に行けたので、今日は良い日。

では寝ます。おやすみなさい。

 

 

*1:家庭用オールインワンのインターネット端末

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