所用で静岡市の海側へ行った帰りに、大谷川(放水路)の水門近くに見つけた喫茶店で一休みした。
「あんせむ」という店名。
植え込みこそ荒れているけれど、かわいらしい建物が目を引く。
小さくて赤いドアは(たぶん)飾りなのだが、すごく良いと思う。
平成か昭和の時代に、きちんとデザインされて作られた正統派喫茶店といった趣。重厚な”本格喫茶”ではない街の喫茶店は、最近では希少である。
店内も良い感じ。
屋根が高くて、広々としている。
カウンターの向こう側、キッチンの壁には沢山のコーヒーカップが飾ってあって、ちょっと懐かしい雰囲気。BGM用のミニコンポも現役のようだ。
でも、ガンダムやONEPIECE、ポケモンのフィギュアが隅に置かれていたり、エドワード・ゴーリーやスター・ウォーズ絵本があるあたり、店の歴史が感じられる。
店主らしき金髪の青年が現店主で、オーソドックスな街の喫茶店を引き継いだのではないだろうか。
並んで置かれているアラジンとバルミューダのトースターからも、そんな経緯を推測してしまう。
客は近所のお年寄りが多かった。平日はどうなのだろう。
コーヒーが400円程度、ケーキセットで750円と、地元に愛される喫茶店なのだと思う。
そんな「あんせむ」で注文したのは、ハウスブレンドのコーヒーと、チョコレートパフェ。
どちらも、きちんとおいしかった。
パフェはバナナが大きく、喫茶店らしい生クリームもたっぷり。カラースプレーチョコも嬉しい。
そして、コーヒーが妙においしくて驚いてしまった。何も考えずにとりあえず注文した「ブレンドコーヒー」なのに、小難しい専門店のものより口に合う。もっと言うと、自分の好みとも違うのに、とても良い味に感じたのだ。
思いがけずおいしいコーヒーが飲めた。
パフェも満足。読書も進んだ。
次はケーキだ!とほくほくしながら店を出た。
ちょうどこのあたりは、自分の行動圏における「喫茶・カフェの空白ゾーン」だった。
だからなおさら嬉しい。
静岡県中部、特に郊外では貴重な、あくまでオーソドックスな、レトロでも老舗でもない、普通の喫茶店を見つけてしまった。
きちんとしていて、趣味っぽい部分も散見されるのに、押し付けがましくない。
つまり、個性が手段になっていない。それが素晴らしい。人によっては普通過ぎてつまらないと思うかもしれないけれど。