デミ・とんかつ弁当の完全合成ニンジン

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朝、寝過ごしてお弁当の準備ができなかった。
でも大丈夫、職場の近くに大きなスーパーマーケットがある。惣菜コーナーでお弁当を買って、近所の公園で食べればいい。
外食も良いのだけれど、毎日だと面白みが減っていく。それにスーパーマーケットのお弁当のほうが安い。

特に今日買ったお弁当は激安だった。
税込みで300円と少し。
「デミとんかつ弁当」とラベルが貼ってあった。

野菜がほとんど使われていない。
でも「食事バランスガイド」的な表示があったから、ビタミン剤か何かが添加されていたのかもしれない。とにかく全てが人工的というか、ディストピア的なお弁当で、とても楽しかった。

ごはんが上げ底なのは価格を考えたら当然だろう。「量=コスト」で、ごまかしが聞きづらい食材である。

スパゲティは、おかずの下に敷いてあるケチャップ味のもの。昭和の時代から変わらないアレである。

デミとんかつ、これが問題だった。
コンセプトとしては、とんかつとデミグラスソースの組み合わせのようだ。
見た目もサイズも立派なものだった。
でもとんかつの中身、肉が練り製品だった。チキンナゲットの豚版と考えるとわかりやすい。筋肉組織はそれなりに再現されているけれど、さすがに脂身や筋は見当たらない。
もしかしたらデミとんかつとは、「demi-Ton côtelette」つまり「半分とんかつ(亜とんかつ)」の意味なのかもしれない。
再現度はなかなかではあるが、それでも本物には負ける。
マッドマックス的な世界で「いつかこんな工場製じゃない、本物のトンカツを食べたいぜ。脂が甘くてよう、ソースとカラシを付けてよう…」とか言いながら食べるタイプの食品である。「まーた爺さんの”本物”が始まったぜ」と若い連中に呆れられるのだ。

 

さらに凄かったのがポテトサラダ。
ポテトサラダを構成する赤色の素材といえば、普通はニンジンだろう。
それが今日のものは、紅く着色した春雨的な何かだった。朱色に染めた澱粉を細く加工したものが、ニンジンの代用として使われていたのだ。

これはファクトリー製デミ・トンカツ以上に工業製品である。
びっくりした。
結果として、ポテトサラダ全体が、ほぼ同じ食感となっているのだ。
思い返すに、あれは本当に”ポテト”サラダだったのだろうか。ジャガイモに似た澱粉加工品だったとしても僕は驚かない。

 

こうなると全てが疑わしくなる。
見慣れない生の野菜は、遺伝子改良した緑色のキノコかもしれない。
妙に小さなカニクリームコロッケは、コックローチクリームコロッケあるいはワームクリームコロッケだった可能性もある。

 

でも、そんな下級市民用配給食乙型みたいなお弁当でも、誰もいない公園でのんびり食べるとおいしものなのだ。
たとえデミグラスソースが”どちらかといえばウスターソース”の味だったとしても、まあ良いじゃないか死ぬわけじゃなし、と思えてくる。
今はもう、清潔な空気を存分に呼吸できる、誰にも気を使わない空間こそが最大の贅沢なのだ。こう書くと、さらにディストピアじみてくるのだが、それはそれ、これはこれ、である。

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そんな週末の昼ごはん。写真は無い。
たぶん二度とは買わない。しかし、たっぷり楽しんでしまったので本当に良い買い物だった。栄養は夕食に摂ります。

 

 

 

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