軽車両専用信号の悲劇

自転車通勤の際に出会う「交通安全おじいさん」が、わりと凶暴。
今日はその話を書く。

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彼らは長い竿を改造した旗を持っていて、マナーの悪い高校生やスクーターにはその旗を振り回して威嚇する。
彼ら(複数人いる)の守備範囲は、公園前の歩車分離信号と交差点。
ここでは、歩行者用の信号が青の時は、自転車は当然ながら降りて渡る。
これは多くの人が守っている。まだ「横断歩道を自転車で走る」が当たり前の老人はいるけれども、通学中の中高生はきちんと降りる。若者においては、少なくとも大きな交差点では自転車を降りる習慣が根付いているようだ。

そしてこの交差点には「軽車両用信号機」も存在する。
車が動く前に、優先道路だけでも自転車を通してしまって安全を確保するための設計なのだ。

これを交通安全おじいさん達は理解できない。
軽車両用の信号機が青く光れば、自転車は(当然)走り出す。
この時には、自転車に乗ったまま横断歩道を渡ることになる。これが交通安全おじいさん達には許せないのだ。毎日その状況に怒り、旗をばたばたと振り回し、時には怒鳴る。

とはいえほとんどの自転車は、この「軽車両用信号機」を無視して、じっと待っている。
おそらく、多くの人は「自転車は軽車両である」と認識していないのだ。
軽車両専用信号機を見て反応するのは、ロードバイククロスバイク、ミニベロなどの「趣味の自転車乗り」ばかり。

交通安全おじいさん達は、「自転車に乗っているときは軽車両、降りれば歩行者」であることを理解していない。単純に「この交差点においては自転車は降りて渡るルールである」と主張する*1
だから、本気で怒っている。旗竿を何度も叩きつけられたガードレールは変な色が付いてしまっている。朝の通勤通学の風景に、老人男性の怒号が交じる。

 

これは、なかなかの悲劇だと思う。
交通安全おじいさん達はボランティアである。何に協力をしているのかというと、警察の交通安全活動を手伝っているわけである。以前、交差点が整備された時には、交通整理の警官も立ち会っていた。
だから警察は、彼らに正しい認識を持たせるべく、きちんと説明をすべきなのだ。

 

…というようなことを今日は「市民からの交通安全の要望書」として代筆してきた。
職場の関係者が警察にそういう文書を出す必要があって、でも何もアイデアが浮かばず、ネタが無いのかと頼ってきたのだ。
こういう話ならいくらでも思いつく。書くのだって数分だ*2

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きちんとルールを意識して自転車に乗ってみると、日本は随分といい加減なのだとわかる。
一番簡単な理解の方法としては「乗っている時はスクーター(原付きバイク)のように、降りたら歩行者のように」である。加えて「広い歩道は例外として走ることも可能だが、基本は避ける」。
趣味の自転車乗りならば常識でも、大多数の「生活の足」のママチャリ、通学通勤自転車の人達にとっては「歩行者の延長」と認識されている。これこそが悲劇の元だと僕は考えている。

そういえば未だに「自転車が車道を走っている!」と怒る人達もいる。
明確に幅寄せをしてきた車も知っている*3

 

旅するボールペン in稚内

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友だちと並走しておしゃべりをしたり、スマホを見たり傘をさしたりするのではなく、効率の良い移動手段として自転車を捉えた場合、交通ルールを愚直に守ったほうが楽で便利だ。何も「いい子」ぶりたいわけではなくて、試してみると世界が変わるくらいに(別の乗り物みたいに)感じられるのが、歩行者の延長ではない乗り方。どんな自転車でも、それは同じ*4

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残念なことに、そのルールは義務教育中の「自転車安全教室」と、自身の(少なくとも昭和や平成生まれの)常識、街の大多数の雰囲気とは少し違っている。何か機会がないと「そんな事は知らなかった」「趣味の自転車乗りだけのルールじゃないの?」と思ってしまうことも確かなのだ。
単純に自転車で街を走るだけでも、常識を疑うことが求められる。それくらいに僕たちの常識は間違っている。
少なくとも善意の老人には、きちんと"権力の側”が伝えてあげることが必要かつ有効だと考えている。

 

 

 

新・自転車“道交法"ブック (エイムック 3721)

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おりたたみ自転車はじめました

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*1:お揃いの帽子とウインドブレーカーを着用した彼らが、他の交差点では自転車に乗って並走かつ逆走していた。彼らが守りたいのは"この交差点”の秩序である。その是非は今回は問わない。

*2:業務外なのでギャラも出た。お昼ごはんとオヤツで使ってしまった。

*3:香川県高松市での出来事。週に何度か遭遇して困っていたら、パトカーに捕まっていた。

*4:ちなみにヘルメットも最初は面倒だけど、当たり前になると快適。安心感だけはなくて、風を防ぎ日差しを遮り、しかも勝手に飛んでいかない。帽子では、こうはいかない。

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