信号待ちの車を降りて交差点の歩行者用ボタンを押す人達

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最近よく通るT字路は、赤信号の時間が長い。
昼間は交通量の少ない場所で、朝夕だけ通勤の車が渋滞している。

僕は知らなかったが、この信号待ちの列では、最も前の車の運転手が「歩行者用ボタン」を押すのが”マナー”となっていたようだ。
赤信号をぼうっと待つのではなく、車を降りて横断歩道のところまで歩き、ボタンを押して戻る。
それをしないと後ろの人達がイライラする。
そういえば僕も、ぼうっと待っていて、後ろから短くクラクションを鳴らされた経験があった。何のことか、全くわからなくて悪いことをした。

これはつまり「感応式」の自動車用センサー作動→青信号の時間よりも、歩行者用ボタンのほうが早いと多くの人が判断しているため生まれた風習なのである。

「マナーとなっていた」と書いたのは、今この風習orマナーは、いま急速に廃れているからだ。ここ2週間ほどは、車を降りた運転手に対して、交通安全協会の人*1が「ボタンを押しても早くなりませんよー。危険ですからやめてください。運転中は降車しないでくださいね。車は上のセンサーで、きちんと検知していますよー」と声掛けをしているのだ。
その旨が書かれたパネルも、停車位置から見える場所に貼られている。

 

でもこんなことは、言われなくてもわかることだろう。
歩行者と車とで信号のタイミングを変える理由はない。せいぜい「近隣の自動車用信号機と協調動作をする」程度だ。

そもそもの話、交通安全協会の人(?)の言うように、交差点で一時停止中の車から降りるのは危険かつルール違反。
それでも、こんな不合理な行動をさせる、そしていつの間にかマナーとして(常識として)定着させるに至った経緯が知りたいところ。ネットミームや都市伝説のようではないか。


おそらくは、「座って待つことが苦手な人が多い」程度の、単純な原因なのだとは思う。
朝夕の慌ただしい時間に、ただ赤信号が青になるのを待つのは辛いことだ。いらいらして信号を睨んでいる時に、窓の外に「歩行者用ボタン」が見える。押せば早くなるのでは…と考えるのは人情。

そして「車内で少し待つ→外に出てボタンを押す→車内で青信号を待つ」と行動すれば、体感時間は短く感じる。なにしろ、車は停車した時に検知されているのだから、何もせずに待つ場合よりも遅くなることは絶対に無い。自車が検知された後の行動だから、手持ちの時計で比較することも難しい*2

 

 

かくして「降車してボタンを押す」が推奨行動になってしまった。
なにしろ田舎だから、誰かが真似をして、それを他の人が真似をして…と続いていけば、あっという間にマナーになる。
そして2週間前に、看過できない危険行動として交通安全運動の「声掛け」が始まってしまった。

馬鹿みたいな風習ではあるが、誤解と錯覚が社会に与える影響の例として、面白くもある。


推測になるが、たとえ今週に注意されたとしても、それでもボタンを押す人はいるだろう。
「なんとなく…」が他人に通じる説得力を持つと考える人も、世の中には少なくないので。

 

 

 

 

*1:詳細不明。制服を着て、交通安全のために横断歩道を監視する人達。

*2:マナーとなれば、2日間かけて比較する”実験”も難しい。

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