プペル見ました:カエルのケーキ

えんとつ町のプペル

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映画「えんとつ町のプペル」を観た。
無料券というのか、前売りチケットが知人から回ってきたのだ*1。そろそろ地元では終映な予感がするので、空いた時間に観ることにした*2

あの西野氏の作品であることを(できるだけ)差し引いた感想としては「わりと普通」。凡庸というか平均点というか中の下というか、良くも悪くも尖ったところのないアニメ映画だった。
盛んに宣伝してそれなりに興行成績もあって、でも数年後にはわざわざレンタルやサブスクで観る人もいない夏休み映画がある。ああいった「今年のティーンエージャーとオタク向けオリジナルアニメ映画」としては及第点だと思う。

主題歌みたいなJ-Popが何曲もあって、劇中では確か3回くらいは「ダイジェストと共に曲が流れる」シーンがあったのは興ざめだった。あれは1作で1回で十分。3回もあると「タイアップ・ビジネス」という言葉が頭に浮かんでしまう。
それから唐突にダンスシーンが始まるのもよくわからない。ディズニー映画みたいに「盛り上がったから歌とダンス」ではなくて、その場面だけ唐突にミュージカル風なのだ。
基本的には手堅いCGアニメなのに、そういった唐突な演出が交じるのは監督のアイデアなのだろうか。
そもそも、そういった感動させたり高揚させたりするシーンが何度も続くと飽きてしまう。ストーリー上は程々の盛り上がりなのに画面だけは歌と踊りと激しい場面転換なのだから、なおさらのこと。

そして絵本の時から感じていたことだが、「絵本なのにダークな世界と、かわいいだけでない主人公の造形」というのは、やはりダサい。ああいうプチ邪悪な顔つきで独自性を持たせる絵は、90年代のアート系専門学校生が手掛けるサブカルイベントの定番だった。

ストーリーについては、西野氏の商売・思想を差し引くわけにはいかないだろう。
ファンなら喜ぶお話にはなっていたと思う。
「諦めるな、信じた道を進め。他人の嘲笑なんて気にするな。成功するのは諦めなかった人だけだ」をひたすら繰り返す。まあ、良い話ではある。
ただし悪人の描写は徹底的に浅いし、主人公達は基本的に葛藤しない。阿呆で保守的な一般人と、世界を騙している悪役と、「世の中の煙が晴れたら星が見える」と信じて頑張る主人公だけのお話。
ただし「外の世界を知ったらどうなるのか」といった疑問や葛藤はまるで無い。ただ「父さんが言っていた。煙に囲まれた街の外では星が見える。僕はそれを信じる」と頑張り続けるだけ。


観終わってから気づいたけれども、これは明確に「天空の城ラピュタ」である。ただし、「ラピュタを見つけた!父さんは嘘つきじゃなかった!諦めなくてよかった!」で終わる天空の城ラピュタである。
「頑張ること=良い事」で話が終わってしまっている。
起承転結の「転」が無い。

 

天空の城ラピュタ スタジオジブリ絵コンテ全集〈2〉

天空の城ラピュタ スタジオジブリ絵コンテ全集〈2〉

  • 作者:駿, 宮崎
  • 発売日: 2001/06/01
  • メディア: 単行本
 

 

結果として「お金の価値に疑問を抱かせる舞台設定」も「閉ざされた世界で自分を信じて頑張る尊さ」も、随分と一方的な描かれ方となっている。

なのでやはり思い出してしまうのだ。この薄っぺらさ、一方的な感じは、西野氏の商売と主張に似ていることを。
絵本を100分以上の映画に引き伸ばしたせいで、追加された人物や物事があからさまに(絵本の内容をほとんど忘れていた自分でも気づく位に)雑だったことも、鑑賞中に引っかかってしまった。

せっかく綺麗な映像と凝った美術設定があるのにもったいないことである。そんなふうに考えてしまうのは僕がオタクだからなのだろう。


たぶんこの映画の主目的は原作者のメッセージを伝えることなのだろう。「自分を信じて頑張れば夢は叶う」それだけを伝えるだけの映画なのだ。
だから「キャラが動く」こともないし「予想外の事件」も「夢が叶ったら自分と自分以外はどうなるのか考える」ことも、もちろん無い。
そういう意味では幸福の科学の映画や、「税金の大切さを学ぶPR漫画」と変わらない。ただ、たくさんの資金と一流のプロフェッショナルを動員した豪華な見栄えになっているので、見る側は戸惑ってしまう。

「言われなくてもわかっているし、それだけで世界の真実みたいに言われると正直しんどいキラキラしたテーマ」を、ひたすら聞かされるような100分と少しの時間。
でもディテールの多いCGアニメだから、いちおう「金返せ!」と途中退出する程のひどい作品にはなっていない*3。あくまで普通、そして凡庸。

ところで、西野氏としては、映画の感想が「凡庸」で良いのだろうか。
質はともかく尖ったところのある話題作になって欲しいのではないか。それとも全然かまわないのだろうか。よくわからない。

 

薬指の標本

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薬指の標本 SPECIAL EDITION [DVD]

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  • 発売日: 2007/03/23
  • メディア: DVD
 

 

 

カエルのケーキ

昨日のタヌキのケーキに続いて、今日のおやつはカエルのケーキ。
味については昨日の日記の通り。タヌキでもカエルでも、同じおいしさ。

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「このケーキを1つください」と指差したら「はい、カエルのケーキですね」と確認された。だからカエルのケーキ。カエルといえば大きな口ではあるが、バタークリームとチョコレートでは表現しづらいのだろう。
もちろんこれでもカエルらしさに溢れている、と思う。かわいいかわいい、と思いながらぱくりと食べてしまった。

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東京の子 (角川書店単行本)

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距離の嘘

距離の嘘

 

 

そんな月曜日。仕事は順調。
昼に入った洋食屋さんがニンニクくさかった。食器にニンニクをこすりつけているのではないか、水に生ニンニクで香りを移しているのではないか*4、と疑いながらオムライス(なぜかニンニクくさい)を食べた。
午後は自宅作業だったから良かったものの、なるほど平日正午にしては空いているわけである。

 

 

 

凍りついた香り (幻冬舎文庫)

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  • 作者:小川 洋子
  • 発売日: 2001/08/01
  • メディア: 文庫
 
静岡百景

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お題「気分転換」

 

お題「ささやかな幸せ」

 

*1:正確には知人の知人から。

*2:夕方の上映で、客は僕を含め6人。うち2人は途中で帰ってしまった。

*3:そもそも僕は無料券で観ている。

*4:ちょっとおしゃれなカフェでハーブやレモンを水に漬けているように。

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