清春芸術村

筋肉痛で足が痛い。昨日は強風のなか自転車で走ったし、斜面も歩いた。
なので今日はできる限り運動は控える。といっても、何もしないよりは、市民公園を一周くらいの運動量があったほうが回復は早い気がする。というわけで午後には少しだけ歩いてきた。

 

 

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さてその昨日の山梨県と長野県(少し)の話だが、私事多忙にて今日は清春芸術村の事だけ書く。他のことは後日。

仕事を午前中に終えて、そのまま山梨県を少し走ったところにあるアートの施設。
私設かのか公営なのか、僕は知らない。誰がどのような目的で、いつ頃に作ったのか、今はどのような立ち位置にあるのかも、よくわからない。

グーグル・マップにピンが刺してあったから、行ってみようと思い立ったのだった。
たぶん「有名な建築家が手掛けた建物がある場所」として、展覧会*1の後にチェックしたのだろう。気になる場所は片っ端からグーグル・マップとToDoリストのアプリ*2に保存しておいて、機会があったら立ち寄るのが最近の基本方針。うっかり、なぜその場所を選んだのか忘れることもある。

 

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でも、この場所は行って良かった。

まず、人がまるでいなかった。
広い敷地に、自分が確認できたのは3組の老カップル。
スタッフは2人。僕が向かう先の建物に小走りで先回りして、簡単な説明や監視をしてくれる。空いた時間は落ち葉掃除などをしていて、とてものんびりした場所だった。

 

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いちばん動いていたのは、芝生を刈るロボット。
2台の大きなルンバみたいな機械が、静かに芝をチェックしていた。刈るべき長さの芝は既になく、広く整った芝生の庭をひたすらランダムに進んでいく。人間がいなくなった後のユートピアじみていて素敵な光景。

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寂しさと心地よさが、ちょうどよい感じの上質な場所でもあった。
パンフレットによると、この土地を戦後に「芸術家たちの楽園にしよう」と考え、美術館や集合アトリエ、教会など、そしてもちろん芸術作品を整えていったとある。
なるほど建物はお金がかかっているし、広い敷地に点在するアート作品も見応えがある。芸術村を名乗るのも納得だ。

 

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特にこの建物はすごい。円形にアトリエが並んでいて、お金を出せば借りることができるらしい。古くはあるが、とても居心地が良さそう。
雰囲気が箱根のプリンスホテルに似ている、と思っていたら同じ建築家だった。僕は学生時代に箱根プリンスホテルで住み込みのアルバイトをしていたことがあるのだ。

 

アトリエ棟は関係者以外は入ることができない。
ただ、上のほうの階では誰かが何かを作っているような音が聞こえる。ほとんど見えないガラス窓からは、簡素ながら飾り付けがされていて、物語の世界のようだった。

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上述の「グーグル・マップに登録」した理由は、おそらくこの「光の美術館」。
安藤忠雄設計。いかにも安藤忠雄!というデザイン。すごい、どこを切っても安藤忠雄だと笑ってしまった。
しかし自然光のなか、白樺や落葉樹の林のなかに佇む本物は、とても恰好が良かった。あちこちの展覧会で再現模型や写真が公開される安藤建築ではあるが、やはり実物を見なければ話にならない。

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他にも、洋画家のアトリエ(東京から移築)や、ツリーハウスみたいな茶室なども点在している。モダンで素敵な教会もあった。

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どう見ても岡本太郎氏の作品もある。

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パンフレットには錚々たる名前が並んでいるけれど*3そのあたりは割愛。検索して調べて、びっくりすると良いです。

 

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敷地内には、こぢんまりとした美術館もある。
ここも居心地が良い空間。
半分は「白樺派」に関係したコレクションが並ぶ。白樺派は文芸運動だけれど、あの激動の時代には文学も油絵も焼き物も、みんなつながっていたのだった。展示数は決して多くはない。でも、白樺派なる人達が志向したものがぼんやりと見えてくるような良い展示だった。

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もう半分は、ゴッホリトグラフなどがある展示室。こちらは企画展だろうか。
大きなゴッホの「ひまわり」が展示してあってびっくりしたけれど、これは複製。しかも、雑誌かカタログからの複製とのことで、近寄れば印刷物であることがよくわかる。こんな展示があるのか!と思ったが、戦前に日本で唯一あったゴッホの「ひまわり」が戦火で焼失し、印刷で再現したとの由来があるらしい。
何の心構えもせず目にした瞬間には「人生初の『ひまわり』だ。なんでこんなところに!」と興奮したのだが。でも、14時30分の黄色い日差しを浴びた「ひまわり」は、たとえ印刷だとしても、とても良いものだった。
何もかもが整った、静かで裕福な時間があった。

 

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そんな感じの清春芸術村。
白樺派とそのパトロン達の執念が、戦後に結実した心地よい空間。紅葉真っ盛りの時期に行けたのも良かったのだろう。いささか寒かったけれど、山梨県の人達*4が、人の少ない素敵な場所に行きたかったら、おすすめします。
山梨県は近くて遠い(山があるから。)。
でも、こんなに良いところがあるなんて知らなかった。

 

 

では寝ます。おやすみなさい。

お題「わたしの癒やし」

お題「ささやかな幸せ」

 

*1:東京の新美術館で開催された安藤忠雄

*2:行きたい場所カテゴリで整理してある

*3:「開運なんでも鑑定団」の常連である洋画家や、カーサ・ブルータスでおしゃれ建築の特集があると必ず登場するような名前があった。

*4:県外移動は推奨されない

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