怒鳴られたりもしたけれど、帰宅しました。元気です。

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先ほど、瀬戸大橋を渡って四国に戻ってきました。
昨日書いたように、本州で寮生活をしながら研修を受け、一人前になったら四国の事務所で働く予定だったのが、寮では喘息が出るために急遽、四国での研修(リモート研修)となったのです。

どうせ、出された課題を数時間パソコンで処理して、手直しなどをして完成させる「教育」ばかりだから、リモート研修でも大丈夫だろうと上層部が考えたのかもしれません。新しい試みとして僕が実験体となった可能性もあるでしょう。
もっと単純に「手入れの行き届いてない寮に住まわせたことで(特に今の時期に)咳が止まらなくなるような社員がいるのは色々と都合が悪い」と思ったのかもしれませんね。

とにかくハウスダストとダニにアレルギーがある自分は、寮に寝泊まりした時にだけ喘息になっていたのです。医師の診断だって受けています。
薬は効く、でも眠くなってしまいます。夜中に目が覚めるから睡眠時間もまるで足りません。もう仕事を辞めてしまおうかとさえ思ったほどの辛さ。だから結果的に、とてもありがたい、ある意味でラッキーな「配置転換」だったともいえます。

会社としては予定外の特別対応だろうと思います。
仕事を教えてくれていた社員の皆さんは、余計な仕事が増えても僕の前では悪くは言わないけれども*1負担になっているのは確実。
自分にできることは唯一つ、「研修をがんばり、はやく一人前になる」です。
しかしそれだって、会社員としての限度を逸脱しない、健康で文化的な暮らしのなかで達成すべき目標であり、別に会社のために犠牲になるつもりはさらさらないのでした。

 

 

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で、寮を出るときに、先住者である住人に挨拶をしたわけですね。
「健康上の理由により、本日で退寮します。お世話になりました」と、きちんと正直に、喘息の件も伝えたのです*2
そうしたらこの「寮の主」みたいな人がいきなり怒り出して、なかなかに大変だったんですよ。

「どうしてお前だけが特別扱いなのだ」
「まるで、この寮の衛生状況が、ひどく悪いみたいじゃないか」
「この会社は、寮に入って研修を受けるのが当たり前だ」
「当たり前ができない『体質』の人間は辞めてしかるべきだ」
「今までこの寮で、体質が合わないなんて理由で出ていった人はいない」

とまあ、そういう意味の言葉を岡山弁で言い始めたのです。

無理もないことだと思いますよ、そりゃあ。
僕だって、長く住んでいる場所に来た新人が「ホコリやダニで体調を崩すので出ていきます。これは会社に特別扱いをしてもらいました。つまり会社には予定外の負荷がかかります」と言われたら、何か言いたくなるかもしれない。

そういう意味では彼の怒りも理解します。
たとえ昨日まで、壁の汚れや、手入れのされていない庭を一緒になって笑っていたとしても。管理責任が彼に無くとも、彼が愛社精神に溢れた人物でなくとも、そうやって怒鳴りたくなる”気分”は想像できます。それが「家」というものでしょう。

しかしそれでも、どうしても、共感はできません。
正直なところ、どんなに強い言葉をかけられても、そして「寮が悪いのではない。『体質』が、つまりお前の弱さが悪いのだ」と言われても、「そういう考え方があるのはわかりますよ」くらいにしか思えなかったんですよ。
むしろ特別扱いをしてくれた会社と、講師役の先輩社員に共感はしています。
病気や体質、出自のような「避けられない問題」を当たり前のように「意識の話」にされても、こちらとしてはどうしようもないんです。
喘息なんて数年に1回、かなり特殊な状況(倉庫の整理とか)でしか罹らなかったわけです。普段は忘れているくらい。つまり「一般的な住環境で起こる」とわかっているのならば、履歴書にも書くし「はじめは寮に入ってもらいます」と言われた会社には就職しないわけですし。

そんなわけで、喘息になりたくてなったわけではないし、「平気な人が普通」と言われても「普通じゃないから何なのですか?」としか思えないわけです。「気分を害してごめんなさい」で納得してくれれば良いのですけれど、そういう風でもないですし。

こんなレベルで「正しい普通」を求められたら、たまったものじゃない。僕の罹るレベルのハウスダストやダニの量を「当たり前」にしていては、他の衛生リスクが増えてしまいます。別の言い方をすれば、「中年男性の一人暮らしでは全く喘息にもアレルギー性鼻炎にもならない人間に、それ以上の対応能力を求められても困る」ということでもあります。
それに、これくらいの事情をカバーできなくて何が会社か?社訓に幸福とか書いてんじゃないよまったくもう、ということです。

 

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ある種の病気や「体質」に関して、想像の範囲を自身の観測範囲にしか広げられない人は、実際のところ、わりと多いです。

子供の頃には、いわゆる「小児喘息」児童でした。
急に部活(吹奏楽部)を休むこともあって、そのときには顧問の先生に言われたものです。「それって甘えじゃないの?喘息は甘え病よ」と。
あの先生がいなかったら、僕はきっと、今よりも「普通じゃない人」に鈍感だったと想います。ありがとうS山先生。ナイス反面教師。

S山先生はともかく、そういう「自分の考えた普通」が許せない人は、そのへんにごろごろ転がっています。知らない、というのならTwitterのアカウントを取得すればわかります。SNS、超おすすめ。
もう少しだけ真摯に知りたい人は、全国のハンセン病患者収容施設の広報コーナーに行くといいです。というか一度は行ったほうがいい場所だと思っています。これは真面目に。

 

天冥の標 2 救世群 (ハヤカワ文庫JA)

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つまりこれは、差別の話。
僕は彼に「仕事を続けるべきではない迷惑な体質の人間」と見做されたわけです*3。僕が選択した「体質」ではないのに。寮の環境なんて知らずに就職したのに。

しかし残念、こと喘息においては、小学生の頃に、子供からも大人からも「無理解」をぶつけられていたので、いきおい「精神的な抗体」が生じているのです*4
喘息に関しては何を言われようと逃げますし、そのことを恥ずかしいとも思いません。「仕事の穴」より健康ですよ、人生は。

それにほら、いちおう安全衛生管理者の資格持ちでもありますから、独身寮にそこまで無茶な「清潔と健康志向」を求めているわけでもない、という自覚もあるんです。知識的な「常識」で武装もできています。
たぶん寮の写真をアップロードしたら、かなりの「いいね」がもらえるんじゃないかな。InstagramよりはTwitterのほうが合いそう。誰の得にもならないから出さないけれどね。

 

とはいえこれから新型コロナ(COVID-19)の蔓延に伴い、この種の「弱い人」や「穢れ」に関する諸々は増えるのだろうなあ。それは嫌なこと、だからこそ、より敏感でいたいと思う所存です。

 

ペスト(新潮文庫)

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だからまあ、怒鳴られても、別に傷ついてはいません。
ただ大声には慣れていないから、反射的に身体がこわばり、びっくりしたけれども、それだって瀬戸大橋を渡っている間には解消しました。瀬戸内海スゴイ。
今はもう、自分のアパート(喘息にならないアパート!)で、のんびりしています。明朝には第一回目の洗濯もスタートします。

数ヶ月は暮らすつもりで準備をしていったから、結果的に「簡単に食べられる食料」も予想外に手元にあるし。
そんなわけで、
色々あったけれど、私は元気です。

 

 

ひとつ残念だったのは、岡山にあって四国にも静岡にもない「ドムドムハンバーガー」を食べることができなかった事かな。あの「怒鳴られ」の時間*5が無ければ、帰路に寄ることもできたのにな。
ちなみに岡山城倉敷美観地区については、月初の時点で諦めていました。でもいつかきちんと時間をかけて遊びに行きたい県ではあります。
もっと「山の方」も面白そう。

 

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*1:寮の古さを知っているから。「そういう人が出てもおかしくない。むしろ放置している上層部が悪い」と行ってくれた。

*2:寮を出る理由を聞かれたので。後述の通り、こういう辞め方は「普通じゃない」から。黙って会社を辞めて退寮する人はいる様子。

*3:同時に彼は「誰かが病気になる場所は悪い場所」と考え、自分の住処はそうではないのだと怒ったわけで、それも冷静な考えとは僕には思えません(しかし人情としてはわかる)。

*4:呼吸が苦しい状況で酷いことを言われていると、より深く記憶に残るものです。みんな気をつけてくださいね。

*5:と、その後に「こういう事がありました」と社長に電話報告した時間。