転職して2週目。
しばらくの間(数カ月)は本州にある寮で暮らしつつ研修を受け、ある程度の実力がついたら四国の拠点に移る。そういうプランで僕の新しい仕事は始まったわけだが、昨日の今日で少しだけ状況が変わった。
僕が寮にいると喘息になる、と聞いた役員の誰かが、ならば寮暮らしは止めて、四国の事務所の隅っこで研修を受けるのが良い、と言ってくれたのだ。
というか僕が「ぜんそくがつらいです。このままでは、おしごとをつづけることができません。こんなことは、はじめてです。へやをがんばってそうじしたけれど、やっぱりぜんそくになります」と、教師役の先輩社員や、昼休みの雑談で言い続けてきたのが、ようやく上の人の耳に届いたのだろう。
変な話だが、昨今の新型コロナ禍で「咳」への意識が変わった部分も大きいと思う。
今朝も社長との面談で(昨日は病院に行ってきました報告)、しきりに体調のことを聞かれて、僕は馬鹿みたいに「アレルギー性の喘息と診断されました。職場や自宅では健康です」と繰り返していたのだけれど、あれは「おまえはコロナか?」と聞きたかったようだ。面談の最後には「ほら最近さ、都会では緊急事態とかあるやん。みんな心配なのさ。実際さ、会社にそういう人がいると困るんだよ」みたいな、かなり直接的な言い方になって、ようやく気がついた。
多少なりとも遠回しに言うぶんだけ、コンプライアンス意識が高いのだろうか?(この時にも、「あ、辞めよっかな、この会社」と思ったけれど、それはまた別の話。)
おそらく、寮の環境が悪いせいで、数週間で辞める人が過去に何人もいたのだと推測する。自分は寮の滞在時間の多くを衛生管理に費やして、さらにキャンプ道具で(つまり屋外にいるつもりで)凌いでいた。
そして社員の多くが「あの寮はひどい」と知っていて、社長か誰かが無頓着に現状を放置していたことを不満に思っていた。
なので僕の件(具体的な症状があって、きちんと病院に行ったこと)で、問題が明るみに出たのではないか。そんな雰囲気がある。
そもそもこの寮は、ドキュメンタリー番組で「現代の闇」として描かれるような、ドヤ街的な期間工向けの建物らしい。古株の先輩社員達がなにやらひそひそと話していた。関連会社にそういう貧困ビジネスに近い組織があって、基本的にはそこが使う寮。
今回はたまたま、僕が入社したときに正社員向けの「普通の寮」に空き部屋が無かったので、緊急避難的に(同族会社のよしみで)この寮を使わせてもらった、というのが実情らしい。
そういえば入社時に役員の一人が「本当は君のように、まともな人を住まわせる寮じゃないんやけどな」と言っていた。おそろしい物言いをする人だな(これが西日本の差別か!)と驚いた記憶がある。
確かにひどく古い部屋だ。共用部分も、男所帯にしても「生活をきちんと整えて楽しむ」雰囲気が皆無。
でも数人は、きちんとこの部屋に馴染んでいるから、今までしっかりと問題になることが無かった。教育係の社員が何度も進言しても「上の人」にとっては寮なんてどうでもよかったのだ。全員が逃げ出すわけじゃない。住んでいる奴がいるならええやん、で終わり。
誰か1人でも問題なく住めている寮の場合は「寮が不満で辞めた」が、会社理由の退職にはならないことも理由だろう。
そういう意味では、僕のこの「ぜんそく騒動」で、何かしらの見直しがあるのかもしれない。あるいは、僕の事例は「人手が足りない時期に入ってきた、ナーバスな喘息持ちの話」として、片付けられてしまうのかもしれない。
しかし、なにしろ四国のアパートにいる限りは健康なのだ。いま寮の部屋でこうして日記を書いているわけだが、マスクをしていないとくしゃみが出る。薬は寝るときのために温存してあって、今は飲めない。
だから実際のところ、僕は今朝の時点で、健康を理由に辞めるつもりでいた。喘息も嫌だけれど「一時的とはいえ、こういう暮らしをさせて平気な会社に長く居られるだろうか」と考えた人間が、夜に咳で目が覚めたら、もちろん辞めることを本気で考える。損得を考えたら大損でも、今が逃げ時かな?とずっと考えていた。
今は少しだけ気分を切り替えた。
来週からの、四国での勤務をまずは頑張ってみる。
会社への「忠誠度」は正直なところゼロに近いけれど、教育はしっかりしているし、今辞めると失業手当も出ないし、世の中それどころではない感じだから、少し様子見といったところ。
どうなることやら、である。
というわけで、明日までは本州暮らし。今から片付けを(可能な限り)進めておく。どうせ夜はやることもないのだ。