魔が差した、というべきだろう。それ以外の理由が思いつかない。
今日は夕食にオムライスを作った。塩コショウとハムとズッキーニとご飯を炒め、ごく少量のローズマリーで香りづけ。そこに薄めに作ったチーズオムレツを載せる。
ちなみに付け合せは、いんげん豆のマリネと、焼いた赤ピーマン、きゅうりのサラダ。
このオムライスに、ケチャップで文字を書いてしまった。
自分のフルネームを、ローマ字で。
これは経験者でないと絶対にわからないと思うが、いわく言い難いとしか伝えられない、なんとも言えない気分になる。避けられるならばそうしたほうがいい類の、もやっとした精神状態。ブルーになる、とか気分が暗くなる、といった変化とはまた違う何か。
ケチャップに「細出しノズル」というオプションが付いていたことが、ひとつの原因とは言えるかもしれない。でもそれを装着し、操作し、描画したのは、僕だ。僕の手と脳と精神が、フルネームをオムライスに刻み込んだのだ。
誰も見ていなくて良かった。
しかしどうしてあんな事をしたのだろう。夏の夜は人を狂わせる。恐ろしいことである。例えば生命の終わる直前に見るという走馬灯で、このオムライスが写しだされたら、僕は耐えられるだろうか。せめてその時のために、達観を身につけていきたい。そう思う夜である。