朝、上司からへんなことを聞かれた。
「扁桃腺が腫れて、じびおーえナントカって何のことだ?」と。
急遽休むことになった同僚からの電話で、そんなことを言われたらしい。かつて扁桃腺の除去手術経験がある、そして製薬会社に勤務していた、そんな僕にならばわかるだろう、と考えたらしい。でも僕だって、じびおーえナントカなんて、さっぱりわからない。
午後、その同僚が出社してから、その言葉の意味がわかった。
この同僚、「耳鼻咽喉科」を「じびおえつか」と読んでいる。漢字で書くと「耳鼻嗚咽科」。夕方届いた「午前中は突然休んですいませんでした」みたいなメールにも、「耳鼻嗚咽科」と書かれていた。
なるほどそうかそうか咽頭と嗚咽か、と笑い話で済んだが、困ったことに本人がそれほど堪えていないのだ。気に病む必要は無いにしろ、ある種の自覚が無いと直しづらい類の間違いだと思う。「自分の言っていることは間違っているかもしれない」と、頭の隅に「常駐型懐疑エンジン」を駆動している人間と、そうでない人間がいるとして、この同僚は明らかに後者だ。
そういえば以前、「やぶさめとうの様に…」と言っていた。雑談だったし、本人は自身に満ち溢れていたために、僕も聞き流してしまったのだけれど、あれはたぶん、「走馬灯の様に」と言いたかったのに違いない。
しかしこういう間違い、指摘がしづらい。
いざ(かなりの精神力を消費して)間違いを教えても「え、でも言葉は言葉ですから、大切なのは気持ちですよ」とか言われそうな、というか絶対に言うであろう人なのだから、こちらとしても微笑と共に受け流すしかないのだ。
困ったことに、こういう人に限って、仕事の場で凝った言い回しをしたがる。この同僚の場合、わざわざくだけた言い方として「ウチらのチームは…」といった表現をする(有り体に言えば、大嫌いな言い方だ)。それをメールなりPowerPointのスライドに入力する時には「家らのチームは…」となる。
少なくとも、勤務時間中は、もう少しベーシックな表現だけに限定しても、全くかまわないと思うのだが。
あまり関係が無いが、コンピュータの日本語変換機能を駆使しすぎて無理矢理に漢字をあてはめる人が、最近は多い気がする。あれも恥ずかしい。おそらく手書きならば「あれ、ちょっと変だぞ」と思えるのではないだろうか。
それと、そろそろ「ここだけの話し」については、日本語変換にまつわる代表的な勘違い・誤用であるということが、常識になってもいいんじゃないか、と考えている。
今日はもう、徹底的に忙しかった。いつの間にか作業が滞り、雑事が追加され、たっぷりと残業をしてきた。
そんな2015年4月21日に印象に残っているのが「耳鼻嗚咽科」という言葉だけ、というのはある種の「呪い」のような気がする。だんだん「じびおえつか」でもいいんじゃないか、そのほうがココロにすっと入り込むんじゃないか、と思えてくるのは、たぶん疲れているからだろう。
というわけで寝る。