お茶屋さんのお手伝い

 
数日前から「祝日だというのに暇だ」と言っていたところ、友人の友人くらいの間柄の人から、「親戚のお茶農家を手伝わないか」と誘われた。
茶業の盛んな土地だが、今まで茶農家に関わったことがなかった。なかなか面白そう。八十八夜の頃は猛烈に忙しいというが、今ならそういう事も無いだろう。
それに休憩時間には女衆の作ったお菓子(今の時期なら水饅頭か水羊羹だろうか)と、自家製の玉露が楽しめるかもしれない。
というわけで、朝から8時間ほど、働くことにした。



目論見は完全に外れた。
茶農家というより、どうみても製茶工場だった。その辺の町工場より、よほど大きい。きちんと雇用契約書も書く。
小さめのIKEAみたいな立体倉庫があって、そこで働く。Amazonの集配センターを小型化したような設備と仕事内容。
伝票発行から在庫管理まで自動化されているので頭は使わないけれど、歩きまわるだけで疲れてしまう。
空調の無い暑い倉庫と、スーパーマーケットのいちばん寒いところくらいに肌寒い倉庫、それに冷凍庫みたいな茶葉保管庫を出入りする。
心配していた熱中症にはならないけれど、温度差がいかにも身体に悪そう。メガネも曇る。
それでも汗をかいたのだろう、夕方までに500mlのミネラルウォーター2本とお茶を飲み干していた。
仕事が終わる1時間前くらいから、しゃがんでから立ち上がると必ず立ちくらみになるという、不思議な状態になった。今は(とても疲れているけれど)元気。





とりあえず、いちばん元気そうなおじいさんの横に陣取り、仕事を教わった。
この人は東北に家があって、お茶の時期だけ静岡に来るそう。そういう職能集団がいるそうだ。杜氏みたいなものか。次は九州の茶畑へ行くと言っていた。
なかなか親切な人で、単純作業であってもきちんと「注意するところ・力を抜くところ」を教えてくれるし、その理由から説明してくれた。大学院生に指導されているような気分。
どんな仕事であれ、全体の流れがわかると気分よく働ける。ミスも減る。
肉体労働と社会見学を同時にやったような、ずいぶん有意義な時間が過ごせた。臨時収入にもなったし。
おやつは振舞われなかったが、飲み放題の冷茶はとても美味しかった。さすが茶農家、という味だった。
そしてなにより、とても良い香りの職場だった。どこに行っても、お茶の(さまざまな状態の)匂いがした。





静岡百景
たまら・び no.79 小平ラビリンス/小さな旅カフェ

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