松山 おいしかったもの

松山市への旅が終わった翌日。
まだiMacは起動しない。
自分でできることを色々と試したが駄目だった。あと1手はありそうだが、今日は無理。明日またがんばる。

 

そんなわけで、遠出もしないで読書ばかりしている日だった。メインのパソコンが使えないから、仕事と旅用のノートパソコンを使っているのだが、これがまるではかどらない。もとより仕事の道具だったからか、だらだら楽しむ気分になれない。モニターも小さいし。

 

ところで先日の松山市旅行ではおいしいものをたくさん食べた。
主に甘いものについて書いておく。

とんかつパフェ

 

かつてネットで知った面白メニューである、松山のとんかつパフェ。遠方の知人からもおすすめされた。
僕は知らなかったけれど、ゲーム「桃太郎電鉄」にも登場したそうだ。
見た目よりおいしいだろう、と想像していたので味にはおどろかない。さくさくとした衣と、匂いや脂が控えめな豚肉、乳脂肪である生クリームに、アクセントとしての抹茶アイス、そして酸味と食感の生りんご。同じ材料で高級フレンチができそうではないか。

かなり細かく丁寧な食べ方指南が添えてあった。
その通りに食べると普通においしい。たぶん一人でのんびり(平熱で)食べるタイプのメニューではないのだろう。とはいえ、りんご以外のフルーツ(缶のサクランボやミックスフルーツ)を食べると、ちょっとだけ混乱する。

話題にはなるがそれほどゲテモノともいえない。お店自体も、新しいことを積極的に進めていく雰囲気あって、セットメニューやランチの種類も多く、下手なチェーン店よりも気が利いた感じ。近所にあったら通うかもしれない。

 

 

松山ラーメン

なにかの本で「甘い」と書かれていた。
そして「瓢」の字を継いだ暖簾分けがされている、とも。
たまたま正午過ぎに到着し、適当に停めたコインパーキングの近くにあったお店が、老舗だった。
居酒屋でもあるラーメン屋、といった雰囲気。昼なので家族連れも多かったけれど、夜は完全に居酒屋になるのではないか。
おでんがあるのも特徴的。僕は普通のラーメンと、おでん(タケノコ、きんかん(鶏の卵管と未成熟卵))を注文した。


スープは「九州の甘い醤油を使っているのかな」と思える甘さ。徳島ラーメンのような出汁の味と相まって、たしかに甘い。麦味噌的な甘さ。

1片だけ浮かんだ肉はさらに甘い。とろりと甘いスイーツに塩気を効かせました、といった雰囲気の甘み。これは少しびっくりする。中華街でぶら下がっている叉焼の外皮だけ集めてとろとろになるまで煮込んだ感じ。

どうしてこういう味付けにしたのかは、よくわからない。西日本の麺類は塩気が強い印象があるので、少し面食らった。
でもとてもおいしかった。機会があれば、他の「瓢」系のお店にも行ってみたい。

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マチボン愛媛vol.12「ぼくらの松山グルメ。」

マチボン愛媛vol.12「ぼくらの松山グルメ。」

  • 発売日: 2019/02/28
  • メディア: 雑誌
 

 

タルト

松山銘菓の「タルト」は、香川県のスーパーマーケットでも普通に売られている。パン売り場の横にある和菓子コーナーの定番といってもいい。お年寄り用のお茶請け菓子の印象。
今まで何度か食べた記憶があるけれど、べったり甘い餡に柚子の風味が混じっていて、それほど好きな味ではなかった。

でも今回、 id:cimacox さんに教えていただいた「六時堂」の品はちょっと違う。お茶に合わせるとぴったりの味になる。

本店は松山城に登るロープウェイ・リフト乗り場のすぐ近くにある。
バラ売りのものを1個買って、松山城で食べた。この選択は自分で自分を褒めてあげたい。暖かな3月の日差しの下で、ペットボトルのお茶とタルト、眼下には松山市街が、そしてすぐそこには松山城がある。

運良く、月に何回かあるという(たぶん6が付く日付)、タルトの端っこを売り出す日だった。自宅用に購入。しばらくタルト生活となる。

 

四国懐菓子88

四国懐菓子88

 

 

 

労研饅頭

ろうけんまんとう、と読む。
これも松山名物。
ふた昔前のku:nelや暮らしの手帖で”再評価”された、なつかしくてほっこりする系の、素朴な地元菓子。

要は蒸しパンである。二酸化炭素の発生は酵母によるもの。
いかにも大正・昭和の真面目な雰囲気があって好ましい。長径15cm弱の大きくて平たい、ふかふかした饅頭だ。
14種類の半分が、「餡なし」な点は珍しい。中国のマントウが好きな僕としては嬉しい限り。今回は「うずら豆」「よもぎ」「よもぎ(餡入り)」「バター」「つぶあん」「かぼちゃあん」を買った。これは帰宅後、今日から食べている。
「バター」は生地にバターが練り込んである、とあるけれど、現代の基準でいうとかなり弱い「バター味」だ。しかしそれがとてもおいしいのだ。

冷凍すれば日持ちするらしい。しばらく労研饅頭生活となる。今回のお土産としては、これがいちばんの収穫だろう。

 

地元菓子 (とんぼの本)

地元菓子 (とんぼの本)

  • 作者:若菜 晃子
  • 発売日: 2013/05/30
  • メディア: 単行本
 
地元パン手帖

地元パン手帖

  • 作者:甲斐 みのり
  • 発売日: 2016/02/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

 

「みよしの」の、五食おはぎ

ここは必ず行きたかった。
あんこ好き必携の書籍である「何度でも食べたいあんこの本」で知った。
おはぎとしては小さめ、一口か二口で食べられる寸法のものが5個、経木に包まれている。残念ながら今は持ち帰りのみ。売り切れ必至、とのことで開店直後に行った。

こしあんつぶあん、ごま、青のり、きなこ、で5色を成している。

これは本当においしかった。びっくりした。
動物園の隅で包みを広げて、お茶とともに食したあの時間はこの旅のハイライトだったかもしれない。

労研饅頭とこのおはぎをもう一度買うためだけに再訪しても良いくらい。
「みよしの」は松山市の宝だ。

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何度でも食べたい。 あんこの本 (文春文庫)

何度でも食べたい。 あんこの本 (文春文庫)

  • 作者:尚美, 姜
  • 発売日: 2018/03/09
  • メディア: 文庫
 

 

わかくさ珈琲

こういうお店が高松市には無いのだ。
店主が好きなものをちょうどいいバランスで配していて、押し付けがましくない都会ののんびりしたカフェ。場所もいい。お城をぐるりと自転車で散策する途中にある。
観光ルートからほんの少し外れた、でもお堀も石垣も路面電車もすぐ近くという、旅人の休憩にはもってこいの立地。近所にあったらなあ、と松山市民をうらやましく思う。

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パンケーキ

朝ごはんを求めて商店街を彷徨っているときに見つけた喫茶店
数年前、頻繁に東京出張をしていたときに、神田か秋葉原か、あのあたりで入った記憶がある店の本店だった。

厚いパンケーキも、やや苦めのコーヒーも良い感じ。

 

 

 

鯛飯

宿の近くにあった店で食べた。鯛飯(2種類あるらしい)は出張時の接待で、何度か食べた記憶がある。なぜか高松市でも県外者を接待するときに、コース料理の最後に鯛飯が出るのだ。
好物*1だけれど、今回は割愛。というか写真を撮り忘れた。
炊き込みタイプの鯛飯なら最近よく作る。今回は「正解」を知ったので、後日きちんと再現してみる。

 

春夏秋冬 おいしい手帖

春夏秋冬 おいしい手帖

 

 

 

食べたものに関してはこんな感じか。
観光キャンペーンでミカンジュースを試飲させてもらったり、宿のお茶請け菓子が「せとか」だったり、大判焼き的な「日切焼」の白あんが普通に柚子風味だったりと、柑橘県らしかったところも印象に残っている。

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ひとり旅、かつ目的地といえば城と動物園くらいなので、始終食べていた印象がある。
街中は自転車で移動したから路面電車に乗れなかったこと、宿に温泉はあったけれど有名な道後温泉には行けなかったことが心残りだ。

しかし心残りも含めて、隣県に「また行きたい場所」ができた旅は、良い旅といえるのではないだろうか。うん、良い旅でした。

お題「行きたい場所」

お題「もう一度行きたい場所」

*1:JR静岡駅で買える鯛飯弁当は新幹線旅行のお楽しみのひとつだ。売り切れていると悲しい。

想定外ハロウィンと秋のお祭り

どこにも出かけず家事をするつもりだった土曜日。
朝には瀬戸内国際芸術祭(の伊吹島)に行くつもりだったのだが、たぶん間に合わないだろうと諦めてからは、だらだらと過ごしていた。

でも今日は良い天気。室内より外のほうが過ごしやすいくらい。さらに家におやつの備蓄が無い。
だから家に籠もるのも損な気がしてくる。
遠くから祭り囃子の音が聞こえてくる。どこかの神社でお祭りをしていて、各地区の子どもたちが台車に載せた神輿を引いているのだ。

普段はすっかり忘れていたが、自分の住む土地は古い神社や寺が多いのだった。探検のつもりで自転車で出かけてみた。

神社はすぐに見つかった。
いくつか屋台が出ているけれど、少なくとも昼の間は神輿や神事がメインの様子。境内を散策しても10分とかからない。

 

乙女の高松 雑貨屋&カフェさんぽ かわいいお店めぐり

乙女の高松 雑貨屋&カフェさんぽ かわいいお店めぐり

 

 

なのでその近所にあった喫茶店に寄ってみた。
前々職でお世話になった方々が教えてくれた「良い喫茶店」のひとつ、「珈琲美人 文月」だ。

名前からわかるとおり、おばさん趣味の強い店だった。
お客さんの9割は女性、しかも若い人はほとんどいない。
おばさん趣味ではあるが、趣味は悪くない。店員さんもきちんとしていて、高松の古いお店によくある「まるで自宅のように過ごし知り合いのように接する店員さん」が一人もいない。
また訪れてみたくなる素敵なお店だった。

ここではコーヒーとホットケーキを注文した。
コーヒーは「日陰干しコーヒー」を、ホットケーキは「季節のホットケーキ:栗」を選ぶ。

日陰干しのコーヒーを飲むのは初めてかもしれない。飲みやすい味だった。薄くはないのにたくさん飲みたくなる味。

栗のホットケーキは、ハロウィンの装いになっていた。
9月の初めには雑貨屋や100円ショップにハロウィンの関連商品が並び、ああそういえばそんなイベントが秋には来るなあ、と把握はしていた。でも自分の生活には全く関係ないから、このハロウィン・ホットケーキは少し意表を突かれたかたちである。

静岡に住んでいる時も、三重の時も、カフェやケーキ店には頻繁に行っていた。だからハロウィンもクリスマスも節句も収穫祭も、何かしらのかたちで楽しんでいた記憶がある。しかし今はその辺の“機微”にすっかり疎くなってしまった。
友人がいない土地で一人で暮らすというのは、こういう事だ。不便ではないし、この事自体は寂しいとも思わないけれども、ここまで極端な(ひとりの)生活は人生で初めてだからその感覚は未だに慣れない。

お祭りを見物して、喫茶店に行った。
スーパーマーケットとユニクロ無印良品にも行った。無印良品では靴下を買った。

それ以外は特に何かをした訳でもない。新しい収納家具の図面を描いたけれど、まだ材料の調達もしていない。
天気や気温と同じく、穏やかな日だったといえる。物足りないが仕方がない。充実して忙しくて出鱈目で、疲れ果てて失敗ばかりの日よりもよほど良い。

 

58歳から 日々を大切に小さく暮らす

58歳から 日々を大切に小さく暮らす

 
コスパのいい服

コスパのいい服

 

お題「今日のおやつ」

 

ホットケーキ,パンケーキ,プルーン.

先月にセール品のシリアル*1グラノーラとドライフルーツをまとめ買いした。
なので朝でも昼でもヨーグルトとそれらを混ぜて食べている。低コストなのは良いが食事のバリエーションが制限されている。

毎日同じものでも飽きない。特に「ケロッグ オールブラン」はその味も素っ気もない貧しい感じが気に入っている。
でもたまには、ちょっと良いものが食べたくなる。高級ではなくとも、変化が欲しくなる。

 

 

 

例えば今日がその日だった。
つまり、ホットケーキを焼いてみた。

牛乳を買う習慣が絶えているため、代用としてヨーグルトを使った。
ホットケーキミックスは多少のアレンジも許してくれる。言い換えれば味付け・風味付けが強い。ホットケーキミックスの包装にもアレンジメニューが提案されているけれど、何を作っても「元ホットケーキミックス」であることは隠せない。

しかしそういう部分も含めて、ホットケーキは好きな食べ物だ。
日常を僅かに彩ってくれる。

 

子供の頃はもう少し喜びに満ちあふれた食べ物だった気がする。
しかしその座は、今やパンケーキのものだ。

外食で食べるパンケーキは「ハレ」の食べ物。
そして家で焼いたホットケーキは「ケ」の食べ物。
民俗学の教科書にもそう書いてある*2

ホットケーキとパンケーキの違いについては色々な場所で様々な人が語っているけれど、結局のところはそういうものだと考えている。
たぶん外国、欧米ではまた違った立ち位置だと思う。
数年前に、東京の古い喫茶店に行った時に、ヨーロッパからの観光客に遭遇した。彼らにとって、「喫茶店のホットケーキ」は、漫画や映画や小説に登場する謎の食べ物*3、日本に来たら食べてみたい品であるらしいのだ。ガイドブックに載っているのだろう。客の大半が西洋人だった。みんなにこにこして食べていたので良かった。

独り暮らしでホットケーキを焼くと、基本的に余る。
少なくとも昔はそうだった。
最近は廉価なホットケーキミックスであっても1回分ずつ小分けされていて、まとめて焼いて冷凍保存する必要も無い*4
ただし自分の場合、たくさん焼いておいて、冷凍したものを後で食べるのもまた独り暮らしの味わいだと思っているので、少しだけ寂しい。

週に三回くらい焼けば、特別な想い入れもなくなるのだろう。
でも今のところ、ホットケーキには多少なりの“特別”を感じている。ずいぶん所帯じみた特別感だが、個人の生活において個人が思うだけだ。願わくば放置していただきたい。

 

森永 ふわふわパンケーキミックス 170g×6箱

森永 ふわふわパンケーキミックス 170g×6箱

 

 

 

 

 

ホットケーキ用に作った訳ではないが、数日前にドライ・プルーンを柔らかく戻しておいたものを今日食べた。普段は濃く淹れた紅茶を使うが、今回は少しの水と黒砂糖を使った。
柔らかくしたプルーンがホットケーキ(とバター)に合う。

そして、副産物として生じたシロップ状の液体が、なんとなく「ミキプルーン」に似ている。ミキプルーン同様、冷水に溶いたら飲み物になった。
不味くはないが一般化しない感じの味がする。

SUNRISE 厳選大粒プルーン種抜き 400g

SUNRISE 厳選大粒プルーン種抜き 400g

 

ミキプルーンは叔母の一人から何度かいただいたことがある。何やらコミュニティというか「講」じみた集会があって、定期購入や布教をしていたようだ。後になって「自宅でミキプルーンっぽいものを簡単に作る方法」をそのコミュニティで公開して、“上役”から怒られたと聞いた。
今回、自分が作ったこれが、叔母の広めた偽ミキプルーンに近いのではないだろうか。味は同じ、フードプロセッサーで滑らかにすればたぶん見た目も同じ。

ずいぶん昔に他界して、10年以上も会っていなかった人のことを今になって思い出してしまった。食べ物の記憶というのはそういう性質がある、と思う。

 

マルチのカリスマ: ミキプルーンの真実

マルチのカリスマ: ミキプルーンの真実

 

 

 

*1:ケロッグオールブラン。不味いのだが好きだ。

*2:嘘ですが。

*3:「麦茶」や「おはぎ」や「コンビニの肉まん」も謎らしい。

*4:卵も余らない。

映画「天気の子」とパンケーキ

天気の子

マイナーな頃から追いかけていたアーティストがメジャーになった経験はあるだろうか。ロックバンドでも絵描きでも役者でも、彼らが「みんな」に知れ渡る存在となった事は嬉しいのだけれど、マイナー時代にあった「味わい」が消え失せてしまいがっかりしたことは。
「あいつはもうシンガーソングライターじゃないよ、J-Popになっちまった」とライブハウス裏のバーやファミレスやWeb上のファン・コミュニティで嘆いたことは。
「確かに良かった、完璧だった。でも自分は彼に、ああいうものを望んでいた訳じゃないんだ」と語りたくなるような気持ちがわかるだろうか。
周囲の人達は僕を見て言う。「面倒くさいサブカル野郎だ」と。
今日はそういう話を書く。

作家/作者とは何か: テクスト・教室・サブカルチャー
 

 

 

https://www.instagram.com/p/B0FId_bAhNu/

 

新海誠監督が「君の名は。」で一躍時の人となった時に、僕はかなり失望した。映画は100%楽しめた。よくできていた、と思う。
でも彼が今まで延々と描いてきたエッセンス、作家性の核、あるいは臭み、クセ、苦み、そういうものはほとんど感じられなかった。劇場サイズのアニメで「これから失われるもの、もう手が届かなくなってしまったもの」をきちんと描ける事こそ、彼の諸作品の根底に流れているエッセンスだと自分は思っていた。
君の名は。』での減少量を考えると、そのエッセンスは次作でゼロになっているだろう、と予感してしまったのだ。残っていても、隠し味かアクセントに使われる程度だろう、と。プロの料理人が、苦みやクセを後付けで効かせてみるみたいに。
そして、夏休みか隔年かで定期的に「あの『君の名は。』の新海監督が描く感動の最新作!」が公開され、どれも100%楽しめるけれど魂までは揺さぶられない、そういう未来を予感した。
簡単に言うと、失望したのだ。

 



そして今作、『天気の子』だ。
大々的なキャンペーンがWebでもテレビでも行われている時点で嫌な予感は拭えない。
監督がインタビューで「『君の名は。』では“奇跡で全て丸く収めてハッピーエンド”にした。それが批判された事は承知しているし、自分でも理解できる。なので、新作ではきちんとその安易さに向き合おうと思う」と語っていた。
なるほどもしかしたら、と期待させる言葉である。
一般受けと、(僕が勝手に求める)作家性、それらを止揚する名作になるかもしれない、と思えたのだ。

 

結果として、インタビューでの言葉は嘘ではなかった。
きちんと、「奇跡の後」について向き合っていた。
小難しい表現を使わずに、前作同様の美しくてテンポの良い映像と音楽で楽しませるのは新海誠監督ならではの技だろう。
素晴らしかった、100%楽しめた。
一言で表現すると「エモい」。

万人に薦めることができる。どこが面白かったか、ネタバレOKなら延々と書ける*1

 

でもやはり、期待を上回る名作ではなかった。
若い2人がお互いを想い世界を改変する、いわゆる「セカイ系」の系譜としては「おそろしく高品質だが凡庸」だった。

この作品を観るために、1人で再び映画館に行くことは無いだろう。誰かに誘われたらもう1回行ってもいい。数年後にリバイバル上映会があっても行かない。Amazonか何かで配信されたら観るかもしれないけれど、気分次第だろう。
個人的な「2019年度 映画館で観た作品ランキング」では上位になるが、それだけだ。


君の名は。』とも違う、もちろん過去の諸作品とも違う地平を目指しているのはわかるが、先は遠いし十分ではない。


監督が“変節”した訳ではないと思う。
どちらかといえば、「メジャーな日本映画」を作るにあたって避けられない諸々が、特にこの監督の作風と合わさると、ひどく目についてしまうのだ。
ただでさえ、口当たりのいい、万人向けの映像が作れる人だ。昨今の劇場アニメに求められるあれこれを詰め込んだら、大変な事になってしまう。それはストーリーのわかりやすさや、毒の無さもそうだろうし、劇中の音楽も、それから映画世界に登場する小道具達もそうだ。

 

例えばタイアップ商品について。
今作では、飲み物の缶やお菓子のパッケージがいつも客席側に(読めるように)見えている。これがとても気になる。リアルな書き込みは雰囲気に合っているし、商品の選択も無理は無い。でもどうして、この印象的な場面で、全てのパッケージがきちんとこちらを向いているのだ。
名探偵コナン ○○の××」の賑やかなシーンじゃないのだから。

神は細部に…というのはこういう事なのだろう。
リアリティを求めてきちんと使用許可を得て登場させる「じゃがりこ」と、カルビーからの要求に応えた「じゃがりこ」は違う*2
テレビドラマの貧乏女子が全然貧乏に見えない、みたいなちぐはぐさが生じてしまうのも仕方がない。

 

 

それからこれは本当に「なんとなく」であり「良くも悪くもない話」なのだけれど、でも一応書いておく。
今作では、過去のアニメ映画で見たようなシーンが多かった気がする。新海監督の過去作によくある映像*3だけではなくて、他の有名な作品の、もっと言うと「アニメ映画あるある」な画面があちこちにあった。
これはもしかすると、僕達が、つまり目の肥えたアニメオタクが喜ぶ場面をたっぷり盛り込んでくれたのかもしれない。オタクの琴線に触れることは新海監督の得意技である。それに不自然だと思えるシーンはひとつも無かった。ただ何かしらの意図があって「琴線シーン」が連続していたのだとしたら、これは映画を見直す意味があるかもしれない。

それから、新海監督の作品はどれも場面転換が多くて気持ちよく話が進む。さらに、主人公達とその周辺が多く描かれる。
だからどうしても映画の中に書き込めない情報も出てくる。膨大な設定と、主人公達以外の思惑や事情が、作中では省かれてしまう。
結果として「小説版」が補足資料として役に立つ。小説を読んでみたら、また少し感想も違ってくるかもしれない。小説も監督が書いている。 

小説 天気の子 (角川文庫)

小説 天気の子 (角川文庫)

 
天気の子 (角川つばさ文庫)

天気の子 (角川つばさ文庫)

 

 

 

村上春樹氏は「ノルウェイの森」がベストセラーになった後、数年の間、海外に拠点を移した。そして今でも基本的に「日本のメジャーシーン」とは離れて作品を作り続けている。自分は彼の新刊が出るたびに真っ先に読むが、一度も失望していない。テーマも作風も変わるが、僕が求める“村上春樹らしさ”が、つまりはエッセンスは今も変わらない。

新海誠監督に「海外に行け」と言いたいわけではない。
でもこのままメジャーシーンに飲み込まれて、ごく普通の「大作映画を作るアニメ監督」になってしまったらつまらないと思う。

 

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

 

 

 

つまりこれは「面倒くさいサブカル野郎」の繰り言だ。
こういう文章ならば延々と書ける。なにしろ繰り言なので。

ジブリ以外のアニメーション映画がここまでメジャー・カルチャーになった時代だ。詮なき事なのかもしれない。
でもやっぱり望んでしまう。メジャーになるのは素晴らしい、それで失われるのは「マイナーらしさ」だけであって欲しいと。
そして新海誠監督は、メジャー作品でマイナー時代のエッセンス、臭み、苦み、そういうものを中心に据えることができる人だと今も期待している。村上春樹氏や庵野秀明監督がそうであるように。あるいは押井守監督のように。

 

繰り言抜きで言えば、びっくりする位に高品質な、良い劇場アニメ映画だった。来週からは夏休みの子供が多そうなので公開日に観たが、後悔するところはひとつもない。中盤までのお約束の連続まではとても楽しく、大転換の連続である終盤は本当に惹きこまれた。
しかし大昔からのファン*4としては「料金分は楽しめた」で済む話ではない。

ああ面倒くさい。

 

小説 天気の子 (角川文庫)

小説 天気の子 (角川文庫)

 

 

パンケーキ

高松市の郊外にショッピングモールがある。
そのすぐ脇に、どういうわけか「Sam's Kitchen」がある。ハワイの有名なチェーン店*5がどうしてこんなカラオケ・スナックか耳鼻科医院みたいな場所にあるのか。よくわからないけれど、きちんと美味しいハワイアン料理が食べられる。

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今日は久しぶりに、ホイップクリームが山盛りになったパンケーキを食べた。流行が終わったら急に見かけなくなってしまって悲しい。この種の「ばかみたいな食べ物」は、思いついた時にいつでも食べられるようにしておいて欲しい。阿呆も馬鹿も許容するのが社会の務めというものだ。

ホイップクリームとバター以外にも、メープルシロップと塩キャラメルシロップ*6が付く。
コーヒーはおかわり自由。店員さんは全然やる気がなくて、余計な気を遣わなくて済む。
暇な時間をのんびり過ごすにはぴったりの店だ。隣のショッピングモールのレストラン街よりよほど気が利いている。

これが今日の、遅めの昼ごはん。そしておやつでもあった。

 

CREA 7月号 (ひとりも楽しいハワイ。)

CREA 7月号 (ひとりも楽しいハワイ。)

 
ハワイのごはんとお菓子のレシピ (別冊すてきな奥さん)

ハワイのごはんとお菓子のレシピ (別冊すてきな奥さん)

 

お題「最近見た映画」

 

お題「今日のおやつ」

 

*1:RADWIMPSファンなら涙を流して喜ぶかもしれない。まるでPVのように、映像に合っていた。

*2:これは例え話です。劇中で「じゃがりこ」が登場した訳ではない。というか覚えていない。

*3:細長い建物の外階段、ぐるぐる廻るカメラ、ささやくような主人公のモノローグと、響き渡るメインテーマ曲。僕の大好物です。

*4:裏原宿のギャラリーで展示をしていた。偶然通りかかって「すごい人がいるものだ」と驚いた。

*5:ハワイへの渡航経験は無い。お土産でこの店のTシャツをいただいた事がある。僕には壊滅的に似合わなかった。なんというか、キャラが違うのだ。

*6:塩キャラメル!!これまた久しぶりだ。

パンケーキ(厚い)の日

自転車で郊外を探検していたらカフェというか喫茶店というか、とにかく看板にパンケーキと書かれた店を発見した。店名は「Fleur」という。

 

ちびくろ・さんぼ

ちびくろ・さんぼ

 

 

唐突に、そうだパンケーキを食べよう、と思った。
それまで全然そんな事を考えていなかった。家に帰ればオヤツも用意してあるし、まだ用事だって済んでいない。雨だって降りそう。でも食べたいのだ、パンケーキが。
凶悪事件後の警察発表で「ついかっとなって」という表現があるが、それに似ているのかもしれない。もう少しキレイな表現を選ぶのならば、一目惚れが近いのかも。
とにかく、ごく稀に、そういう瞬間があるのだ*1

 

冷静と情熱のあいだ Rosso (角川文庫)

冷静と情熱のあいだ Rosso (角川文庫)

 
冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫)

冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫)

 

 

パンケーキは好きだ。大好物と言っていい。
最近はあまり食べる機会が無かったけれど、「香川県パンケーキ情報」は自身のGoogleMapにプロットしてある。
外食のほとんどは、まず事前情報を元に日時を決めて訪れる。そういう意味でも、今日は本当に珍しい行動だった。

 

 

でこぼこホットケーキ (世界文化社のワンダー絵本)

でこぼこホットケーキ (世界文化社のワンダー絵本)

 

 

お店は店主1名でやっている、と看板に書かれていた。
パンケーキは分厚く、おそらく型に入れてオーブンで焼き上げるタイプだろう。なのでこれは、時間がかかる事を示している。

お客さんの少ない時間帯だったからか、気になるほど待たされる事なく、紅茶(アールグレイ)とパンケーキはテーブルに届いた。

 

https://www.instagram.com/p/BzLALnogt98/

 

表面がさくっとして、中はしっとりというか少し粘りが感じられる、面白い食感だった。
ボリュームがあって、添付のアイス(数種類から選べる)やバター、メープルシロップをそれぞれ組み合わせて食べても十分な量。パンケーキそのものはあっさりしていて、何かを付けるとちょうど美味しくなる。なので、この大きさは大正解である。

自転車散策の中継地点としても良い場所にある。
個性たっぷりのお洒落なこだわりのお店でもなく、かといって昔ながらの垢抜けない喫茶店でもない。気に入った人達が普段使いするにはぴったりの店だと思う。
そして自分もまた、近いうちに訪れたい。
良いパンケーキと良い紅茶、そして良いお店だった。

 

 

 

お題「今日の出来事」

お題「ひとりの時間の過ごし方」

*1:僕が幼児で、そしてイオンにいたら、寝転がって足をばたばたして「パンケーキたべたい!」と泣いていただろう。「今日たべたい、今食べたい!」と騒いでいたと思う。

ホットケーキ・室内干し・天冥の標

午前中、少しだけ職場に顔を出した。
仕事ともいえない小さな作業をする。近所に住んでいて、一人で身軽に動けて、もちろんその作業を理解している人間として、僕が適任だったのだ。お駄賃代わりに駐車場代は経費にしてもらう。いつもは自転車で行き来しているけれど、今日は雨のため車を使ったのだ。
せっかくなので有料駐車場の1時間分は街を散歩して過ごす。街で買って、車で持って帰らなければならないものを物色する(特に無かった)。

 

 

帰宅のために車に乗ったが、少し寄り道をする。近日中に行くと決めていた牟礼の喫茶店でおやつを食べる。職場とはずいぶん遠いが、外出したからにはどこかに寄りたい、せっかくの休日なのだから。
というわけで、地元の名店だという「アンデルセン」にまで行ってきた。

確かにここは良い店で、まだ1回しか訪れていなかったが、気に入っている。

今日の目的はホットケーキ。45分かかる、と言う*1
自分としては大歓迎、なにしろ今日はホットケーキの喫食だけではなく、読書も目的なのだ。

 

 

 

昨日からページを開いた「天冥の標」の最新刊、とても良い。
昨晩に3割を読破、このアンデルセンでも夢中になって読んだ。

もちろんコーヒーも、それからホットケーキも抜群に美味しかった。
型で焼くホットケーキ、味そのものは普通のそれとあまり変わらないはずだが、やはり嬉しくなってしまう。好物ってそういうもの。

この店のホットケーキはべたべたと甘くない。だからこそバターやシロップが活きる。量が多いから、バターやメイプルシロップの有無を色々と試せるのも良い。

 

和平フレイズ グリドリッチ厚焼きパンケーキプレート 1ヶ焼 GR-6912

和平フレイズ グリドリッチ厚焼きパンケーキプレート 1ヶ焼 GR-6912

 

 

しろくまちゃんのほっとけーき (こぐまちゃんえほん)

しろくまちゃんのほっとけーき (こぐまちゃんえほん)

 

 

夕方には読書を終えた。
いま、2回目の読み返し中。良い小説。年明けには続刊(最終刊)が出る。もう予約してある。

 

 

今日は午前中に家を出る時に、シーツやまくらカバーの洗濯をしたのだった。部屋着や厚手の服も洗った。
外出直前に雨が降り始めたので夕方になっても乾かない。
いま家にある器具と機器*2を駆使して部屋干し体制を構築、寝る前には乾燥を終了した。

引っ越しの時には布団カバー類を1つずつしか用意しなかった。高松で買えばいいよね、と考えて、そのまま忘れてしまっていた*3。それほど高いものではないけれど、喫緊の課題ではないので忘れてしまう。カバーを買い足しても洗濯物が乾かないけれど、とりあえず寝ることはできる。というわけで近いうちに買う。

 

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

 

 

ベッドがある部屋にはソファもこたつも無い。1人暮らしの1Kにしては広大な空間が拡がっている。工作や家事の際にとても役立つ。質感は嫌いな木目調クッションフロアだけれど、きちんと掃除をすれば床に様々なものを(一時的に)直置き可能なことも便利。畳の部屋のように使える。

さて寝よう。その前に少し料理の仕込みをしたい。
来週は仕事もあるけれど週末には帰省する。食材の在庫管理をきちんとしなければ。

 

*1:もちろん45分もかからない。得てして長めに言うものなのだ。

*2:部屋干しアルミ台、半円形のピンチハンガー、デロンギのオイルヒーター、エアコン、送風機能付き空気清浄機

*3:夏布団用のものは使えるが、雰囲気が合わないし、そもそも奥に収納されていて出すのが面倒。

リコッタパンケーキとかパンとか。

気がつけば延々と引っ越しの片付けをしていそうな土曜日。それもつまらないので自転車で街まで行ってきた。
まずは新しい勤め先までゆっくり走ってみる。20分くらい。天気が良ければ自転車通勤するつもり。坂もなく走りやすい道だった。

駅前の商店街にあるカフェに入ってみる。
「Loudes」というお店。

リコッタパンケーキが美味しいらしい。

経験上、リコッタパンケーキはねとねとして特別に好きではなかったのだけれど、この店のものはとても良かった。はちみつ入りのバターと生クリーム、パストラミそれぞれにとても合う。

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店全体がちょっと面白い青色で統一されていた。
飾り付けも含めて、フランス愛が溢れている。
デコラティブなのに高級ではない、日本には無いセンスの色使いなのにどこか安っぽいところは海外の観光地らしさもあって素敵だ。外国のある雰囲気が好きでも、日本に導入するとどこかできちんとしてしまう。こういうチープシックさはバランスが難しいのだ。

ともあれ高松市に住み始めて始めての“カフェごはん”だった。
県外の友人にまでは勧めないけれど、ひとりでたまに行ってみたくなるお店がひとつ見つけられた。こういう蓄積がこれからの独り暮らしを豊かにする。

蓄積といえば、アパートに戻る時に寄り道したら、なかなか美味しいパン屋さんに遭遇した。いま手元にショップカードが無く、店の名前を失念したので店名は書けない。
アンティークというかジャンクな古道具を上手く使ったお店。なんとなく、本当に根拠は無いのだけれど、この店には何度も通いそうな気がする。試しに買ったパンがとても良かった、というだけではない何か惹かれるものがあった。
しかし場所がよくわからない。土地勘が無いまま彷徨っている時に見つけたお店。方角と距離はわかるので、次は迷わず辿り着きたい。
こうして、少しずつ街と馴染んでいく。

 

先ほど「粗雑スープ煮」を作った。
タマネギや白菜や長ネギを適当に切って、豚肉と共に煮たもの。真空保温調理鍋があると実に簡単。味付けは中華スープの素を少しと、塩とフェンネルシード。チューブ入りの生姜とニンニクも入れた。
冷蔵庫の野菜を一掃するために作る、ただ煮ただけの料理。タマネギなんて半分に切っただけだ。長時間の加熱で失われる栄養については考えない。ただ簡単に作り、簡単に食べる料理なのだから。
1人だからこそ、の粗雑料理。でもこういう食べ物がわりと好きなのだ。

 

お題「今日のおやつ」

 

 

 

さようなら「つきさむ」ありがとう「つきさむ」。

https://www.instagram.com/p/BjgqmwGhL7d/

久しぶりに訪れた「喫茶 つきさむ」が閉店していた。

今年中に店を閉めることは聞いていた。
噂では長野県に移るらしい。山が好きな店主で、きっと長野の暮らしも合うだろう。例えば、先日訪れた松本市、あそこは街のあちこちが「つきさむ」的だと思う。

しかし知ってはいたが*1、つまり覚悟はしていたが、最後にもう一度だけ、あのお店で食事あるいはコーヒーの時間を過ごしたかった。普段は会話のひとつもしなかったけれど、最後とわかっていたら、お礼を伝えたかった。
この数週間は多忙で、なかなか行けないまま心のどこかで気になっていたから、なおさら残念。

tsukisamu6.exblog.jp

 

大好きなお店、というのは片想いに似ている。
当たり前だが、全てが一方的なのだ。お礼が言いたい、なんて身勝手の限り。最近あまり行けなかったこともまたこちらの都合。
大好きならばお店に行き、楽しむ。それ以外に無い。
距離感が難しい。


今日は映画「GODZILLA 決戦機動増殖都市」を観たのだけれど、どう考えても気分に合っていなかった*2

 

 

というわけで、一方的にお礼を言いたい。
言えなかった言葉、伝えられなかった感謝なんて今まで生きていていくらでもあるけれど、今日またそういう行き場のない何かがひとつ増えてしまった。

 

満月から3番目の夜

満月から3番目の夜

 

 

でも、それでも、だからこそ「つきさむ」の思い出は掛け値無しで僕の糧になっている。
もはや何年間通ったのかもわからない。
何杯のコーヒーを飲んだのか。
参考にした料理や真似をしたい空気感、そういう影響だって、明確に説明なんてできやしない。

そもそも店主さんと長い話をしたこともなく、あの店で仲間が出来たり、人生のイベントがあったわけでもない。ただ美味しいごはんを食べて、あるいは趣味の良いスイーツとコーヒーを楽しみ、多くの場合はひとりで読書をしていた。
せいぜい、同じ静岡県中部で知り合いができた時に「あの北街道沿いにある『つきさむ』は素晴らしい」とお互いの“お気に入り”だったことを盛り上がるくらい。それじゃあみんなで行きましょうか、とは誰も言わない。それぞれが親しい人と、またはひとりで楽しむ、そんなお店だった。
つまり、ひっそりと個人的に大切なお店。

唯一無二のお店が無くなり、今は静かにその不在を噛みしめている。
あの店の思い出は確実に僕の人生の血肉になっている。不在感をそのまま受け入れて、誰にも届かない感謝を伝えたい。
僕はもう若者ではない。だから、どうにもならない感傷を抱えることも、その不在感や後悔もまた宝物であることも、よくわかる。それでもやっぱり、寂しい。

 

本当に素晴らしいお店でした。
一生忘れない。一生、尊敬する。
名前も知らない店主さんに、掛け値の無い感謝を。
ありがとうございました。美味しかったし、居心地が良かったです。

お題「思い出の味」

お題「コーヒー」

お題「もう一度行きたい場所」

お題「今日の出来事」

 

ポケットに静岡百景

ポケットに静岡百景

 
静岡百景

静岡百景

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:いまブログを確認した。5月6日が最終日だった。たまたま僕の私生活が(仕事のせいで)滅茶苦茶で、なんというか巡り合わせが悪い。

*2:でも楽しみました。65点。

携帯用ラムレーズンの作成

簡易かつ美味しい冬の味覚、携帯用ラムレーズンを作った。
これはかつて(10年以上前に)年上の女友達から教わったもの。
今で言う「山ガール」なのだろう、登山の際の行動食として自作し、ただ美味しいという理由で山以外の場所でも携帯し食べていた。
僕達は専ら街の公園で遭遇することが多く(友人の友人、くらいの間柄だが、立ち話は弾んだ)その時にもよく摘まんでいたのを覚えている。なんとなく気になるが記憶の底に沈んでいた、そんな種類の甘い食べ物。

 

ロッテ ラミー 2本入×10個

ロッテ ラミー 2本入×10個

 

 

作るのは簡単。
市販のレーズン、これはジップロック的なジッパーが付いているものが便利。理由は後述。
可能ならば食用油が使われていないものを。しかし僕は、このラムレーズンに限っていえばあまり気にしない。雑に作るほうが“らしい”から。
数種類が混ざったミックス・レーズンも良い感じ。
まあ、安物でいいです。

 

 

それからもちろんラム酒。風味が強いものがあれば最高。でもサントリーの製菓用小瓶(ガラス製で持ち手が付いていて、エプロンを着用したウサギが描かれているアレ)でも大丈夫。上等な食べ物ではないから、それほどこだわる必要は無い。ダークラムであること、だけ守ればいい。

 

あれば黒糖。ラムの風味を強める。沖縄土産のものがひとかけらあれば加える、程度の役割。保存性も増すのではないか。
僕は使わないことが多い。ラム酒を少なめにして、がつんと行動食らしくしたければ欲しいかもしれない。

スパイス。シナモンやカルダモンを少々。これも、僕はチャイ用に常備している(もっと言うと、混ぜていつでも使えるようにしてある)から使うだけで、ほとんど隠し味。無くても大丈夫だろう。

 

レーズンの袋を開封し、ラム酒をじゃぶっと注ぎ入れ、黒糖を放り込み、スパイスを少しだけ振り入れる。
そして密封する。
この時、レーズンの包装をそのまま使うと衛生上の都合が良いし、洗い物が不要となる。
半日でラム酒はレーズンに吸われて、最初の汁気は無くなる。食べてみて、追加のお酒を加えるか、完成とするか決める。
数日置くと味が馴染んで良い、と書くとそれっぽいが、実は僕にはよくわからない。たぶん良いのだと思う。

丁寧に作るのならば、まずレーズンをお湯で洗って油を落とし、日陰干ししてから同様に作る。しかし繰り返すが、そういう種類の食べ物でも無い気がするのだ。だから、開封してお酒を入れて放置して、完成。
摘まんで食べるには柔らかすぎる場合は、袋から出して少し干せば良いと思う。自分の場合は、あまりラム酒を加えないから、柔らかめの干しブドウといった見た目になる。
冷蔵か、涼しい場所で長く保管できる。冬ならそう簡単には腐らない…とは思うけれど、心配ならば「冷暗所に保管」レベルの管理を推奨する。

 

 

僕にこの携帯用ラムレーズンを教えてくれた人は、街を散策しながら食べていたが、繁華街でお酒を含むつぶつぶを食べ続けるのは、はっきり言って危うい感じである。紙袋に隠したお酒をラッパ飲みする行為を連想する。

僕の場合、専ら家で消費する。
寝る前に小腹が空いた時、数粒をじっくり味わって食べると、それなりの満足感がある。お酒に弱いから、それだけで少し酔った感じもする。
チョコレートにも合うし、そのまま摘まむのならばコーヒーにもぴったりの味。
紅茶に入れてもいい。冬向けの雰囲気になる。
キャンプに持っていくと、夜に使い途がある。ちょっと気の利いた甘いもの、例えば火で炙ったビスケットの類に添えると美味しい。

スタンダードな使い途としては、アイスクリームか。間違い無く美味しい。それから、ホットケーキには、生地に混ぜても、焼いたあとに添えてもいい。

似たような行動食は、大昔にバックパッカーの出てくる映画で見た記憶がある。アヲハタのクリスマスプリザーブみたいに色々なものが入っていて、黒パンみたいなものに載せて、携帯オーブンで焚いていた。
キャンディバー以前のカロリー源、なのかもしれない。

 

 

その年上の女友達は今はもう逢えない、というわけではなくて、年に数回は遭遇する。
最近はこの静岡県中部でも週末にナチュラル系野外イベント(いわゆる日本風マルシェやクラフトフェア)が開かれていて、僕はコーヒーや焼き菓子やジャムを目的に参加する。そんなイベント会場で出会うことがあるのだった。
彼女は僕よりももう少しハードなエリア、つまりフード左翼というのかロハスというのか、イベントの思想を体現する反原発やヒーリングや酵素ナントカのブースに立っていたりする。おそらく“古参”のヒッピー文化継承者として、それなりに顔が広いのだと想像する。冬でも革サンダル、でも“冷え取り”のためにヤクの毛糸の靴下。

自分は時に心苦しくなる。手作りで素朴な世界の、美味しいところだけ摘まみ食いしているのではないか、と考えてしまう。
自分で行動食・保存食的なものを作り食べるのならば、もう少し“あっち側”の生活をしなければ駄目なのではないだろうか。庭で鶏を飼い、満月の夜にヨガをして、頭痛薬ではなくハーブ茶を飲む暮らし。でも、インディアンジュエリーや絞り染めのTシャツがまるで似合わないのです。試したことは無いのだが、でも無理。
なかなか難しいものだと思う。摘まみ食い左翼と呼んでくれてかまわない。

 

 

 

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