自転車のチェーンに針金が噛み込んだ。
今朝、海沿いの道を走っていた時に何かを足に引っ掛けた感触があった。それが釣具か漁具の、極細の金属ワイヤーだったのだ。
こんなことがあるのか、と驚いた。しかし驚いていても仕方がないから、新品を買うことにする。
取り除こうと試みているうちに、チェーンがざりざりと音を立てはじめたから、自転車は使わないことにする。
となると車が早いけれど、運動不足解消で徒歩を選択。車なら20分〜30分の距離にある自転車専門店を目指す。
ちょうど、小学生の頃の「学区」を横断した場所が目的地となる。
あの頃は学区こそが世界の果てだった。学区および、学区外の歯医者と耳鼻科と総合病院*1そしてバスで行くスイミングスクールが、日常の行動範囲。
大人になってから、徒歩で行くのは初めてかもしれない。
子供の頃に慣れ親しんだ街は、大きく様変わりしていた。
商店街は消えた。
文具店も、よくわからない倉庫になっていた。
「おばけ屋敷」と恐れられていた家は、ただの手入れが行き届いていない古びた建売住宅で、なんと今も誰かが住んでいる。
全体に不景気かつ衰退している。
メインの遊び場であった大きな公園は、市の公園課により草刈りが行われるという。昔は、子供がたくさんいたから、草なんて生えなかった。
興味深い時間ではあった。
ただし、復路はいささか飽きてくる。目線も速度も違うとはいえ、家の周りと同じような風景が続くのだから仕方がない。四国や沖縄の裏通りを歩くのとはわけが違う。
それに衰退した住宅街というのは、買い物ができない。
コンビニもスーパーマーケットも街の外を通る幹線道路沿いにある。
町で開いているのは美容院と雑貨屋*2くらい。テレビの紀行番組ならば、焼き立ての団子を売る小さな和菓子屋などがあるけれど、僕のふるさとである元・新興住宅地にはそんな気の利いた場所は皆無。
だから仕方がなく、家まで歩いて帰って、コーヒーを淹れて飲んだ。
チェーンの交換は、とても簡単だった。
昔、工場の機械をメンテナンスするときにチェーンはよく扱っていたので、特に迷うことはない。型番や長さ、自転車ならではのコツについてはインターネットが頼りになる。そもそも、機械として見ると、自転車の駆動部分は随分と遊びも大きく、かかるチ力も弱く、回転速度も遅い。そして異常を感じたら、自分ですぐに停められる。油断するのも良くないけれど、正直にいえば「楽勝」である。