先日の和歌山旅行について書く。
この旅の第一目的地がここ、アドベンチャーワールド。
簡単に言えば、パンダとサイを見たかったのだった。
近畿最大級の動物園にして海獣や鳥の展示もある、シーパラダイス的な要素もある、そしてジャイアントパンダの飼育では日本一。
移動距離を考えると、本来は四国在住時に行くべき場所だった。でも四国暮らしで暇ができた時には、もう移動制限があって訪れることができなかったのだ。
そして、新型コロナ禍がいくぶん下火になり、かつ平日、気候もまあまあ良い、といった状況を狙って行くことに決めたのが先々週。昨日までの連休騒ぎを思い返すに、ぎりぎりのタイミングだったのかもしれない。
しかしアドベンチャーワールド、自分にとっては想定外のことが多すぎた。
広いことは覚悟していた。
でも、こんなに広くて、様々な設備や展示があるとは知らなかった。前日に公式Webサイトを見て途方に暮れたくらいに広い。
おそらくは、四国の水族館と動物園が束になってかかっても、砥部動物園がかろうじて生き残る以外は「瞬殺」だろう。少年バトル漫画で新シリーズが始まると、過去の強敵たちがまとめて倒されてしまう(そうやって新シリーズを盛り上げる)。ああいうインフレーションが発生しているように見える。
世間一般の、そこそこの規模の動物園、サファリパーク、水族館、シーパラダイスをそれぞれ100とした場合、アドベンチャーワールドは「動物園170、サファリパーク80、水族館20、シーパラダイス100」のパワーがある。さらに小さな子供ならそれだけで満足できる遊園地や公園も付属している。
それぞれの施設も、それなりに綺麗だ。
客層や宣伝具合を見ると、ここは近畿における「東京ディズニーリゾート」に近い立ち位置ではないか。つまり、子連れファミリーの旅行や、中高生のデートでの定番である。
生体を使った総合レジャー施設は、少なくともこの規模のものは、僕は他に知らない。
2日通しのチケットがある理由も、訪れて理解できた。
というか、ディズニーランドと同じく、「全て見る」ことが目的ではないのだ*1。
僕は動物がいる展示は全て足を運んだが、ひたすら暑い陽気の下で、それはそれは酷い目に遭った。今も実は、片膝の調子がおかしい。
アドベンチャーワールド全体の雰囲気は、ずいぶんと安っぽい。
園内は、テーマソングが延々と流れている。しかも、テーマソングだけで何種類もある。曲の雰囲気からして、歴代のテーマソングを流しているのだと推測する。これがもう明るくて前向き過ぎて、聞いていて疲れる*2。悪鬼魍魎の類は、この音楽だけで近寄れない。
建物は全体として「新しくできたサービスエリア」っぽい。
つまり、庶民風のメルヘンである。ディズニーランドやユニバーサルスタジオほど、外装・内装の品質管理は徹底していない。
そして、パンダ・グッズの専門店から数メートルのところにサイの剥製があったり、UFOキャッチャーとトイレの間を歩いていくと骨や生物保護の展示があるなど、ずいぶん雑なレイアウトも目立つ。
ショッピング・モールのフードコートみたいな場所に隣接して海獣の展示があって、キャラメルポップコーンの甘い匂いと水槽の生臭さを交互に嗅ぐこともできる。
でも、観光地によくある、衰退して雑然とした動物園や水族館や遊園地の雰囲気は無い。
遊園地としては小さな子供向けのものが多い様子。
動物の展示なども、子供目線に作られている感じがした。
全体としてはきちんとお金をかけた観光施設に見える。しかし展示毎に質のばらつきは目立っている。
シロクマは薄汚れたガラスの向こう側で神経質な反復運動を繰り返している。いくつかの水槽は結露水が床を濡らしている。でも、イルカショーは大型モニターと音響を駆使した立派なものだった*3。
逆に、わりと無造作に飼われている動物がサファリパーク・エリアで元気いっぱいだったことは印象に残っている。
カバもサイも、これほどたくさん、そしてよく動いている場所は他に知らない。
ジャイアントパンダを目当てにしたはずが、コビトカバやムフロンのほうが印象に残っているくらいだ。
いや、ジャイアントパンダも実に可愛くて、見てよかったのだけれど、彼らは寝てばかりいるので。
パンダといえば、レッサーパンダもいた。
しかし入口近くの(サービスエリア的な)お土産コーナーの一角、「ようこそアドベンチャーワールドへ。まずこの部屋で概要を知りましょう」みたいな、多くの人が素通りするような小部屋にいた。
総じて「他の動物園では主役級の奴らが雑魚キャラとしてそのへんにいる」「特別に宣伝していない『その他大勢』の連中が元気いっぱい」だった。
上述の少年バトル漫画の例えだと、劇場版アニメに出てきそうな感じ*4。
水族館に限れば、こういう「他では主役級だが、ここでは端役」はあるのだが、それは供給地が近いことが前提になる。例えば沖縄の美ら海水族館などがそうだろう。
ここまで大きな、しかも商業色がしっかり出ている施設で、動物もたっぷり飼っている場所は本当に珍しい。
イルカショーや遊園地でがんがん稼いで、パンダや他の動物たちをしっかり飼育するスタイルなのかもしれない。
旅としては、ここは本当に疲れた。
坂は多い。人もそこそこ多い。とにかく歩かせる、並ばせる。
サファリパークではバスによる周遊もできるし、ベンチやテーブルはそこかしこにある。イルカショーその他の座るチャンスも多い。でも昼前から夕方まで過ごせば、ふくらはぎがパンパンになる。
サファリパーク・エリアはバスだけでは物足りなくて歩いた。距離は大したことはなくとも、これもなかなか大変。やはり「全部巡ろう」ではなくて、興味のあるところ以外は流し見ていく位が良いのだろう。
余談だが、ここは駐車料金が高い。
入場料が4800円くらい(詳細忘れた)で駐車料金が1200円/日。田舎の動物園・水族館としては日本一ではないだろうか。一人旅にはいささか割高。しかも山の上にあって、宿から自転車というのも難しい*5。
幸いなことに、ホテルから送迎バスが出ていたので利用させてもらった。
駐車料金も希少動物の飼育と繁殖に役立っていると考えるしかないだろう。
大満足、でも決して好みの「動物園・水族館」ではない。
なにしろここは総合レジャー施設。僕のための場所ではないのだ。
でも、そんな場所が、日本最大のジャイアントパンダ飼育施設であり、他にも絶滅危惧種をたくさん育てていて、しかも高品質。
存分に楽しみながら「不思議だな。見たことないな」と考えていた。その日の朝に「京都大学付属白浜水族館」に行っていたので、余計にギャップがあった。
でも繰り返すけれど大満足。行けて良かった。