昨日行った観音寺市、食べたものについてはもう書いた。
今日は行った場所について書く。
銭形砂絵
有明浜という景勝地に銭形砂絵なるものが存在している事は知っていた。正確には、砂浜に巨大な寛永通宝のかたちの「砂絵」がある、とだけ知っていた。
香川県のあちこちにそれを模したデザインがある。屋島の水族館には寛永通宝型の水槽でゼニガタアザラシが泳いでいるし、土産菓子にも銭のかたちのものがある。
しかしそれだけだ。興味もないし、深く調べることもなく今に至っていた。
とりあえず観音寺市に行くと決めた時、行きたいお店の近くにこの有明浜があることに気づいた。ならば寄る。四国に住んだからには一度は押さえておくべきメジャースポットのような気もするし。
行ってみたら、なかなかに良い場所だった。
観光地とはいえ、人は少ない。地元のご婦人が数人で散歩、あるいは老人と中年の女性2人、その程度。とても静か。
もっと“地方の観光地”らしく、有料駐車場があって誘導するおじさんがいて演歌か古いJ-Popが流れている場所だと思っていた。だから最初は目の前を通り過ぎてしまったくらいだ。昔は立派な観光地だったようだが今は市民の憩いの場、かもしれない。
銭形砂絵は見て特別に感動するようなものではなかった。「なるほど。Google Mapの衛星画像と同じだな」と思ったくらいだ。
意外と大きいが、京都の庭園のような緊張感もなく、圧倒されるほど巨大でもない。高いところ(隣接した低山に展望台がある)から見ると立派だが、近くでは高さのせいもあって全貌が見づらいのだ。
「視察に来た殿様を喜ばせるために近隣住民が作った」という紹介文があちこちに掲げてあったが、それも疑わしい*1。砂絵よりも、周囲の松林のほうが見応えがあった。
素敵な公園の、素敵な要素のひとつが銭形砂絵、それでいいと思う。
たぶん四国でいちばん物哀しい檻がここにはある。
ニホンザルが1匹だけいる古い檻*2と、孔雀が何羽かいる、やはり古い檻。
孔雀の檻には、ハートマークが刻まれた南京錠が2つだけ付けられていて、不思議な凄味がある。錠を付けた2人の名前はとうに消えているところも素敵だ。ブームに乗って「みんなと同じ」ところに付けるより好感が持てる。呪術かくあるべし。
公園の端が有明浜。
見た感じ、だだっ広い砂浜が広がるだけ。季節のせいもあって、とてもとても寂しい雰囲気。こういう、静かで誰も居なくて寂しい場所で、魔法瓶に入れたコーヒーを飲みたかったのだ。我ながら変な動機だが、しかしそのつもりで家からコーヒーを持ってきたので、この寂しい風景は個人的には“あたり”だった。
有明浜から少し歩いたところには、古い公営住宅のような場所がある。なぜか敷地を区切る壁がレンガ積み。なんだろうここは、と探検していたら煉瓦会社の社宅用地と判明。
ここも本当に静かで、人の姿が無い。でも生活用品は見えるし、花は綺麗に咲いている。「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の「世界の終わり編」に出てきそうな場所だった。周囲には日帰り温泉施設や新しい住宅地もあるので、そのコントラストも印象に残っている。

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豊稔池
ホウネンエビが好きだから、というわけではないけれどここは行ってみたかった。
四国といえば水不足、水不足といえば溜池。とにかく水さえあれば、ということで日本の近代化と共に計画された石積みのダムだ。昭和の初期に完成し、今も修復しつつ使われている。
コンクリート積みとは違う、遺跡や西洋の城みたいな迫力がある。観音寺の町からは車があれば20分程度で到着する。ダムの麓、目の前まで車で行けるのだ。
平日の午後ということもあり、自分以外は誰もいない。
ダムには石段が付いていて、吐水口の前まで入ることができる。咳をすると変な風に響いて、なんだか夢の中みたいな不思議な気分。心がどんどん静まっていく。
格好良く作った故の形ではなくて、必要な形にしたら格好良くなった、そういう建造物。
秋深まる今の季節に、暖かい格好で行ったのは正解だった。溜り水もあるし草木が深い場所だから、夏は虫や蛇が多そう。
ダムの下側は暗く静か、でもダムを登ると明るいダム湖が広がる。その対比も素晴らしかった。
観光ともお勉強とも違う、ただ良い風景を眺めていたい時に行くべき場所。
昼前に出発して夕飯前に帰宅した、極めて短い、でも個人的には“旅”の数時間は、こんな感じ。
そして今日は、ひたすら家でぐだぐだして、家事を少し行い、読書は捗り、夕方に「これじゃだめだ」と外に出たら買物で失敗した、穏やかな土曜日だった。明日はがんばる。今日はがんばらなかった。

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