愛媛県立長浜高校「長校水族館」

愛媛県の高校に「水族館部」があるという。
また、その高校では授業(必修および選択)で魚の飼育や研究を行っているとも聞く。

そして毎月第三土曜日に「長校水族館」という公開イベントをする。
面白そうなので行ってきた。

長浜、香川県からは意外と近かった。
高速道路を西に走っていくと、途中で山の形が変わる。そして柑橘類が植えられた斜面が見えてくる。看板に「坊ちゃん」の文字が目立つようになったら、そこは愛媛県
松山を過ぎてもうしばらく高速道路(1車線だった)を進み、あとは海沿いの道を走れば到着する。

この海沿いの国道はとても気持ちが良い。
今日はどんよりと曇り、遠く西には台風のような雲も見えていたけれど、瀬戸内の島々と、もしかしたら本州(広島県?)も見ることができる。山側には一両編成のかわいい汽車が走る。観光地にしては落ち着いた風景が延々と続く。静岡県民なら「西伊豆」を思い出していただきたい。西伊豆をさらに素朴にしたような土地だ。

長浜の街もまた、とても静かで、落ち着いている。
こぢんまりとした漁村に、材木等の出荷用の港が後付けされたような土地だった。昔は栄えたのだろう、でも今はまるで離島のようにひっそりとしている。
名物に「長浜ちゃんぽん」があるらしいが、今日の午後に開いているお店は見つけることができなかった。地元の人に聞いたところ「松山方面に行くのが確実」とのこと。

 

そんな土地の高校だから、学校自体、規模はさほど大きくない。
プールや部活動用の建物は半ば廃墟みたいになっている。グラウンドの隅には不要になった机や道具類が積まれていて、全体的に寂しい感じ。

でも「長校水族館」のイベントはとても盛況だった。
手作りの表示や要領の悪い駐車場の案内は、いかにも高校生の仕事だ*1。そういう部分は文化祭っぽい。
でもなにしろ月例行事だから、「祭の間は何が何でも楽しんでやる」みたいな“ハレの日”な感じはしない。運動部でいうところの、他校との練習試合くらいの緊張感ではないだろうか。

 

しかし歴史があるイベントであり、主体である水族館部のレベルは相応に高い。来館者(?)を楽しませる工夫が山盛りで、ちびっ子から、生物や水産に興味がある大人まで飽きさせない。

まあ高校生のセンスだから、どうしても“がちゃがちゃ”している。J-Popが必要以上の大音量で流されているし、真面目な発表展示の横に寄せ書きやら飾り付けが添えられている。

だからこそ面白い。
今どき、綺麗なだけの水槽ならば、歯医者の待合室にだってある。高校生のマニアなら、1つの水槽を完璧に仕上げることはできる。
でも水族館部(素敵な部活だ!)とそれ以外の仲間達、そして学校の大人達が一丸となって作り上げた水族館は、小綺麗ではないけれど唯一無二の場所になっていた。水の中の生き物を見る愉しみ、学ぶことの面白さがガンガン伝わる。

いいなあ、と何度も思った。
僕は高校時代、生物部に所属していた*2。文化祭では頑張ったけれど、ほとんどの文化部は、これだけの頻度で校外の不特定多数の人間と関わることはまず無いだろう*3。水槽を眺めていると、積極的に説明をしてくれる生徒もいる。自分達の成果を外の人に見てもらうこと、その楽しさを知っているのだ。

この水族館活動、そもそもは地元にあった(四国初の)小さな水族館が閉館になった事がきっかけだったという。「長浜の水族館の灯を消してはならない」と頑張った取り組みのひとつが、今こうして全国に知られるイベントになったのだ。

ちなみに僕はどの学校の文化祭に行っても「ひょっとして、卒業生の方ですか?」と言われる。今日も聞かれた。

 

クマノミの繁殖なんて、一昔前は大きな水族館で独立した展示が行われていた。そういう難しい事を成し遂げているのがこの学校なのだ。

中庭にはいくつかの生け簀が置かれていた。
ハマチの輪くぐりショーが有名。今日もショーの時間には沢山の人が詰めかけて、ハマチやコブダイやサメの輪くぐりを楽しんでいた。

ちなみに今月が三年生部員にとって最後のハマチショーとのこと。別にしんみりもしていないし、浮ついてもいない。今どきの高校生なのだからイベントではウェイウェイしている子がいそうなものだが、全体的に(文化部的に)おとなしい。
老人にもちびっ子にも、そして県外から訪れたおっさんにも、とにかく親切にしてくれるのだ。

これで入場無料はちょっと申し訳無い。募金箱に少しだけだが寄付をしてきた。家庭科室では飲み物や焼き菓子の販売もしていたが、もう少し高くしても良い気がする。

 

水族館ぴあ(2019)全国版

水族館ぴあ(2019)全国版

 

 

 

水族館の後は、長浜の街を自転車で散策した。
有名な可動橋の近くに無料の観光用駐車場がある。

久しぶりにSTRIDAに乗った*4
たぶん1ヶ月ぶりくらいに乗ったのだが、こんなにクセがあるヘンテコな自転車だったのかと驚いた。1分も走れば慣れたが、それでもタイレルFXに比べるとスピードも出ないし安定性も悪い。よくもまあ、今までこんなヘンテコ自転車で瀬戸内の島々や東京の街を走って平気だったものだ。

 

長浜の街は上述の如くひっそりとしていた。
小さなスーパーマーケットで買い物をしてきた。それから和菓子屋さんで、名物の「志ぐれ」を買った。
食事は天丼を食べた。「ファミリーレストラン」を名乗る、和食屋さんと中華料理屋さんと軽食屋さんを兼ねた喫茶店みたいなお店だった。
本当はもっと名物らしいものを食べたかった。でも水族館に長居したので、どのお店も閉まっていた。
かつて旅慣れた友達が言っていた。港町では天丼が間違い無い、と。
確かにその通りで、だいたいどの土地でも海が近ければ天丼に外れが無い。そして僕は天丼が好物だ。だから今日も満足した。

 

 

夕方には帰宅できた。
朝からきちんと計画を立てていれば、松山市にも行けたかもしれない。しかし松山に行くとなると、それだけで1日は欲しい。だから今日は、長浜のみを楽しむことにした。

 

いつ雨が降るのか心配になる曇天だった。でも日差しに焼かれることもなく(暑かったけれど)自転車散策ができた。

長校水族館、良いイベントだった。
また行きたいくらいに気に入っている。日本でいちばん小さくて、日本でいちばん親密な水族館(開館日は1ヶ月に1回)。

 

ところでこの水族館というか高校を舞台にした漫画がある。学内に貼り紙があった。
気になったのでKindleで買ってみた。まだ数ページしか見ていないが、ほんわかした綺麗な絵が好感触。自分が見た風景が絵になっているのはちょっと不思議な感じだ。

 

 

さらに 別の本もある。

長浜高校水族館部!

長浜高校水族館部!

 

 

お題「もう一度行きたい場所」

お題「今日の出来事」

 

*1:車の運転経験が無い子供に誘導員を任せるのなら、もう少し指導が要るのではないか。たぶん下っ端の1年生が担っていたけれど、ちょっと可哀想だった。

*2:部長だった。近所の熱帯魚店からアロワナの稚魚を仕入れ、大きく育ててから買い取ってもらうという事業により、独立採算を達成した。

*3:例外はいくつかある。例えば駅前で募金を声を揃えて募金を呼びかけている子達がいる。あれはちょっと苦手だ。生徒達がどこまでその活動を理解しているのか、気になるところではある。なにしろ定型文を読むだけなので、こちらも共感しづらい。

*4:日常使いしているタイレルFXは家で留守番。STRIDAはトランクに綺麗に納まるが、タイレルFXは少し手間がかかるし、後部座席に置くことになる。なので最近は、STRIDAを車載用としている。

t_ka:diaryは、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。