高松市の仏生山にあるお店、TOYTOYTOYの企画によるイベント、「またつまらぬ物を作ってしまった」に行ってきた。
内容は文章で書くよりも、サイトやSNSを見たほうが早いだろう。
自分は「デイリーポータルZ」のライターでもある乙幡啓子さん目当てに参加したのだけれど、もちろん他の人達も面白い。
雰囲気としては、深夜ラジオの投稿*1から続く一般投稿者とクリエイターorアーティストがお互いにゆるさを共有する、あの世界が近い。「VOW 街のヘンなモノ」とか、それからもちろん「デイリーポータルZ」もそうだ。
同じ一般人とアーティストの絡みでも、お笑い芸人のそれとは全然違う。ゆるくおかしく、トークショーというよりも雑談で進んでいく。
古い言い方だと「ヘタウマ」が尊ばれるわけだ。
アートよりも工作、でもいわゆるクラフトフェア的なものとも違う。ノリで作る面白トンチキ手工芸、といった感じ。
登壇するプロの4人とは別に、一般の人達も「つまらぬ物」を作って発表する。彼らの多くは他県からの“常連”さんだ。この辺りも一般人参加型メディアっぽい。
もちろん一般人の「つまらぬ物」の中には、普段どこかで見かけたらスルーするような作品もある。街の面白おじさんが庭から外に向けて飾るような手作りセンスの品も登場する。登壇者の作品はおそろしく雑なものもあるけれど(香川入りしてから“ことでん=琴平電鉄”をテーマに作るので)もっとぐだぐだ、でもきちんと見どころは押さえてあって面白い。一般の人の品は、悪い意味で素人臭いものもある。
でもきちんとその作品から面白さを引き出すのが凄い。このイベント「またつま」が長く続いているのがわかる。
笑いが絶えない会場だった。
自分が普段から触れている世界ではない。それもまた新鮮で楽しい。
工作系のイベントということもあり、参加者は女性のほうが多い。
ライブ等と同じく、頑張ってお洒落をしている人、好きな格好で“参戦”する人がほとんど。まあ当然だろう。というか皆、とてもお洒落だ。そしてちょっとだけ個性的だ。
だらっと丈が長いワンピースに、ワンポイントでちょっと変わったものを付けている人が多い。例えば缶バッヂやバッグ、それから大きめのピアスやイヤリング。あるいは主張のあるプリントTシャツの着用も目立つ。
男の人は女性よりも没個性に見えた。自分だって普段の服装*2だった。若者ほど普通、歳をとる毎に変になっていく傾向が見てとれた。でも正直なところ、世に溢れる“面倒くさいサブカルおじさん*3”に比べたら、よほど穏当な男性ばかりだった。
服飾系専門学校のオープンキャンパスよりは穏やかな、でもちょっとだけ面白い服装の人達が100人以上集まっているのだ。これはなかなかに得難い体験だった。自分もその中の1人なのだから笑ってしまう。
ところで会場は結婚式場だった。
TOYTOYTOYの向かい側にある、いささか昭和様式が過剰な場所。床はペルシャ絨毯みたいな模様のビニール敷きで、あちこちに巨大な中国の壺や、象牙や、水晶の原石や、それから黄金に塗られた鷲の彫刻などがある*4。
ステージには床がせり上がる仕掛けがあって、イベントのスタートはこの床から登壇者と「ことちゃん*5」が現れる。
シックではないが豪華だ。自分が子供の頃には既に古臭かったと思う。親戚一同で行った観光ホテルなどにこういう雰囲気があった。
かつて豊かだった日本を象徴するような建物で、ゆるっとしたイベントができるのは素晴らしいことだと思う。
大学生の頃は、こういうイベントに何度も顔を出した。
東京の中央線沿線や新宿、原宿(の裏通り)周辺に漂っていた、ゆるくて内向きのカルチャー。地方都市ではまず開かれないタイプのイベントだった。
それが今は四国でも楽しめる。そもそもTOYTOYTOY自体が都会を出自としているし、昔と違って田舎でも情報を発信することができる時代になった。
とはいえTOYTOYTOYには感謝している。ふらっと入ったお店だったが、今はもうお気に入りである。
そして今日の登壇者の方々にもお礼を。楽しかったです。
*1:実はよく知らない世界。
*2:ちょっと考えて、Tシャツだけ雑貨屋Noviの「四日市コンビナートTシャツ」にしてみた。でも大人しいものだ。
*3:夕方の高松港に行くと、変なベストを着て、あるいはテンガロンハットを被ったおっさんに遭遇する。彼らはオカリナやブルースハープを吹いている。
僕はああいうおじさんによく捕まって「俺は自由人だからサ」とかそういう話を聞かされる。どうすればいい?
*4:ボーリングマシンの歯も置いてある。隣が温泉なので掘削時に使ったものか?
*5:琴平電鉄のキャラクター。2頭身の直立するイルカ。普通にかわいい。乱造された“ゆるキャラ”と違い、プレーンなデザインが人気の秘訣だと思う。プロの仕事だ。