かつて「おしるこ喫茶」というカテゴリーの喫茶店があった。
甘味処、とは少し違う。和風の甘いものとコーヒーを楽しめる喫茶店のなかの、コーヒー抜きでも(つまり、“おしるこだけ”でも)注文として当たり前のお店、と専門家は定めているそうだ。この辺り、生物学の「階級:門綱目科属種」で分類するとわかりやすい気がするが、誰か整備してくれないだろうか。
とにかくかつてあった、そして今はとても稀少な「おしるこ喫茶」に、今日は行ってきた。
静岡県中部では第一選択となるであろう名店、静岡市清水区の「船橋舎」だ。
場所は清水銀行本店から巴川を挟んで反対側、静岡市葵区や駿河区の住人ならば、南幹線方面からエスパルスドリームプラザに向かう際に見ている人も多いだろう。とんがり屋根が愛らしい、古ぼけた喫茶店だ。
常連さんでなければ入りにくい感じはする。実際、空いている時間帯に行くと空き席に私物が置いたままだったり、客なのか店員なのかわからない人達が雑談をしている。でも、お店としてきちんと(個人経営の喫茶店的な)接客をしてくれるので、安心して欲しい。
今日は「五右衛門汁粉」を注文した。
これは、熱いお汁粉にバニラアイスを浮かべたもの。クリームでコクを増した感じは、餡と生クリームを挟んだどら焼きに近いような気がする。
この店のお汁粉は、かなりしっかりと甘い。現代的な味付けではない。でも嫌な感じがしないのは、丁寧でシンプルな調理がされているからだと推測する。ここまで強い味だと、雑な“できあいのもの”では酷いことになってしまう。
ちなみに「おしるこカッポレ」は、冷たいおしるこにバニラアイスが浮かんでいる品。子供の頃に食べた記憶があるが、その時は名前が違った気がする。あるいは別の店だったのか。
カッポレは、夏祭りで踊る「清水みなとカッポレ」のこと、だと思う。
そう、このお店がある辺りは、僕は馴染みがあるのだった。
まだ保育園に通っていた頃、1人では行かないが大人となら日常的に訪れる場所、だったと記憶している。
両親が共働きで昼間は祖父母の家に預けられていたあの頃、「清水のおばあちゃん」と散歩がてら巴川沿いを歩き、折り返すのがこの辺りだった。隣の和菓子屋は、祖父母がいなくなった今でも、叔母の誰かが買ってくるのか、親戚の集まりで食べる機会がある。
最初に書いたように「おしるこ喫茶」だからか、飲み物のメニューの最初が「コーヒーとケーキ」だった。言えばコーヒーだけの注文もできるとは思うが、まずスタート地点として甘味処や茶店の発想があるので、コーヒーとケーキはセットが当然なのだ。主が甘いもので従がコーヒー。*1
とはいえ、以前飲んだ時は、コーヒーはまずまず美味しかった。そう、名前の通り、きちんと喫茶店である。
小さな和風の庭を眺めるのも良し、あちこちに(節操なく、と言ってもかまわないと思う。いわゆる“実家っぽい”センス)飾られている異国の土産物を順番に見ていくのも楽しい。
ついでに巴川沿いを散策するのもおすすめ。今日は潮と風の関係か、妙に「瀬戸内海」を思わせる風景となっていた。
あ、それと招待券を貰ったので「ガールズ&パンツァー最終章」を観てきました。1時間くらいの短い作品で、映画としては物足りないボリュームだったけれど、アニメ映画としては凝っていて楽しい作品でした。小出しにしないで3部作ぶんを長編映画にしたら拍手喝采の出来かもしれません。ネットの人達が騒ぐのもよくわかる。
*1:ちなみにお汁粉は単品注文で、しっかり濃い色の緑茶が付いてくる。