静岡県藤枝市に「たまねぎ」というカレー店がある。なかなか美味しい店で、週末は賑わい、平日は少し空いている。垢抜けた店ではないけれど、見てくれに無頓着な感じもしない。
今日は夕食に、その店へ行ってきた。
色々悩んで、定番の「チキンカレー」を選ぶ。本当はもう少し違う名前だった気がするが、これはつまりドライカレーの上にチキンカツとカレーがかかった品で、ずいぶんとボリュームがある。カレーを堪能するためのカレー、という感じがする。
この「カレー味のごはんの上にカレー」というスタイル、静岡県中部では数店で見かけた。他ではあまり知らない。地域の特色なのかもしれない。単に欲張りメニューという気もするが。
苦手でなければ、辛口のほうがおすすめ。滅茶苦茶に辛いわけではないが、家で作るものよりスパイシーで、身体が熱くなり、そしてさわやかな感じがする。
店名の通り、タマネギが大量に入っている。家でカレーを作る時に、野菜を入れすぎると妙に甘くなってしまうけれど、さすがに専門店、そういう風にはならない。鶏肉やその他の具材が細かく溶けた、なめらかなカレーだ。
どちらかといえば濃い味、なんとなくカレーパンの中のカレーフィリング、あれに似ている。カレーパンが好きな人なら、「たまねぎ」のカレーはきっと好みに合う。
チキンカツもしっかりと味がついている。そしてドライカレーもたっぷり。
小さなサラダでもつけばまた違うのだろうが、この「たまねぎ」では、サラダなどは別メニューである。だから単品で頼むと、延々とカレーを食べ続けることになる。しかし「それもまた良し」と思わせる不思議な魅力がある。
がちがちに頑固な、巨大な寸胴鍋で煮込みに煮込んだカレーとか、その前で腕組みする大将といった世界とは違う、日常のなかで楽しむ素敵なもの、という店である。
勢い込んで行く必要は無いが、人によっては「あ、そろそろ行こうかな」とふと思い出す、そんな良い店だ。
カレー屋は、こういう感じが僕は好きだ。だってカレーなのだから。