「お酒買い取り業者」との遭遇。

 
家を出る時に、怪しいおじさんに声をかけられた。
ワイシャツにネクタイ姿の、よくあるルートセールスの人のようだが、全体的な雰囲気は「競輪場行きの無料バスに並ぶ正体不明の中年男性」のような感じ。刑事ドラマの「情報屋」にも見える。
その怪しい中年男性が、実に怪しい口調で「お時間は取らせません。大丈夫です」と声をかけてきた。大丈夫と言われると、ますます警戒する、そういう種類の喋り方と目付き。


彼は「家で死蔵されている酒を買い取る」仕事をしているという。
高価な日本酒や、流通量の少ない焼酎、きちんと保管されたワインなどを高値で買い取ってくれる。それからもちろん、贈答品のウイスキーやブランデーも買う。
夏にまとめ買いしたビールも「損の無い価格で買い取らせていただきます」と言う。



残念ながら、我が家にはそういった酒類は無い。酒を好むのは父だけで、お土産でワイン等を貰うと、あっという間に飲んでしまう。
祖父の家には立派な飾り棚があって、変わった形をした高級ブランデーの瓶が置かれていた。
強いて言えば、先日のラムレーズン作りで余ったラム酒や、海外土産のアブサンっぽいハーブリキュールや、購入日を忘れたカルーアはあるけれど、全て封を切ってある。
というわけで「ありません」と答える。
「ご近所か親類に、良いお酒を持っている人はいませんか」とも聞かれたが、もちろん「知らない」と返事をする。
詳しいことは知らないが、高級酒を飾るような昭和っぽい家は、近所には無いと思う。にわか焼酎マニアの人は知っているが、確か入院中だ。
近くに兵庫ナンバーのセダンが停めてあって、車内は乱雑に、まるで全国行脚をしているような感じの汚れ方をしていた。



酒類の売買で、食べていけるだけの儲けがあるのだろうか。
おそらくは、この話に乗った時点で「与し易い小金持ちリスト」に掲載される、そしてそのリスト作りが彼の本来の仕事なのかもしれない。
おれおれ詐欺」や「霊感商法」に騙されやすい人、あるいは被害者のリストが売られている、という話を聞いたことがある。




そういえば、静岡市の繁華街、水商売ばかりの地区にも、酒類の高価買い取りを謳う看板があった。
水商売の街には、子犬や子猫を換金してくれるペットショップや、胡蝶蘭と花輪を買い取る店もある。
あの街には、それぞれの贈与品に「使い回しサイクル」が存在するのだろう。





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午後に、友人と打ち合わせを兼ねて、ミスタードーナツに行く。チョコレート・ドーナツ・フェアをやっていた。
新しいパイ生地のチョコレート・ドーナツは、普通に美味しい。しかし形がドーナツなだけで、要は「揚げパイ」だった。




友達から「チーズと塩と豆と」を借りた。
4人の作家による、スペイン(角田光代)、イタリア(井上荒野)、フランス(森絵都)、ポルトガル(江國香織)という4つの国を舞台にした小説。
いずれも短編で、さらっと読めて、しかし心に引っかかる何かが残る。土地と家族の"しがらみ”について、思い当たる節がある人ならば、より興味深く読めると思う。
チーズと塩と豆と (集英社文庫)

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