映画「クロニクル」と、静岡市美術館の「はじめての美術 絵本原画の世界2013」展。

 


ブログやTwitterで、大絶賛とは違うけれど褒めている意見をいくつか知り、その意見を述べている人達の組み合わせも面白かった映画「クロニクル」を観た。
予告編も公式サイトも見ない、どんな映画なのかさっぱり知らない状態で、たまたま空いた時間に観たのだが、それが妙な具合に良い方向に働いたと思う。
というわけで、できるだけネタバレしないように書いてみる。



なるほどモキュメンタリーか、父親が酒飲みで母は病人、公立高校では"いじられ役”で居場所が見出だせない、そんなぱっとしない高校生男子が主役と、すぐにわかる。
友人は従兄弟だけ、車も持っていないし、パーティーも苦手。そういう屈折して閉塞した感じが伝わってくる。
その彼が、従兄弟ともう一人の同級生とともに、ある出来事に遭遇する。ここで僕はちょっと驚く。そのジャンルだったとは知らなかった。
良くある「〇〇〇もの」なのだが、3人はそれほど悩まずに、楽しく過ごす。男3人で馬鹿の限りを尽くす。
単純なモキュメンタリーではなくて、あらゆる視点を「ハンディカメラや監視カメラ等の映像」で写していく。モキュメンタリーにありがちな「仕掛け」は無い。
そして予想通りに終末が訪れる。この辺りは、きっちり技術とお金をかけた最新作という感じがする。
最後まで、全体を見通して最善の行動をとろうとする賢い登場人物はいないし、いくつかの謎は放り出されたまま終わる。しかしそれが、逆に余韻というか深みに感じられる。
本当にありきたりな、(フィクションでは)良くある話だったのに、特に突飛なことをしていないのに、じんわりと面白い。
風呂敷を広げ過ぎずにきっちり完結して、ストーリーや設定に新味は無いのに心に引っかかる、そういう漫画が稀にあるが、「クロニクル」もその類の作品。
それにしても「タレントショー」は、日本の高校に無くて良かった。それと、妙に分別のある台詞で〆る、ラストシーンがぞわっと不自然に気持ち悪かった。
AKIRA」では大都会とバイクと瓦礫、「クロニクル」の場合は公立高校(貧乏人は授業料免除)の舞台で、平凡で屈折した、乱れた若者を描く。現代日本ならば、やはり田舎の国道沿いのファミレスだろうか。






ぐりとぐら [ぐりとぐらの絵本] (こどものとも傑作集)
静岡市美術館で開催中の、「はじめての美術 絵本原画の世界2013」展にも行く。
僕は絵本が大好きだが、原画を見て嬉しくなる種類の「好き」ではなかった事に、入場してから気付く。少なくともこの展覧会の作品では「原画で見られて幸せ」とは思わなかった。
やはり絵本は、本の形が好きだ。大人になってからの絵本好きだから、雑貨のような感覚もある。原画が額装されていても、感激はしない。

とはいえ解説は丁寧で、のんびり眺めているだけでも楽しい。懐かしい気分にもなる。
でも全体として、「企画会社と絵本の版元が組んで、地方の美術館の収蔵品を巡回している」だけで、新しい提案や発見は感じられなかった。
地方都市の展覧会では、この「巡回展の限界」を感じる事が多い。
好きな作品の知識なら、今は知ろうと思えばいくらでも手に入る。結果として「絵本専門誌やムック本と同じじゃないか」という感想になる。
せっかく実物が見られて、新しくて綺麗な建物で鑑賞するのだから、あと一工夫欲しい。時々は「さすがプロの視点は違うなあ」と思える巡回展もあるので、いつも期待してしまう。



絵本が題材だから、小さな子供連れも多い。
「子供の発想は尊重しよう」とか「楽しみ方は自由」とは言うものの、ありていに言って騒がしい子供も目につく。美術館スタッフが注意しても、まず静かにはならない。
こういう「迷惑な子供」を連れた親は、子供の狼藉に対して完全に無関心か、すっかり神経質になって疲れ果てている。その中間という人は、まずいない。
似たような年格好であっても、もちろん子供だから声を出す時も多々あるのだけれど、それが煩わしくない親子連れもいる。その差は何だろう、と考える。
美術館には美術館なりの楽しみ方のラインがあって、そこから大きく外れなければ声も気にならない、そんな気がする。
そのラインを知っていないと、原画に触ったりソファに土足で上がったりする。それだけならマナーの問題だが、たいてい子供も飽きてくるので、騒がしいうえに気の毒になる。
誰もができる楽しみ方ではないし、そういう素養を何処で育むのかは僕にはわからない。
最近の展覧会で増えてきた「トークフリーデー」や「子供優先デー」を選んで場数を踏めば、あるいは違ってくるのだろうか。子育てには謎が多い。

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