静岡県立美術館 ムーミン展

一昨日行った静岡県立美術館の企画展、「ムーミン展」が良かったので書いておく。
今日はほぼ家篭もりで書くべきことはほとんどない。
買い物で外出したときに、想像していたより街に人がいたことが印象に残っている。幹線道路は渋滞し、ファミリーレストランの入口では席を待つ人が集まっていた。静岡県は緊急事態宣言に準じた行動を求められているはずだが、なにしろ「自粛を要請」なので人によって行動指針はまるで違ってくる。

 

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それはそうとして、一昨日の県立美術館は空いていた。
平日かつ雨の午前中。チケットを買う時には何人かの列ができていたし、会場では数メートルおきに人が居る状態だったが、うっかり他人に近寄ることもなかった。
そういう意味では幸運だった。
さすがに今の新型コロナ感染状況では、土日に美術館に行く気にはなれない。

さて、このムーミン展は、基本的に「トーベ・ヤンソンムーミン」を紹介している。
共著や監修はあるけれど、彼女が没した後に後継者達によって作られたイラストや作品、そして日本のアニメーションなどは扱っていない。

展示は、第二次世界大戦中に作られた第一作と、その萌芽となっていた風刺雑誌のイラストから始まる。なにしろ小説の挿絵や表紙だから、原画はとても小さい。特に挿絵は、ほぼ原寸大。つまり大きめの切手くらいのペン画を鑑賞することになる。
素晴らしいイラストではあるが、これだけ小さいとのんびり眺めては楽しめない。
どちらかといえば作品のためのスケッチのほうが見ていて楽しい。スナフキンやスニフのラフな絵がかわいいのだ。どこか北欧的な暗さのある挿絵のペン画とは違う雰囲気があった。

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展示の前半は、ひたすら「作品の紹介」と「挿絵」と「時代背景」が続く。
彼女の人生と作品は、戦後の絵本、児童小説、出版デザイン、アートのムーブメントにぴったり寄り添っている。トレンドに乗る、というよりも常に最前線でトレンドを作り続けた人だった。
小説を書き、イラストを仕上げ、本のデザインや関連商品の企画にも参加してと、内容だけ見たら最近の「クリエーター」と変わらない。

中盤からは、トーベ・ヤンソン本人が関わった他の作品や、彼女の仕事を引き継いだ兄弟の仕事、そしてムーミン関連商品の展示になる。
本人が手掛けているので、ボードゲームや季節のカード、テキスタイルまで、全部が素敵。タッチが変わっても、ミイやニョロニョロといったキャラクターがきちんと成立している。

この頃の絵は、今でもグッズに転用されているものも多い。自分の手元にあるメガネ拭きの柄が展示品由来だった。

 

 

たのしいムーミン一家 復刻版

たのしいムーミン一家 復刻版

 

 

少女ソフィアの夏

少女ソフィアの夏

 

 

展示はまだまだ続く。
アトリエから持ってきた手作りの品々、日本訪問時の記念品など、トーベ・ヤンソン本人に近い雑多なものが山盛り展示されている。ホテルの便箋に書かれた丁寧なお礼の手紙は、添えられた絵は当然として、文字の綺麗さにも驚いた。
本人は北欧の小さな島に籠もって、創作と家族だけのシンプルライフに専念していた記録も興味深い*1

 

トーベ・ヤンソンさんと作品に内容を絞ったにもかかわらず、県立美術館の企画展フロアを全て使った密度のある展示となっていた。
彼女はまさに「戦後のデザインとアートと出版物とキャラクタービジネスの体現者」なので、書籍やイベントは散漫になりがちだが、範囲を抑え、かつ充実した作品点数とした今回の展示は、良いバランスだったと思う。

ムーミン現代アートの関係」や「ムーミンのキャラクターと北欧文化」や「トーベ・ヤンソンと社会運動の繋がり」といった広げ方をせず、トーベ・ヤンソンさん本人と「ムーミンの挿絵や商品」をてんこ盛りにした展覧会は、意外と珍しい。

所々にある飾り付け(影絵風のものが多い)も記憶に残っている。いつかどこかで真似をしたい。

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企画展の後には、いつもの(そしてお気に入りの)ロダン館へ行き、頭を冷やす。
静岡県立美術館で最も広々として、座る場所も多く、写真撮影もできる素敵な部屋なのに、いつも人がほとんどいない。正直なところロダンの「考える人」や「地獄の門」にそれほどの興味は無いのだけれど、でも作品に囲まれて、頭をリラックスさせるには最適な場所だ。

時間の関係で駆け足になってしまったが、冷えた頭で再入場して、要所をもう一度楽しめたことも良かった。
ムーミンのイベントといえば、「雑貨・キャラクター・ライフスタイル」に偏った北欧ブームの乙女趣味的な軽い内容のものも多いが、今回は硬軟取り混ぜた楽しい内容になっていたと思う。

 

 

トーベ・ヤンソン短篇集

トーベ・ヤンソン短篇集

 

 

というわけで、個人的には大満足の企画展。
人によっては辛辣な意見もありそうなので*2、怖くてWebでの感想はチェックしない。

今の状況で気軽に行楽を勧めるわけにはいかないけれど、少しでも興味があるのなら楽しめるはずだ。
当然ながら、ミュージアムショップも充実している*3。近所の人なら、散歩がてらミュージアムショップだけ立ち寄っても良いかもしれない*4

 

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それにしても、フィンランドに行きたくなる内容だった。いつかムーミン美術館には行くつもり。本当は来週くらいに行きたい。

ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン
 
島暮らしの記録

島暮らしの記録

 

お題「気分転換」

お題「わたしの癒やし」

 

*1:同性のパートナー(おしゃまさんのモデル)と生活していた家は、それこそムーミン世界にありそうな小屋っぽさ。

*2:ムーミンファン、というかトーベ・ヤンソンファンは“こだわり”が強い人が多い。

*3:散財した。

*4:入場料を払わずとも、ミュージアムショップやカフェには寄れるはず。