お土産で猪の塩漬け肉をいただいた。
夕食に焼いて、薄切りのタマネギとともに食べる。
残った脂で目玉焼き丼も作る。
おそろしくおいしい。なんだこれは、と驚いている。
それから片付けをしたのに、キッチンに獣の匂いが残っている。換気扇は「強」にしていたのに。
でもこれは嬉しいおみやげ。
少しずつ食べていこうと思う。
それはそうとして、今日は静岡県立美術館に行ってきた。
「富野由悠季の仕事」展が目的。
なにしろ子供の頃からガンダムなどに慣れ親しんできたから、静岡での巡回展は本当に嬉しい。
もちろんガンダム以外の「仕事」も大量に展示がある。
子供の頃の落書きから直近の仕事まで、ひたすら紙と映像の資料が並ぶという贅沢な展示だった。
70過ぎの人間が、ここまで紙記録を残していることに圧倒される。
そのことだけで奇人変人ではないか、とさえ思う。
子供時代の「夏休みの自由研究」みたいなものから、駆け出し時代のメモ、そして細々としたアイデアスケッチまで残しているのだ。
「生活のために仕事を選ばず何でもやった時代」と解説にあるのに、資料はきちんと残すのだから凄い。いくら他人に説明をするのが仕事の大半だとしても、なかなかできることではない。
しかしこの企画展、そんな紙資料が延々と続くので、好きな人にはたまらないけれど疲れるものではあった。
いわゆる「美術展」ではない。むしろ博物館でやるべきではないか、とさえ思える情報量と展示方法。
一般的な美術展でよくある「作家の書簡」が入って上から覗き込むガラスケース、あれがひたすら続くのだ。県立美術館のガラスケースを全て使っているのではないか。
富野氏の資料に加えて、それぞれのアニメ作品の設定画や企画資料なども実物が並んでいる。ガンダムマニアを今の歳まで続けていれば設定資料集などで見たことがある画も多いけれど、実物はもちろん初めて。ペンで清書して書籍に収まる前の画、細々とした訂正指示がある画は見ていてとても楽しい。
インタビューでは理屈と感情を爆発させる富野氏だが、修正指示はかなり具体的かつ教育的だ。つまり、後進や若手に「修正した理由」までしっかり書き込んでいる。
映像の展示も多いが、ガンダムにしろダンバインにしろ、今では見返す手段は多いから大抵は素通りとなる。「機動戦士ガンダム第一話:ガンダム大地に立つ」なんて、なんとなく過去に見たものを覚えているし、帰宅してから探してもいいので。
それくらいに飛ばしていかないと、閉館時間になってしまう。
「当日の半券で再入場可能な企画展なんて珍しいな」と思ったけれど、確かにこれは時間がかかる。
僕も普段ならば必ず立ち寄る常設展と「ロダン館」の地獄の門を今日は断念した。朝から行けば良かった*1。
展示後のミュージアムショップで「これ、図録を買えば展示は要らないんじゃないか(情報的には)」と思ったのだが、そういうことを言い出すと心が貧しくなるので、この気分はこれでおしまい。
静岡県立美術館は、駐車場からの遊歩道が好きだ。
遠くの駐車場に停めて歩くことにしている。静岡市でも、最も緑の濃い道。
行きは遊歩道を歩く。
帰りは途中から道を逸れて、大学の「芝生広場」側を散策しながら駐車場に向かう。
ここはラグビー場くらいの広さもあるのに、球技禁止の芝生広場にしている。行政と大学の英断だと評価している。こういうだだっ広くて安全な、なにもない場所は必要だと思う。自分は近隣住民ではないから恩恵を受けるのは稀だが、近くに住んでいたら、あるいは大学生だったら通っていただろう。
そんな1日。
まだキッチンと廊下は猪くさい。でもまあ良い日でした。
*1:午後のわりと遅い時刻に入館したのだった。