センシティブ庵治町

県外に住む友人夫婦が遊びに来た。
駅で待ち合わせをして、昼食を一緒に食べる*1。2人はこれから瀬戸内の島々を巡り、岡山や倉敷を観光する。初日にわざわざ四国まで来てくれたのだ。

彼らを港で見送った後、ちょっと奇妙な心理状態となった。
簡単に言えば“寂しい感じ”だ。でももう少しだけ複雑。擬音にすると「すーん」である。自分でも書いていてよくわからないけれど、とにかくブルーでグレーな気分になってしまったのだ。

ここ数日、誰かと人生を共にする事を描いたフィクションに多く触れているせいかもしれない。今の一人暮らしに不満は無いし、それなりに楽しくやっているけれど、ぼんやりとした結婚願望じみた気持ちが浮かぶ事もある。
一過性のものではあるのだろう。仲の良い(新婚といってもいい)友人2人を船で見送ったのだから、感慨が心をセンシティブにしてもおかしくない。

 

旅ドロップ

旅ドロップ

 
物語のなかとそと 江國香織散文集

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こういう時は孤独と友達になるべし、と僕の人生経験は示す。
下手に明るく振る舞っても馬鹿を見るだけだ。
「すーん」って気持ちを愉しめてこそ、立派な中年男性というもの。

だから庵治町の「竜王山公園」に行ってきた。
瀬戸内国際芸術祭の作品でもある展望台「Watch Tower:ジョン クルメリング」が目的地。
99%寂しい場所であろう、と目星をつけていた通り、本当に寂しい場所だった。
道を間違えたのかと不安になる位に細い山道を登っていくと、綺麗にひらけた山頂に到達する。芝生や遊歩道が整備されているだけ、余計に寂しい。「いいじゃないか」と思いながら、思う存分散歩をして、写真を撮った。

本当はここで、家から淹れてきたコーヒーを飲もうと考えていた*2
でも風が冷たくて、コーヒーなんて飲んでいたら風邪をひいてしまう。感傷に寄り添って身体を壊すわけにはいかない。

だからコーヒーは帰路の車内で飲んだ。
普段の生活圏でも瀬戸内海の風景は見ることができる。でも少し離れて庵治町まで行くだけで、見える景色が違ってくる。
庵治町のある半島のあちこちに採石場があって、独特の雰囲気がある。海の向こうには友人夫婦の今日の目的地である小豆島も見える。
海に向けて作られた凝ったつくりの家は、別荘だろうか。
夕刻が近いこともあって、山頂も海沿いの道も、ついよそ見をしてしまうくらいに印象的だった。

 

 

水野と茶山 上 (ビームコミックス)

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水野と茶山 下 (ビームコミックス)

水野と茶山 下 (ビームコミックス)

 

 

センシティブといえば、ここ数ヶ月で買った漫画の3割以上が「センシティブ・ストーリー」であった。漫画の説明文にそう書いてあったから、間違いない*3
なんとなく恥ずかしい。少なくとも、郷里の両親には言えない。「僕は中年になっても、センシティブでキラキラした漫画を読んでいるんだよ」なんて聞いたら、母も父も悲しむだろう。

でもまあ、中年になって、もっさりしたカピバラみたいな暮らしをしていても、センシティブ・ストーリーを消費することはできるのだ、実際の話。

 

 

つめたいよるに (新潮文庫)

つめたいよるに (新潮文庫)

  • 作者:江國 香織
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1996/05/29
  • メディア: 文庫
 

お題「もう一度行きたい場所」

 

*1:当然、讃岐うどんである。

*2:わざわざコーヒーを用意するために帰宅するあたり、我ながら“独り”っぽい。

*3:ジャンルやストーリーに共通点が有るような、無いような。