バーベキューと読書報告会

友人夫妻の家のバーベキューに招かれたので、今日のお昼ごはんは牛肉と鶏肉と豚肉と少しの野菜だった。
他所の家で食べるバーベキューはおいしくて楽だ。

もちろん自分もいくつかの料理(マリネやゼリー)を持ち寄り、手伝いもしたが、それでも基本的には客であって作業量は少ない。こういう"お招き"ならば毎週でもいい。

 

 

今回のバーベキューは友人夫妻から招待されたわけだが、彼らの子供からの要望でもあった。夏のはじめにこのお子さんから本を紹介されていて、その本についての感想報告会でもあったのだ。

 

勧められたのは「本好きの下剋上」というシリーズ。
昔でいうライトノベルのため文字数はそれほど多くはなく、挿絵は少し少なくて、冊数が多い。SFやファンタジーによくある長編シリーズのような感じで、実際に本編だけで33冊ある*1
どちらかといえば子供向けに見える優しい雰囲気の"小説家になろう"発の作品ではあるが、世間では年令を問わずとても人気があるようだ。今年の星雲賞受賞作でもある。

最初に買った数冊は図書館に寄贈したが*2、「何冊あってもありがたい」と司書さんも言っていた。

 

 

勧めてくれた友人の子は中学生。
つまり、僕とは境遇も価値観も違う。だからもちろん感想だって異なるのだが、でもその違いをきちんと喜んで聞いてくれるし、気の利いた質問が返ってくる。大したものだと感心する。
自分が中学生の時に、こういうふうに大人と話すことができただろうか。

 

 

初夏に1冊目を教えられて、そのまま夏の間に33冊を読んでしまったのだから、実際にとてもおもしろいシリーズだったといえる。

構成が巧みで、定番の展開をしつつも定番に見えないような工夫が随所にある。
なにより、悪役を含め登場人物の行動原理がはっきりしているから、登場人物が多いのに全く混乱しない*3ところが良かった。

レビューなどを見ても、粗製乱造の評判が多い"小説家になろう"発の小説としては異色作のようだ。
むしろ、書きたいようにひたすら書き続けられる"なろう"のメリットを十分に活かした作品だと自分は思っている。例えばライトノベル・レーベルへの持ち込みや新人賞デビューを目的にした作品ならば、この長さはマイナスに働く。でも、この小説は短くしたら魅力は激減、そもそも物語として成立しない。冗長に思える序盤も、きちんと必要なものだったと後でわかる構成となっている。それは伏線やギミックとも違う"必要"なのだ。

そういう作品を33冊の長編シリーズで出した出版社もすごい。
結果的に英断だったと思う。

 

 

…といった分析的な感想は中学生には退屈だろうから、もう少しキャラクターの信条や、作品世界に関する感想を語り合った。
話しながら「不思議な状況だな」と思ったが、もちろん本人にそんなことは言わない。子供もいない自分が、こうして友人のお子さんと本の話をするなんて不思議としか言いようがないのだけれど。普段のLINEや電話とはまた違うタイプの不思議なのだった。

 

食後には、本を紹介してくれたお礼に、作中に登場し活躍したお菓子を渡した。
もちろん、ファンタジックなお菓子ではなくて、伊予柑ピール入りのパウンドケーキと、紅茶入りのフィナンシェ*4である。作中に出てきたお菓子がパウンドケーキだったので助かった。
これが見たこともない魔法的お菓子だったら断念していた。

 

 

娘さんからは「推薦図書」を提案するように求められたが、これは即答していない。
だって、今の子供が読む本なんて全くわからない。
いくつか「おもしろい本」を伝えたが、長編シリーズとなると難しい。絵本は買うことも贈ることもあったけれど、ティーンエイジャー向けの本は守秘範囲外だ。「戦闘妖精雪風」や「坂の上の雲」を勧めるわけにはいかない。

 

 

そもそも、自分が中学生時代に愛読していた本なんて覚えていない。
市立図書館は好きな場所で通っていただったはずだが、当時は好きなシリーズなんて無かったのだ*5。読書はしていたが、親の本棚から選んだ本を、わけもわからず読んでいた記憶だけはある。

 

 

ともあれ、これからも読書を通じた交流は続きそうだ。
なお、彼女の両親は全く読書の傾向が違うため、今日は本の話だけでずいぶんと広く浅く話すことになった。
本好き家族とバーベキューをするのは、楽しいけれど大変なのである。

 

そんな日曜日だった。
友人夫妻と娘さんからは、「本好きの下剋上」をイメージした革製品をリクエストされたので、今夜はそれを考えている。イメージといってもむづかしい。そもそも、この一年はほとんどレザークラフトをしていないのだ。

お題「ささやかな幸せ」

 

*1:短編集やスピンオフ的な作品もある

*2:電子書籍で書い直した。

*3:カタカナの名前の小説で混乱しがちな自分には珍しいこと。

*4:ウサギの浮き彫り型を使用

*5:ノンフィクションを片っ端から読んでいた記憶はあるが、小説だって読んだはずだ。でも忘れている。

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