最後にいちごのビクトリアケーキ

所用にて藤枝市に滞在していた。
昼食には少し早い時間に暇ができたので、「カフェ・ド・モエ」へ行ってきた。

「カフェ・ド・モエ」は藤枝市の老舗カフェだ。
今では珍しい、建物から器まできちんとコストをかけた、落ち着いたお店。ランチタイムのカレーが有名だが、僕は専らケーキを食べに訪れる。
幹線道路からは外れた住宅地の奥という立地や、若者向けとはいえない価格とメニューもあって、興味の無い人にとっては存在すら知られていない、そんな小さなカフェ。

その「モエ」が閉店するという。
店主が高齢だから、そろそろだとは思っていた。継ぐ人がいないのが残念でならない。

だから今日は、おそらく最後の訪問となる。
既に噂を聞いた人達で混雑していて、席につくまで駐車場で少し待つことになった。

maps.app.goo.gl

それでも、ショーケースに並ぶケーキは少なくなっていた。最後の数週間は、今日のような混乱が続くのだと思うと、なんだか申し訳なく思う。
でも、最後に(おそらくは最後に)この店のケーキとコーヒーを楽しめたことは嬉しかったし、幸運だったと思う。

ケーキはイチゴのビクトリアケーキ。コーヒーはヨーロピアブレンド
素材はショートケーキと大差ないビクトリアケーキだが、しっかりとしたスポンジケーキ部分はバターの風味が強く、ジャムや果実との相性はすばらしい。
この店は、こういった"濃い"ものが格別においしいのだった。

コーヒーも深煎りのヨーロピアブレンドを選んで正解だった。
しっかりと苦く、チョコレートのような風味がする。とてもおいしい。
これも最後なのかと思うと、大きなため息が出る。他のコーヒーも、紅茶もおいしかった記憶がある。

 

支払いの時には、お店の人達が声をかけてくれた。
良いお店をありがとうございました、と僕も謝意を伝えた。

 

 

それにしても、こういうカフェも少なくなった。
茶店とは違うカフェ。フランス…というかパリに憧れて、隅々まで店主の趣味が反映された店。その後の「ほっこり」とか「肩の力を抜いた」といった雑貨・カフェ文化より以前の"本格的な店"だ。

 

とにかく、そんな感じのお茶の時間を過ごすことができた。
今も少しだけしんみりしている。
じゃあ閉店する3月末まで通い詰めるかというと、全くそういうつもりは無い。
時々ふらっと訪れる店。「カフェ・ド・モエ」は、そういう場所だったから。

 

お題「わたしの癒やし」

 

t_ka:diaryは、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。