映画『パラサイト 半地下の家族』

ずっと鑑賞を延期していた『パラサイト 半地下の家族』を観てきた。
驚くほど混んでいた。
四国に住んで、ここまで人の多いシネコンは初めてかもしれない。スター・ウォーズの時よりも混雑していた。

予告編の時も、スタッフロールが流れ始めた後も、携帯電話のモニターがあちこちで光っていたのが気になる。これもアカデミー賞効果かもしれない(婉曲な表現)。

 


第72回カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編

とはいえ作品は素晴らしかった。
予告編から「あ、これ僕は好きそう」と思っていたが、予想以上。
少し前までの韓国映画の「美男美女と、強く聞こえる言葉と、道徳に縛られる人達」といった“くさみ”が抜けて、洒脱な映画に仕上がっている。
とはいえ、細部まできちんと手が入っているところは韓国映画らしさがあった。日本映画だと「若い子向け」や「アイドル映画」といったカテゴリで露骨に安っぽくなる。たぶん映画でありPVでありテレビ番組の販促ツールなのだろう。でも韓国の映画は(日本に入ってくるものは)どれもこてこてに「映画」である。それだけで素晴らしい。

 

青い塩(字幕版)

青い塩(字幕版)

  • メディア: Prime Video
 
グエムル-漢江の怪物-(字幕版)

グエムル-漢江の怪物-(字幕版)

  • 発売日: 2015/04/02
  • メディア: Prime Video
 

 

ストーリーや「良かったところ」は、ここでは書かない。
書けばきりがないし、検索すれば沢山の褒め言葉が、上手な文章になっている。僕も概ねその通りだと思う。ソン・ガンホは素晴らしい役者だ。

https://www.instagram.com/p/B8aZI99ADmT/

 

韓国の貧困家庭と富裕層の明暗を半ばコミカルに描く作品。
面白いけれどそのうち不穏なものがこちらに突きつけられる。まるで日本の、そして僕たちを描いているかのようで、ひやりとする。

そういえば、と思い出す。
いつの間にか、日本の中年以上の人達は、韓国や中国の人達と見分けがつかなくなっている*1。特に、所得が少なそうな人は、服や顔つきで国籍の区別がつかない。ましてや都会ですれ違う「垢じみた老人」は、フィリピンや中国にいても全くおかしくない。
そういう時代になったのだ。
中間層が消え、生活と精神に余裕のある富裕層と、ぺらぺらの服を着た“庶民”のいる時代。ちょっとしたミスで、法律やモラルに守られない場所に墜ちてしまう世界。

万引き家族」とは違った意味で、今の社会を切り取る佳作だった。
最初から最後まで良い気分になれる映画ではない。
でも僕は映画館を出る時に、なんだか元気が出てきたのだった。

 

 

 

ところで周りのお客さんの反応を見ていると「思っていたのと違う」と不満そうな人や「こういう映画は初めてだ」と驚く声が多いようだった。
別に自慢ではないけれど、僕は知っている。“こういう映画”なら実は小さな映画館に行けば確実に出会える*2。ミニシアターが無い街ばかりになったが、たまには足を伸ばしてみると面白いと思う。超大作とは違う世界が待っている。

 

ミニシアター巡礼

ミニシアター巡礼

  • 作者:代島 治彦
  • 出版社/メーカー: 大月書店
  • 発売日: 2011/09/01
  • メディア: 単行本
 
ミニシアターグラフィックs―チラシ・パンフレット・グッズなど単館映画の宣伝ツール特集

ミニシアターグラフィックs―チラシ・パンフレット・グッズなど単館映画の宣伝ツール特集

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: ピエブックス
  • 発売日: 2005/09/04
  • メディア: ペーパーバック
 

 

お題「ひとりの時間の過ごし方」

 

 

 

*1:瀬戸内国際芸術祭の時に見かけた中国や韓国、台湾の若者たちは、日本の「アート系」な若者と区別できなかった。むしろ彼らのほうが過剰にお洒落だった。

*2:香川県では3つのシネコン(全てイオンシネマ)と1つのミニシアターがある。狭い土地にある3つのイオンシネマがそれぞれ少しずつ違った毛色の映画館になっていて、オーストラリアの有袋類みたいで面白い。宇多津のイオンシネマは少しマイナー寄り、地方のミニシアターのニッチを占める。