聞くは一時の恥だけれども。

たぶん偶然の一致だが、昨日と今日に気になった出来事があったので、今日はそれを書いてみようと思う。

 


特に関係の無い友人3名それぞれが、「ほとんど調べない人からの店舗情報の問い合わせ」に苦慮しているという話が(インターネット回線越しに)耳に入った。
3名とも個人経営のお店やアトリエを持っている。
本当に小規模のお店で、だからこそ忙しい時は電話応対だって難しい。
そういうお店だとわかっていて問い合わせの電話をしてくる人は何なのだろう、という不満だ。あるいは、店に興味があるのに個人店である事への配慮がまるで無い人は本当に店を気に入ってくれたのか、そんな疑問だ。
実際に仕事に差し支えているからこその不平不満が聞こえてきた。

 

僕は(友人という思い入れを差し引いても)これは「問い合わせる側」の怠慢だと思っている。
小規模で不定期営業の店なんて、今はいくらでもある。
そういう店がInstagramFacebookやブログで営業日や時間を告知することも当たり前だ。SNSが無かったら成立しない業務形態だとさえ思う。

そういう店にどうして電話なんてするのだ。
誰も問い合わせなんてしていないコメント欄に質問を書くのだ。
スマホもパソコンも使えない老人ではないのに、自分で調べようとしないのだ。

 

全てのお店が、あらゆる人をお客さんとして扱いたいわけではない。
古都の名店が人を選ぶように、個人のこぢんまりとした手作りのお店もまた、彼ら彼女らのスタイルを持っている。SNSでの情報発信もそのスタイルに含まれている。新聞の折り込みチラシを作らない事がその店のスタイルであるように、低コストで“わかる人には届く”発信手段であるSNSを活用することもまた店と店主の意思表示なのだ。

つまり僕の友人達は、調べればわかることは自分で調べる、そういうお客さんを求めているのだ。
実際、チェーン店のそれのように、問い合わせ全てに「ありがとうございます」と答えていたら成立しないし、それはやりたくない。

「よくわからないけれど雑誌を見て興味を持ちました。調べるのは苦手なので電話で聞きます」から一歩進むくらいの手間はかけて欲しい。だって興味を持ったのだから。電話応対が難しいくらいの規模や仕事をしていることもまたお店の特徴なのだから。

 

これはある種、傲慢なスタイルではある。
しかしそれでもみんな、それなりに長くお店を続けられている。傲慢だろうが何だろうが生活できる程度に受け入れられているのならば、客の側がそのスタイルを「それは間違っている」と文句を言っても説得力に欠けてしまう。

僕は仮に、自分を「お断り」する店があっても気にしない。後で興味を持って調べはするだろうが、そんなものかな、と思うだけだ。店というのは客の希望を受けるだけで成立するわけではない。

 

 

これもまたSNS、たぶんTwitterで読んだのだけれど、どうも世の中には2種類の人間がいて、それは「他人に聞くよりも自分で調べるほうが楽な人間」と「自分で調べるよりも他人に聞くほうが楽な人間」なのだそうだ。

なんとなくわかる気がする。職場にも「なんだこいつ!」と思えるくらいに、調べればわかることを聞いてくる人がいる*1
どちらが良い、という話ではない。その時々によって正解は異なる。

ただし今の時代は、調べる事そのものがずいぶん楽になっている。
5年前に比べて携帯端末もインターネットも進歩して素人向けになった。過渡期としてのスピード感が、実際以上に「調べればいいじゃん」と思わせているし(時代の空気かもしれない)、そして上述の如く「詳細はWebで!」を基本にしている仕事やお店も増えている。

もうしばらく待てば、「聞く方が早くて楽」な人達もまたこれらネット上の情報に簡単にアクセスできるだろう。AIと音声認識の進歩が会話による情報収集と提示を容易にしつつある。

 

とはいえ、この「他人に直接聞く」ことそのものに価値を見出す人もまた多い。
たぶん人間の想像力に限界があるからだろう。
WebサイトやInstagramの情報だって人間が入力している、という想像ができないのだ。想像力の多くは知識量の問題だから、そう簡単にはこの価値観は変わらない。
お店の開店時間や駐車場の場所を知りたい、という当初の目的に「お店の人達との交流」といった自身の欲を混ぜたい、その気持ちは僕もわかる。自分だって丁寧な接客や温かな心遣いは嬉しい。
でも、それは店によっては迷惑なのだ。

 

僕達は、興味を持った店がどんなスタイルなのかをあらかじめ知っておいたほうがいい。
客としても、そのほうが幸せになれる。
少なくとも「自分にはこのほうが楽だから」で済ませているうちは、ほとんどのサービス、もっと言うと人間とのやりとりでは、何かを磨り減らす。疲弊がお店側なら気付かないし、鈍感な人は自分に損をしていてもわからない。それは不幸だろう、確実に。

 

マイコミ新書 お客様は神様か?~売れない時代の新しい接客・サービス~

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*1:仕事ならばなおさら、自分で調べることはスキルとして鍛えたほうが後々のためになる。だから僕は新人にはネット検索のコツや教則本の使い方をしっかり教える。新人では無い場合に困る。

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