やわらかい真珠/右目の痛み

眼球とそれを収める眼窩の間に異物が溜まる空間があるらしい。
何年かに一度、抜けた睫毛の束が出てくる。

何か異物感があるな、と思っていたら視界がぼやけて、あれか久しぶりだなと鏡を見ると、黒目の上あたりに黒い毛の束が付いている。身長に取り除き、まじまじと観察する。やはり睫毛が束になっているだけ。特に面白いものでもない。

人によっては粘膜に包まれて、そのまま眼窩の内壁に付いたままになるか、あるいは外に出てきた時にも細長い塊になるという。
どこかで誰かにそんな話を聞いた。
誰なのかは忘れた。
歯医者には歯科衛生士がいて、目医者におけるその衛生士みたいな立ち位置の仕事に就いている人だった気がする。

貝の外套膜に異物が入るとカルシウムや蛋白質によって覆われて真珠になる。人間の目の場合はやわらかいねばねばした塊になる。そうやって無害な異物になっている“身体では無いもの”が人間の身体のあちこちにあるのだろう。手のひらに埋め込まれたシャープペンシルの芯のように。やわらかい真珠みたいなものだ。

 

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さて、その異物、目の奥に留まっていた睫毛の束が久しぶりに発見された。今日の午後に右目から“出てきた”。車を運転中になんとなく気になって、車を停めて摘出。
その時はそれで問題解決したのだけれど、今もまだ鈍い傷みがある。

鏡で瞼のあちこちを見てみると、どうやら睫毛が1本だけ目の中に残っているらしい。
それほど酷い痛みではない。
このまま寝てしまえば忘れてしまうかもしれないし、明日もまだ異物感や傷みが続くかもしれない。
何度か睫毛の把握と摘出を試みたが、なかなか上手くいかない。
あまり触ると目が赤くなるばかり、かといって放置するのも気になる。

シャワーも浴びたし、目を使う作業(このブログを書くことも含めたパソコン作業)も先延ばしにできることばかり。
面倒になったので、今日はもう寝ることにした。

またこの睫毛が眼窩の奥にある“異物が辿りつく場所”に収まるのかもしれない。あるいは、その淵みたいな場所には、今日回収したものとは別にまだまだ滞留した睫毛があるのかもしれない。
埃や砂粒とともに、そういうミリグラム単位の身体ではないものが自分の身体に同居していることは、ちょっと面白いと思う。刺青やピアスや人工関節とは違う何か。睫毛はヒト由来だけれど、異物であることは確かだ。
この面白さは上手く説明できない。なんとなく火葬場を想像するけれど、書けば長くなるし書いても伝わらなさそうだから止めておく。

 

 

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お題「今日の出来事」

 

 

 

 

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