求肥っぽい何かに乗っ取られた事業所は

今日の昼も、社員食堂で食べる。
その社員食堂の入り口、「本日のメニュー」を表示する液晶モニターに、求肥らしき画像があった。「デザート」コーナーにおける、本日の数量限定品。価格は80円。説明は無く、ただ「求肥」とだけ書かれていた。だから十中八九、求肥だ。

見た目は、蒲鉾に似ている。外皮部分が薄桃色で、内部は白い。少し透明感があり、柔らかそう。いわゆる「すあま」との違いがわからない。少し楕円球に近いところは、「すあま」との違いか。

しかしなぜ、これが今日の目玉商品なのだろう。
この職場に来て半年、いろいろな「なぜ」に遭遇したが、今日の件は本当にわからない。何かの記念日、というわけではなさそう。
普段は、この「デザート」コーナーには、「甘くて、ちょっと身体に良い品」が置かれている。例えばヨーグルトと冷凍ブルーベリーといった、ヘルシーな食後のおやつ。
もしかすると、この求肥もまた、カルシウムや鉄分が強化されているのかもしれない。それならば食べてみたいが、残念ながら売り切れだった。少なくない社員が、食後の楽しみとして、求肥を選んだということだ。

 

 

ところで、どうして和菓子は栄養強化を施さないのだろう。「すあま」なんて、ただの炭水化物の塊じゃないか。この疑問を、製菓学校で学んだ知人に問うたことがある。
「風味や食感が変化する。特に澱粉と水を練るタイプの生菓子は、少量の添加物が大きな変化をもたらす」とのこと。
なるほど、と思った。
例えば蕎麦を打つ時にベーキングパウダーを少しだけ加えると、劇的に歯ごたえのある麺ができる(実験した)。蕎麦とも違うし、中華麺としても美味しくは無い、変なものが出来上がってしまう。そういう類の事象なのだろう。
それにビタミンは、わりと味と匂いが強い。そうそう簡単には加えられないのかもしれない。

そういう観点からすると、ビタミンとミネラルが加えられた羊羹は、きちんと美味しいから、優れた食品ということになる。
和菓子ではないけれど、カロリーメイトも凄い。

 

井村屋 スポーツようかんプラス40g(5本入)

 

ちなみに、同僚や上司や先輩に「どうして今日、求肥なんですか?」と聞いたところ、「知らない」とか「気にした事も無かった」そして「求肥?好きなの?食べたかったの?わたしは嫌ーい」といった答えが返ってきた。
この“素”の感じが怖い。だって求肥だぜ、と思う。職場の全員が、何かを隠しているのではないか。

ホラー映画ならば、そろそろ「後戻りできない状態」に足を踏み入れる、その寸前の日常感だ。これから恐怖がやってくる。渋谷の雑踏、みんなスマホの画面に夢中で、異常に気付かない(ベタな演出)、そういう侵食系の恐ろしさ。
そして僕もいずれ、「社員食堂に求肥?普通だよね」などと言い出すかもしれない。求肥星人に脳を乗っ取られた事にも気付かず、疑いも迷いも消えた幸せそうな顔で生きる求肥人間になるのだ。

 

 

 

 

白露虎庵 求肥 業務用箱入り (5箱)

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 Amazonでは「求肥」を買うことができる。どっさりッと手に入る。
ロングテールの先にある、ただ甘くてもっちりしたものたち。なんとも愛らしい。
ちなみに「すあま」は発見できなかった。